表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
人狼「メイ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
88/94

接触


華陽と若藻は妖の気配を押し殺し、普通の人間の少女を装って、少年の後を極々自然に付けて歩く。目標の仲間には「管狐」使いも居たはずだ、その警戒範囲内では迂闊な行動はとれない。


今回の目的は相手を確認し、その情報を詳しく調べる事だ、それでいてこちらの情報は微塵も与えてはならない。こちらの正体を明かさずに相手の情報を丸裸にする事、こちらが完全に有利な状況でなければ仕掛けてはならない。


華陽はこのまま無言で少年の後を付いて歩くのは不自然ではないか、と思いつき誰が見ても少年と一緒に歩く行動が不自然ではない状況を作るべく動いた。


少し歩いた先のコンビニ前に屯していた頭の悪そうなヤンキー二人組が見え、コイツ等を使う事にする。華陽は傾国傾城の微笑みを魅せ、ヤンキーを操る。


────────────────────


空外少年の前に頭の悪そうなヤンキーが立ち塞がり、彼の行く手を阻む。


「よう坊や、ちょっと金貸してくんねーかな?」

「いいおべべ着てっから金位持ってんだろ?」


いきなり現れた頭の悪そうなヤンキーに絡まれ少年は泣きそうな表情になった。


「・・・僕、お金少ししか持ってません。」

「ちょっとでいいから貸してくれっつってんだろ!?」

頭の悪そうなヤンキーの怒鳴り声に少年は体を震わせ立ちすくむ。


「ちょっと貴方達、小さな子に何をしているのかしら?」

「小さい子じゃないと相手に出来ねーのかよ、タコ!」

華陽と若藻が若干芝居がかったセリフで少年とヤンキーの間に割って入る。


「なんだ?お前らは?」

頭の悪そうなヤンキーの背の高い方が突然現れた少女らに食って掛かる。


『お前、若藻を一発殴りなさい。』

『はい、了解しました。』

『え?ちょっと?あたしコイツに殴られるわけ?』

若藻が華陽に一瞬抗議の視線を送った直後、その頬が音を立てて叩かれた。


「貴方達、傷害で警察に突き出されたくなかったら失せなさい、」

「・・・お前ら、覚えてろよ!」


頭の悪そうなヤンキー達は捨て台詞を残してそのまま何処かへ走り去った。


『華陽姉ぇ、あいつコロしていい?』

『今度会った時に覚えてたらやりなさい、今は駄目。』


視線で会話しながら華陽は若藻の張られた頬を確認する風を装い、その頬に小さく傷を入れ血を滲ませた、『あら、ケガしてるのね、これで押さえなさい」と若藻にハンカチを渡し、それで頬を押さえる様指示する。


「お姉ちゃん達、有難う御座いました。」

「坊や、一人じゃ危ないからお姉ちゃん達が付いて行ってあげる、何処に行くの?」


華陽の天使の様な微笑みに少年は警戒する事もなく、今から進む方向へ指を刺す。

その先には「アマツキツネ」の事務所があった。


────────────────────


「お姉ちゃん!お姉ちゃんが大変なんだ!」

「そら君どうしたの?あら?そちらの方は?」


空外少年が開口一番『お姉ちゃんが大変』と言い入って来た事に驚いた弥生は、その背後に2人の美少女がこちらに向けて挨拶をしている事に気付いた。


「あのね、僕が悪い人に脅されてたらお姉ちゃんが助けてくれたの。」

「それは有難うございま・・・あ!怪我をされてますね手当をしましょう。」

弥生は若藻が頬をハンカチで押さえているのに気付き、ロッカーから出した救急箱から消毒液を取り出した。二人にテーブルに座る様勧め、2人もそれに従う。


「あーこんなの大した事ないですよ、ほっときゃ治ります。」

「いえ、消毒はしておかないと、菌が入ったら大変です、さ、見せて下さい。」


華陽は若藻が治療を受けている間にさりげなく事務所内を観察する。この騒ぎの中構わず机で寝ている女性が1人居る他は誰も居ない。雰囲気からしてこの女が『狼』なのだろう、そしてこの手当をしている少女が目的の『御先』の主なのだろう。


今は気取られぬ様こちらの気配を絶っている分、相手の気配も読めない為、確証は無いが多分間違いなかろう。他の「犬」と「狐」の残り香もあるが今は居ない。

このまま目標を攫う事も考えたが、今はまだ時期が悪い。何より「狼」が居る。


あと少し時期を待ち、相応に準備が完了して改めて出直さなければなるまい。そんな事を考えていたら治療が終わったようだ。華陽は天使の微笑みで礼を言う。


「有難うございました、あ、私は三浦 華陽と申します。」

「いえ御礼を言うのはこちらです、私は 信楽 弥生と言います。」

「あたし、上総 若藻、お姉さんありがとうね。」

おのおの自己紹介して改めて礼を言い合い、弥生が茶を淹れようと席を立つ。


「あ、今お茶を淹れますから、ゆっくりして行って下さいね。」

「あ、いえ、お構いなく。私達これから所用がありますのでまた改めて。」

「うん、お姉さん、今度ゆっくり治療のお礼に来るからねー。」


そう言って二人の美少女は再会を約束して席を立ち、『じゃあ坊やまたね。』と言って事務所を辞去した。その際、若藻は「狼」にちらりと視線を寄越した。



────────────────────


華陽は事務所を出た後、スマホを取り出ししげぴーへ連絡し車を近くに回させた。

その間、若藻は珍しく無言だった。事務所から駅方面へ歩いている途中でしげぴーの運転するアルファードが到着し、2人は車内の人となった。


「・・・若藻、『狼』さんはどうだった?」

「・・・・何、あの化け物?寝てる風で警戒は怠らないし、間違って正体現したらその瞬間に襲ってきそうな雰囲気だった・・・」


若藻は褒姒から言われた『あなたじゃ勝てない』の言葉を噛みしめていた。一体、どこであれほどの強さを手にする事が出来たのか?国内?いや海外でもあれ程の研鑽を積める場所があるとでも言うのか?もしかしたら場所ではなく修行に掛けた時間の問題か?


「まともに行っては勝てないわ、今は時期が悪いし出直して正解ね。」

華陽はそう言い、さらに付け加える。


「・・・それに恰好の人質候補が見つかったわ。」


華陽はさりげなくスマホに収めた空外少年の写真を見つめ、そう呟いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ