表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS聖女様は絶望顔が大好きです〜趣味で悪役貴族を可愛がっていただけなのに、なぜか民衆からの評判が良くなっていくんだけど!?〜  作者: 早野冬哉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/16

7.クレナを説得、勘違いによる後押し

「クレナ副団長! 人攫いの男を尋問した結果、ここエルステラでは現在、違法な奴隷オークションが開催されていることが判明いたしました!」


「本当か?」


「はい。どうやらオークションの参加者には有力貴族や商人もいるらしく、かなりの規模だそうです」


 俺の部屋の前でクレナと部下が話していた。その会話を、俺は扉に耳を押し当て盗み聞いていた。


 マジかやった! 久々に大勢を一気に絶望させれられる! やっぱ個人か集団かで絶望の与え方も得られる快感も違うからなァ……あの人攫いを諦めた甲斐があったな。


「いつまでそうしているつもりですかフラウ様……まるでストーカーですね」


 ラスティはため息交じりに声をかけてくる。対して俺はピョンと立ち上がり、声を弾ませる。


「ラスティ準備するぞ。パーティーの始まりだ!」


 そう言って俺は部屋着を脱ぎ捨て、町娘が着るような質素な服を取り出す。


「……クレナ様との約束、フラウ様ははなから破るおつもりでしたね?」


 ぼやきながらも、ラスティは俺が脱ぎ捨てた服を畳んでくれる。


「まあなー。あの約束した後でもクレナに同行して人攫いで遊ぶ言い訳は考えていたからな。当然だろ?」


「ハァ……あなたは正真正銘のクズ野郎ですね」


「ま、趣味を楽しめるなら俺はクズでもなんでもいいさ」


「そんな純粋な笑顔を浮かべても、その発言がまさにクズであることは覆りませんよ?」


「はいはい。俺はクズですよー」


 俺の棒読みの返事に、ラスティは再びため息を吐く。けれど、俺を見るラスティの目は羨ましそうに細められた。だが、ちょうど俺は麻のTシャツを頭に被っていたため、ラスティの変化には気付かない。


「よし。じゃあ行くか」


 俺は戦闘の邪魔にならないよう、長い髪を低い位置でお団子にまとめる。


 まずはクレナの説得だな。


「はい」


 Tシャツに袖を通した俺は扉を開ける。


「そうか。ベオン団長もドワース殿も不在か。私もフラウ様の元を離れるわけにはいかない。指揮を誰に任せるか──」


「クレナ様。お話は聞かせてもらいました」


「フラウ様その格好……まさか──」


「はい。私も行きます」


「それはダメだ! 先程も言ったが──」


 俺はクレナを手で制し、首を横に振る。


「以前とは状況が変わりました。奴隷として拘束されているのなら、攫われた方たちには隷属魔術がかけられているはずです。そして隷属魔術をかれられた者は、主の許可がなければその場を動けない。つまり、攫われた方たちを助けるためには隷属魔術を解除できるディスペルを使える魔術師が必要でしょう?」


 ま、奴隷オークションなら、相当価値のある奴隷でない限りは隷属魔術は使われないだろうけどな。詐欺っぽいが嘘は言ってないぞ?


「それはそうだが……」


「それに今、騎士団の皆さんを指揮できる者がいないのでしょう? 護衛対象である私が同行するのなら、クレナ様が指揮をとれる。そうでしょう?」


「あ、ああ……」


 クレナは言葉に詰まり、その金色の瞳は揺らぐ。


 よし。クレナもかなり揺らいでるな。あと一押し。


「現場では私もなるべくクレナ様かラスティの傍にいるようにしますから、どうか私を連れて行ってください!」


 俺は、とどめに頭を下げて頼み込む。俺を連れていくメリットを二つも提示したうえに、デメリットである「俺の身の安全が脅かされる」という点についても妥協案を出した。


 これならクレナも納得してくれるはずだ。


「……いや、ダメだ。最優先はフラウ様の身の安全。これは変わらない」


 マジか……これでもダメ? クレナってやっぱ堅物だったんだな。うーん……後は正義感とか同情心を煽るか、もしくは──。


 その時だった。クレナの後ろに立つ三人の騎士がクレナの前に跪いたのは。


「クレナ副団長。我々からもお願いします。どうか此度の任務に聖女様がご同行することをお許しください」


「私は聖女様の慈愛溢れる勇気に感服いたしました。無辜の民を慮り、自らのお命を危険にさらしてまで彼らをいち早く救い出そうと悪に立ち向かう信念、見事でございます」


 ……え? 何言ってんだ? ま、まあ……俺の味方になってくれるみたいだしいいか。


「聖女様の信念こそ、我々騎士が見習うべき教典です。だからこそ我々は、聖女様の覚悟を尊重したいのです。クレナ副団長も気付いておいででしょう。ここで聖女様のご同行を拒否することが、騎士道に反すると」


「……そう、だな」


 おっ? クレナが押されてる? 今が押し切るチャンスだ!


 俺はラスティに視線を送る。ラスティは俺の意図に気付き頷いた──次の瞬間。ラスティはスカートの下から短剣を取り出しクレナの眉間目掛けて投げた。


「……ッ!?」


 突然のことに一瞬反応が遅れるクレナ。だが彼女は若くして副団長の座に就いた手練れ。鞘から剣を引き抜く途中、刀身を短剣の軌道に合わせて弾く。そのまま滑らかな動作で抜剣し、正中に剣を構える。


 ──が、もう遅い。ラスティはすでに、背後からクレナの喉元に短剣を押し当てていた。


 初手──クレナの反応が遅れた一瞬、ラスティはその瞬きにも満たない僅かな時間を利用して、クレナに気付かれることなく背後に回ったのだ。


「「「………………なっ!?」」」


 クレナとラスティのやり取りを目で追えなかった騎士たちは、今更ながらに目を丸くする。


「いかがですか? ワタシの実力ならば、クレナ様がいなくともフラウ様をお守りできます。常にワタシかあなたのどちらかがフラウ様の近くにいれば、安全面は問題ないでしょう」


「……ハハッ……どうやら、そのようだな」


 クレナは両手を上げて乾いた笑い声を上げる。それを見てラスティは短剣を収め、俺にアイコンタクトを送ってくる。


 よくやったなラスティ。ありがとな。


 そんな意味を込めて微笑みを返す。


 ってか、ラスティって実はかなり強かったんだな。不意打ちとはいえ王国騎士団副団長に何もさせずに勝つってすごいこと……なんだよな、たぶん。俺は人の実力測るの苦手だからよくわからんが。


 改めてみるとラスティって姿勢いいな。背筋を張ってて体感も安定してる。それに騎士と比べても隙が少ない方──。


「気持ち悪い目で人の体をジロジロ見ないでください。Gよりキモいですよ」


 はいすぐやめます!


 声には出さなかったが、俺を見下すラスティの目はそう言っていた。被害妄想で脚色した気もするが、ラスティならこのくらい言いそうだ。


 俺はすぐにラスティから目を逸らした。いくら俺でも中学生くらいの女子に、しかも知り合いにキモいって言われたら傷つくんだぞ?


 ちなみになぜかこの世界、種類は少ないが日本と同じ生き物や植物も生息している──うん……ゴキも、いる。


 どうでもいいことを考えて現実逃避している俺をよそに、ラスティは俺から視線を外しクレナに向き直る。


「フラウ様はバカで考えなしですが──」


 まだ俺の悪口言うのか……ある意味すごいなおまえ。


「──フラウ様はやる時はやるお方です。それに信念を曲げる人でもない。現場ではワタシがフラウ様を守ります。ですからどうか、フラウ様の同行をお許しください」


 そして、ラスティはクレナに頭を下げた。


「お願いしますクレナ様」


 続いて俺も頭を下げると、三人の騎士も跪いたまま頭を下げた。


 クレナは腰に手を当て目を閉じる。二、三秒そうしてから、クレナはフゥ……と息を吐いた。


「……わかった。フラウ様の同行を認めよう」


 よっしゃ! やっっっと許可出た。


「ありがとうございます! 騎士のお三方もありがとうございました」


「いえいえ、俺たちは自分の気持ちに従っただけですから」


 騎士たちに一礼してから、俺はラスティに耳打ちする。


「ラスティもありがとな」


「いえ、ワタシはフラウ様の従者ですから、当然のことをしたまでです」


「相変わらずつれないなぁ」


 ようやく絶望顔を作れると調子に乗ってラスティの頬をツンツンぷにぷにしていると、ラスティに指を叩き落とされた。ちゃんと痛いんだが……。


 すると、クレナが咳払いをして話を戻す。


「んん……! ただし、私がフラウ様の身が危ないと判断した場合はすぐに撤退する。いいな?」


「はい!」


 ま、クレナもラスティの実力を認めたし、そうそう撤退することもないだろ。


 そんなこんなで俺たちは今夜、奴隷オークションに突入する運びとなった。


***


 人攫いに攫われた女の子──ソフィアたちが閉じ込められている鉄格子の部屋。そこに、奴隷オークションのために雇われた人攫いのクラメルが入ってくる。


 そして無造作に鉄格子の扉を開け、ソフィアの妹であるエリヤを指差す。


「おいおまえ。出ろ」


「わ、たし……?」


「待ってください! わたしが代わりになりますからエリヤには手を出さないで!」


 エリヤ一人連れ出されたら何をされるかわからない。そう思ったソフィアはエリヤの前で両手広げ庇う。が──。


「邪魔だどけ! もうすぐオークションが始まんだよ! 今はテメェに構ってる時間はねェ!」


「カフッ……」


 ソフィアは横腹を蹴られ、いとも簡単に蹴り飛ばされてしまった。


「お姉ちゃん!」


 口から吐血し、薄れゆく意識の中でソフィアは、首に繋がれた鎖を引かれて連れ去られていくエリヤに手を伸ばす。エリヤも倒れたソフィアに向かって必死に手を伸ばすが、二人の手が触れ合うことはなかった。


 そうしてエリヤは、クラメルによって部屋の外へと連れ出されてしまった。

この話を読んでいただきありがとうございます!


「面白かった!」

「続きが気になる!」


と思っていただけたら、


ブックマーク登録や感想、

↓の「☆☆☆☆☆」をタップして、応援していただけるとうれしいです!


星はいくつでも構いません。評価をいただけるだけで作者は幸せです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ