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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
人狼「メイ」

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ミエナイチカラ


彩音が「アマツキツネ」事務所に戻ると、所内には政光一人しか居なかった。


「あれ?政光さんお一人ですか?」

「うん、弥生君と五月君は近くのカフェの試作品の試食に行ってるよ。」


『まぁ座って。』政光はそう言いつつ立ち上がり、コーヒーメーカーを操作し、コーヒーを2杯用意して彩音と自分の席へと置いた。


政光が言うには弥生は感覚が鋭敏な為、スイーツの微妙な匂いや味の塩梅の判断が的確で、彼女が「美味しい」と感じたモノは必ず売れると評判になっている。

その為、飲食店から試食の依頼がひっきりなしに来ているそうだ。


「義経君も出かけてるし僕一人さ、で、児童養護施設の件なんだが。」


政光が調べた範囲で解った事は、弥生が高校生の3年間過ごした『合歓木学園』、中学生時3年間を過ごした『若葉の里』、共に入所も退所も何の問題もなくスムーズに手続きが行われていた。が、普通ではあり得ない程の早さだったらしい。


「あり得ない位早い?普段はそんなに時間が掛かるんですか?」

「うん、児童相談所長が保護者との面談や状況とか色々確認して、施設に入所するか否か判断するんだけど、その過程をほとんど飛ばした位の早さだったらしい。」


特に『合歓木学園』に入所する際は空きが無かったにも拘らず、弥生の入所が打診された直後に彼女の保護者から施設を建て替える為の多額の寄付があり、弥生の入所が前提の施設の建て替えだった事が解ったと言う。


「・・・それって、問題のある保護者から一時的に子供を引き離す為の処置じゃないですよね?むしろ保護者が積極的に支援してるとしか思えませんが。」

「そうなんだ、むしろ大事な娘を何かから隠す為、守る為の処置に思えるんだ。」


それも保護者がいくら児童養護施設に入所させようとした所で、児童相談所長が首を縦に振らなければ入所させようがない。児童相談所が手続きを簡略したと言うのも、何か普段とは違う大きな見えない力が働いたとしか思えないと言う。


「もしかして姉さんの金色の『管狐』と関係あるんでしょうか?」

「その可能性が一番高いと思う。ごく普通の女の子に対する処遇じゃないからね。あの金色の『管狐』、義経君は『オサキ』だとしてるが、それを何者かから隠す為じゃないかと思えるんだ。」

「『オサキ』ですか?『管狐』、じゃなくて?」

彩音は聞き慣れない『オサキ』の言葉に首を傾げた、彼に対して政光が説明する。


「うん、『オサキ』は九尾の狐の体毛から生まれたとも、『殺生石』の破片から生まれたとも言われてて、妖狐由来の『憑き物』だと言う事らしい。」

「『九尾の狐』ですか・・・。最強格の妖怪ですよね?」

「妖怪と考える人も多いけど、本来は『瑞獣』でほぼ『神獣』と言って良いんだ。」


『瑞獣』・・・『神獣』・・・?そんなモノから生まれたとされる『オサキ』・・・。

どんな強大な力を持っているのかは解らないが、それを悪用しようとしている者が居て、それを阻止しようとしている者も居ると言う事なのか?


そんなモノが憑いている為に弥生は普通の生活が送れずに、児童養護施設に匿われたり違う施設に入れられたりと決して幸せとは言えない人生を送っているのか?

彩音は其の理不尽さに憤る、何故そんなものが姉さんに憑いているんだ、と。


「それと・・・これは君に言うべきか迷ったんだが・・・君も当事者だし・・・。」

「その奥歯にものが挟まった様な物言いは・・・流石に気になりますよ?」

政光は彩音の真剣な表情に決心する。弥生に関わる問題なら身内の彩音に隠すべきではない。それに彩音は「管狐」が使える、弥生を護る力を持っているのだ。


「うん、解った。君には伝えておこう。実はこの「アマツキツネ」なんだが、このNPO法人すら弥生君の為に用意された物なのかも知れないんだ。」

「え?政光さん達、義経さんや五月さんまで姉さんを匿う為に集められて、この「アマツキツネ」自体もその為に用意されたって事なんですか?」


彩音は困惑した、この「アマツキツネ」を知ってまだ間が無いが、それでも政光の人脈や五月たちと言った異能者の人選、こども食堂を短期間で設置した資金力、それらを容易に準備できる力を持った個人、もしくは組織がバックに居る証拠だ。


そしてその個人、組織が弥生に憑いた「オサキ」を何者かから匿おうとしている。

そしてその何者かは「オサキ」を何故狙うのか?「オサキ」をどうしようと言うのか?「オサキ」が祖奴の手に渡ればどうなるのか・・・?


「そして、此処からが本題なんだが、僕たちのバックの組織はかなり大きな力を持っている。その組織ですらその何者かには力が及ばず、今のところは弥生君たちを匿う事しか出来ないらしい事なんだ。」

「・・・その相手はそれ程の力を持った奴で、そんな奴が姉さんを探しているって事なんですね?」

政光は黙って頷く、「アマツキツネ」のバックからは何も言って来ない為、この話は状況証拠から導き出された仮説に過ぎないが、そう間違はいないはずだ、と言う。


「万が一と言う事もある、彩音君も今後は「管狐」は極力使わない方が良いかもしれない。奴らが「オサキ」を探していると言う事は、「管狐」を使う君も見つかる可能性がある。そうなると弥生君が芋づる式に見つかるかも知れない。」

「・・・・確かにそうですね、今後は自重する事にします。」


彩音が肯定したのを見て、政光は頷いて応える。そして彩音は「アマツキツネ」事務所から出てこども食堂の方へと移動して行った。


────────────────────


事務所に一人残った政光だが、敢えて彩音に言わなかった事がある。


この「アマツキツネ」が一年前に急遽設立されたのは、それまでは弥生を世間の目から匿うだけで済んでいたが、匿うだけでは済まなくなった可能性が高くなったからではないか?。


奴らとの接触が避けられない為、それに備えて自分達「人外の物」達が戦力として集められたとすれば・・・。その奴らと戦わねばならない日が目前に迫っているだと言う可能性を政光は否定する事が出来なかった。




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