その2 「走る。走る。装備がないから楽だけど走るのはめんどい」
「えっほ。えっほ。えっほ。えっほ」
早く基地に戻らないと戦果を挙げられないぜ~
山神は腕をブンブンと振り足をきれいに挙げ腸腰筋をちゃんと使えている綺麗な走り方で走っていた
「こんなデブが走ってるとこ見られたら恥ずかしいなぁ」
と言う山神であったが明らかに山神の走り方は訓練をしている事が一目で分かるような走り方であった。デブと自分では自虐するが彼の腕の筋肉は明らかに一般のソレとは違うことが分かる。体だってそうだ、胸板は厚く首も太い、そして尻はプリっと上がり太ももは筋肉質で太い、そしてなにより、僧帽筋だ。いつもなにか重い物を持っている・持ち上げられるという事が分かるほどに大きい、角度を変えれば後ろからは僧帽筋に隠れ首も見えないだろう・・・
この男、山神 拳は明らかに周りとは違っていた。
言ってしまえば、周囲の一般人より強い。だが、だが!!
「あら!!けんちゃん!!隣の地区で魔獣が出たそうよ!!、けんちゃんもシェルターに逃げないと!!」
山神が基地の入り口の300メートル付近に達したところに頭を布で覆い、戦時下のような恰好をしている車道をまたいだ歩道にいる老婆に大声で止められた
「あっ!!・・・」
山田のおばあちゃん、二十年前からの知り合いで御年90歳、杖を突いているがちゃんと歩けるしハッキリと喋れるし、隣近所でいい人なんだけど・・・俺のことニートって思ってるんだよなぁ、まぁ説明しない俺も俺だけど
山神は立ち止まり声を大きく喋った
「山田のおばあちゃん!!あ、あの!!、実は自分は働いてまして!!」
「なんて!?」
「あ!あの!実は働いてまして!!」
「あぁぁ!?」
「え!?あ、あの!!働いてまして!!」
「ああぁぁん!!??」
「いや・・・あのあの。あの・・・あのぉ、働いてまして・・・」
山神の声が次第に小さくなる
ど、どうしよう。全然声が届いてないじゃん・・・でも、言わないとおばあちゃん心配するし・・
そう、この山神という男、人見知りで若干のコミュ障なのである、そして、若干のがり症なのである。この若干の嫌な部分を持って生まれたので強いのにも関わらず自分自身にあまり自信がないのである
「いいから!!にげるよ!!」
その時、シビレを切らした山田のおばあちゃんが山神の隣の歩道に移動するために杖を突きながら車道へと足を踏み出した
「待って!!おばぁちゃん!!危ないッ」
やばい!!、街に出現したクラス2の魔獣の警報で皆パニックになっているこの中で車道はむやみやたらに歩行していいモノじゃない!!、パニックになった住民が危険な運転をする可能性があるからだ!!
ブォオオオンン!!!
その時、遠い所から大きいエンジン音が山神の耳に聞こえた
「(この音は来る音だ!!しかもこの音スポーツカー!!おばあちゃんは耳が聞こえてないのか!!?)」
山神が車道に飛び出そうとした
「おばぁちゃん!!何やってるの!?」
山田のおばちゃんの腕を寸前でつかみ、歩道に引っ張った女性がいた
「!!」
山神は車道に飛び出していた
ブォオオオ!!!
大きなエンジン音が山神の耳元まで聞こえた
「ひえっ!!!」
急ブレーキの音が聞こえたがスピードは遅くなる前に山神に当たる
やべぇ、これが俺の最後の景色なのか・・・。あ、山田のおばあちゃん車道に出る前に誰かに腕掴まれてる?、誰だ?・・・あ~~。明さんか、大きくなったなぁ、何歳だったけ?20歳になってんだっけ?いや、それは14年前か。明さん今34歳か、そりゃでかいわけだ。あっそれにしても明さん、ひどい顔だな~、血相変えて、あっそうか。俺の事心配してくれてんのか、はぁ~ごめんねぇ~最後に嫌なモノ見せちゃって、本当にごめんね。でも、もしかしたら異世界に転生とかしてハーレム作れるかも、フフフフっ。・・・・いや、そんなに異世界転生興味ないな
「キャーーーー!!!!」
明の叫びが周囲に響いた
「あぶっねぇ~、死ぬかと思った」
山神は寸前でもの凄く足に力を入れボクシングでいうバックステップをした。その要領で車を避けたのである
「あ、生きてた」
山神が動いているのを見て明は足の力が抜け地面にへなへなと座り込んだ
まぁ考えて見れば、一億近くの貯金があるのに特にする事が思いつかない俺が異世界転生してもめんどいだけだな
「やまがみさぁ~~ん」
力が抜けた声が山神を読んだ
「ん?この声」
目線を声が聞こえたところへ移す。そこには明が腰が抜け地面に座り込んでいる姿があった
「あ!!だ、大丈夫ですか!?」
「だ、だいじょうぶでぇ~す。おばちゃんには私から言っておきますのでお仕事頑張って下さい~~」
山神は心配の目を向けたが明さんが腕を上げひらひらと手を振っているのを見るとなんだか分からないが信用し、軽い会釈をし「ありがとうございます!!」と言い走り去った
「相変わらず良いフォームで走るねぇ~、良すぎて少しキモイけど」
「コラ!!明!!、なんでけんちゃんを止めなかった!!」
山田のおばあちゃんが杖で腰が抜けた明を叩きながら怒った顔でそう言う
「痛い!痛い!いたいよおばぁちゃん」
明が頭を押さえながらそう言うと山田のおばあちゃんは「けんちゃんが死んでもいいのかい!!」といい杖でまた叩こうする、明は杖を普通に掴み、ニコニコな笑顔でおばあちゃんに喋りかけた
「理由は二つあるよ~。一つはこの地区は多分だけど平気だから。二つ目の理由は山神さんが対魔獣防衛隊で働いているから」
山田のおばあちゃんはその事を聞くと明の手から杖を引っこ抜こうとするのを止め目を丸くし「ええぇ!!?」と声を上げ驚いた表情を見せた
「あの子ちゃんと働いてたのかい!?」
明はその言葉を聞くと、口をにこっとさせ爆笑した
「ま、まぁ、そこが気になるのは分からなくもないけど!!ソコ!?ははっはは!!」
「いや、そこだろ!!あの見た目で働けるところとかあるのかい!?」
明は息を吸い吐くのを繰り返すと落ち着きを取り戻した
「あの武将ひげではふつうはどこにも就職はできないだろうね、対魔獣防衛隊以外は」
明は足に力を入れ立ち上がると対魔獣防衛隊の天馬基地前で入る手続きをしている山神の姿を見つめた
「あの人は何なんだろうねぇ~」
明の目は遠い目をしていた
その時、山神は門の受付を終え、自分のロッカー室へと走っていた
「当たり前だけど!基地の中も走らなきゃだよなぁ~~」
山神はロッカー室までの10キロ走りながら叫んだ
「待ってろよ!!俺のМ4!!」
その様子を基地内の建物のカーテンを少しあけ見ている人影があった
「山神・・・拳・・・早く話したいなぁ」
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この物語はフィクションです、実際のモノとは関係ありません( ^ω^)・・・




