エーテル・キャピタル
宏大な空売り(ショート)計画が脳内で幕を開けた直後、腹部から不逞な抗議の声が響いた。
「咕噜噜――(グォォォ)」
張佑熙の視界が歪み、額から滲み出た細かな冷汗が伝う。
『法目』の起動は、この身体にただでさえ残り少なかった体力を根こそぎ吸い尽くしていた。極度の空腹が引き起こした低血糖の眩暈が、容赦なく彼を現実へと引き戻す。
彼は眩暈を必死に堪えながら、荒れ果てたリビングをひっくり返して回った。
十分後、彼は掌に寂しく残った二枚の銅貨を見つめ、溜息をついた。
この世界では、銅貨一枚で木屑の混じった黒パンが巨大な一切れ買える。
三百金貨は三万枚の銅貨に相当し、五人家族が下層地区で十年は潤って暮らせる額だ。
(三日の期限。正規の手段で流動資金を調達するなど、痴人の夢に等しい)
張佑熙は銅貨を高く放り投げ、正確に掌へと戻した。
(正規のルートが通じないなら、市場で『不良資産』を見つけ出し、一度爆倉させてやるしかない)
今にも崩れそうな木扉を押し開けると、豊饒の街の下層地区特有の酸っぱい臭気が、石炭の燃える刺激臭と混ざり合って真正面から吹き付けてきた。
通りは狭く泥濘んでおり、両側にはレンガと木造の小楼がひしめき合っている。
時折、フード付きの長袍をまとった教会の低級修道士が通りを横切ると、両脇の平民たちは即座に足を止め、頭を垂れて胸に手を当て、「神の御加護を」と口にした。
張佑熙はそれらを黙殺し、原主の記憶に従って三つの路地を抜け、賑やかな交差点で足を止めた。
交差点で最も目立つ場所に、三階建ての石造りの小楼が鎮座している。
門口には輝く銅の看板が掛かっていた――『鉄砧商行・第四分店』。
ここが、高利貸しのブレントの背後にいる勢力だ。
商行の一階では各種の日用物资や安価なエンチャント薬剤が販売されており、今は人頭が蠢き、商売は繁盛している。
(債権者が鉄砧会なら、債権者から直接利益を抽出して债务を相殺する。これこそが、最も完璧な閉環だ)
張佑熙は路地の角の影に立ち、左手の食指と中指を揃え、人目を忍んで眼前を一拭きした。
「洞微鑑業法目、開!」
眼前の市井の光景から色彩が褪せ、無数に交錯するエネルギーの潮流へと化す。
法目の注視の下、あの立派な石楼はレンガの表象を剥ぎ取られ、極めて歪んだ底色を露呈した。
楼体の上空には、頼りなく浮かぶ暗金の気流が一団渦巻いている。これは商行の表向きのキャッシュフローと物资備蓄を表していた。
張佑熙が前世で培ったプロの直感が飛躍的に回転し、この金気に価格をつけた。……死んでも金貨千枚には届かない。
この金気の階下で、商行の地基は泥沼のように粘稠な黒気に完全に腐蝕されていた。
黒気の中には絶望した顔がかすかに浮かび上がっている。それは平民を欺き、致死性の薬剤を売り、暴力的な取り立てによって積み上げられた、滔天たる悪業だった。
悪業は資産を遥かに凌駕し、隠れた不良債権は金貨三千枚以上に達している。
この一見繁栄している産業は、天道の法則による監査の下では、とうの昔に債務超過であり、いつ法則の反噬に直面してもおかしくない空殻だった。
張佑熙の視線は黒い業力を追跡し、最も濃厚な死気が、商行一階のカウンターで最も目立つ場所から絶えず放出されていることを発見した。
そこには、精緻なガラス瓶に詰められた淡金色の液体が列をなして並べられている。
「初級聖水。販売価格:銀貨二枚」
原主の記憶が翻涌する。
これは、教会が祈祷を捧げた神聖な泉水を混入したと称され、万病を治し、疲労を回復させるとして、下層地区の平民たちが最も渇望する『神薬』だった。
彼は法目を閉じ、精神力の過度な使用によって鼻腔から一筋の熱が込み上げるのを感じた。
彼は無造作に鼻血を拭うと、商行の大門を推し開けた。
大広間には刺すような薬草の臭いが充満し、太り肉の腹をした管事が高いカウンターの後ろに立ち、唾を飛ばしながら、数人の身なりのむさ苦しい平民に売り込んでいた。
「これは内城の大聖堂から運ばれてきたばかりの聖水だ! 飲めば、たとえ脚が折れていてもすぐに立ち上がって働ける! 本日は特価、銀貨二枚だ!」
平民たちは躊躇いの表情を浮かべた。銀貨二枚は、彼らの半月分の賃金に相当する。
「一本くれ」
冷ややかな声が、人混みの後方から響いた。
管事は目を輝かせ、即座に媚びを売るような笑顔に切り替えて顔を上げた。しかし来人の顔を確認した瞬間、笑顔が脂肉の中で凍りついた。
「おや、これはヒューズ家の小派物のエヴァンじゃないか」
管事は彼に気づき、木製のカウンターをコツコツと叩きながら、蔑むような視線を向けた。「ブレントの兄貴がさっき通達を出したばかりだ。お前はうちに金貨三百枚の借金があるとな。どうだ、腎臓でも売って金を工面するんじゃなく、うちの店で気前よく振る舞いに来たのか?」
大広間の平民たちは即座に散り、張佑熙に指を差して囁き合った。
張佑熙はそれらに耳を貸さず、カウンターの前まで直進し、掌にあったわずか二枚の銅貨を卓上に叩きつけた。
「薬を買いに来たんじゃない」
彼は管事を直視し、声は大きくなかったが、極めて鮮明に言った。「お前たちが偽薬を売っているのを告発しに来たんだ。この所謂聖水は、教会の祈祷など一切受けておらず、下水道の苔の抽出液に微量の幻覚剤を調合した工業廃棄物だ」
大広間内は一瞬にして死寂に包まれた。
管事の顔の横肉が猛然と引きつり、瞳の奥に一筋の動揺が走ったが、即座に暴怒によって覆い隠された。
「放肆! アイアン・アンビル会を汚蔑する気か!?」
彼はカウンターの下から鉄を包んだ短棍を取り出し、張佑熙を指差した。
「者共! この騒ぎを起こした狂人を叩き出せ!」
数人の筋骨隆々とした打手が門の後ろから陰険な面持ちで近づいてきた。
張佑熙は後退せず、逆に一歩前へと進み、指先で『聖水』が詰まったガラス瓶を軽く敲いた。
「汚蔑かどうかは、実は簡単に検証できる」
彼の指先はいつの間にか、極めて細い傷口を刻んでいた。
《太上玄元造化玉冊》の微かな法則の気配を含んだ一滴の鮮血が、指先に沿って音もなくガラス瓶の木塞に塗りつけられた。
天道の律令、業障を鑑査せん。
「教会の律法によれば、真の聖水は邪穢に遭えば光を放つ」
張佑熙は半歩下がり、十指を交差させて下顎に当て、脊背を微かに前へと傾け、頭を垂れて両目を閉じた。内城の大聖堂にいる、あの狂信的な信徒たちの祷告の姿勢を完璧に複刻する。
「そして偽劣の毒薬は、真の信仰に遭えば……」
張佑熙は胸の前で虚空に十字を描き、再び両目を開いた時、あの漆黒の瞳には高高上上とした悲憫だけが残っていた。「――崩壊するのみだ」
祷告の声が落ちた。
「咔嚓――(パキッ)」
細微な砕裂音が、静寂な大広間の中に響いた。
カウンターの真ん中に置かれていた、あの本の初級聖水の表面に蜘蛛の巣のような紋様が裂け走った。本来淡金色だった液体は、衆目環視の下で急速に黒ずみ、悪臭を放つ漆黒の膿水へと化した。
引き続いて連鎖反応が引き起こされた。
「砰!砰!砰!(パンッ!パンッ!パンッ!)」
カウンターに並べられていたガラス瓶が次々と炸裂し、黒い膿水が管事の顔面を直撃した。下水道が発酵したような悪臭が、大広間全体を完全に飲み込んだ。




