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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
信楽 弥生

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弥生の過去


「彩音君、施設ってそんな酷い所じゃないよ?少なくとも私の居た所は。」


政光も義経も弥生の前では児童養護施設の話題に触れない様、細心の注意を払っていたと言うのによりによって自分がうっかり弥生の前で口にしてしまうとは・・・。


「・・・あ・・そうなんだ、じゃあそんなに心配しないで良いのかな?」

「うん、同じ年頃の子供と集団生活するから多少の問題とかあるかもだけど、虐めとかは先生がさせないし。生活にはそう不自由はないよ?」


弥生が普通に養護施設について教えてくれた事に、彩音は胸を撫でおろした。

弥生が特にショックを受けた風には見えない、至って冷静、いつもの弥生だ。

この件については政光達が気を使い過ぎていたのかも、彩音はそう思った。


「私はちょっと馴染めなかったけど、一緒に生活した子達も必要以上に他に干渉しなかったし、お互い遠慮は有ったけれど、仲間外れみたいなのも無かったよ?」


弥生は彩音だけではなく、そこに居た祥子と陽葵にも聞かせる様にそう説明した。彼女らが施設について抱いている負のイメージを払拭する為なのか。


「そうなんですね、あの子らも育児放棄されてる現状よりは安心できますね。」

「それなら良かった、暴力振るう親から離して施設で生活する方が良いですよね、」

祥子と陽葵はお互いを見て肩の荷が下りた様に感じ、思わず笑みを浮かべる。


「うん、『合歓木学園』の前に居た施設も同じ感じだったし、そう違わないよ。」

弥生がそう付け加えた事で祥子と陽葵は更に安心したようだったが、彩音はその弥生の言った内容に少し引っ掛かる物を覚えた。


『前に居た施設?姉さん、施設を一度変わっている?そんな事あるのか?』


一度入所した施設を出て、新たな施設に入所する。児童養護施設には詳しくないが、そんな事が可能なのか?それとも以前居た施設に何らかの問題が有って、変わらざるを得なかったのか?彩音は政光に相談してみる事にした。


────────────────────


弥生がこども食堂で用事を済ませた後も、『食堂を手伝う』と言う理由を付けて食堂に残り、その言葉の通りに食堂を手伝いつつ政光が食堂に来るのを待った。


夜19:00を過ぎ小学生の姿は消え、中高生の利用者が目立つ時間に政光は現れた。

彩音は政光に声を掛け職員が利用するテーブルに誘い対面で座ると、祥子が二人にコーヒーを淹れて持ってきてくれた。


「はい、所長、彩音君、ごゆっくりどうぞ。」

「有難う、祥子君。で、話って何だい彩音君?」

政光がコーヒーを一口飲んで彩音に問う、彩音は周囲を見回し声を潜めて言う。


「実は、姉さんに入所してた養護施設の件を聞いちゃいまして・・・。」

「え?そうなの?弥生君、何か言ってた?大丈夫だった?」

政光は心配そうにその時の弥生の様子を尋ね、彩音は政光を安心させるように


「ええ、特になにもなく、至って普通に教えてくれました。」

「あー・・・そうなんだ?僕らが気を回し過ぎてたのか、それなら良かった。」


政光は安心したのか更にコーヒーを一口飲んで息を吐く。そこで彩音は彼に弥生から聞いた『中学生の3年間と高校生の3年間で別の施設に居た。』という事をそのまま伝え、そう言う事が可能なのかと尋ねてみた。


「えぇ?違う施設に転出?前の施設側になにか問題でも起こったのかな?」


政光は驚いた表情で少し考える。前に入所してた施設が経営が難しくなって転出しなければならなくなったとかかな?と彩音が思っていたのと同じ事を口にした。


そうでもなければ、施設の入所には『児童相談所』にまず相談し、入所が必要かどうかを児相が判断をする少々面倒な手続きが必要になる。その面倒な手続きを乗り越えせっかく入所した施設を出て、別の施設に入所する等、ありえるのか?


「別の施設に移ったら月額費用はどうなるんだろう?同額で良いのかな?」

「え?養護施設ってお金かかるんですか?無料かと思ってましたよ?」

「うん、保護者の収入で変動してね、月々0円~10万円以上の場合もあるんだ。」


児童養護施設に係る月額費用は、保護者の所得税額によって決まり、自治体にもよるが生活保護世帯で「0円」、高額所得者だと「10万円」を超える場合もあると言う。

保護者が払えない場合や払いたくない場合は、国から補助が出る事になる。


「それにしても違う施設に移った事情が気になるな、ちょっと調べてみよう。」

「よろしくお願いします政光さん。」

「御礼を言われる事じゃないよ、一応君らは未成年だし僕が保護者替わりさ。」


そう言って政光は残ったコーヒーを飲むと席を立ち。『事務所に帰って調べてみる、何か解ったら連絡するよ。』と言い、祥子に『コーヒー美味しかったよ、無理はしないでね。』と言い残し、そのまま食堂を出て行ってしまった。


その後ろ姿を見送りながら『政光さん、こういう時は凄い頼りになるな、』と、彩音は実感していた。今回の様な事例を調べる場合、「管狐」を使うにしても、先ず関係部署が何処なのか、その中の誰を調べれば良いのかが解らないと調べようがない。


その点、官公庁の役人にも顔の利く政光がその気になれば、そう時間もかかるまいし、上手く行けば担当者に直通で話が聞ける事もある。

この件は政光に任せる事にして、彩音は宣言通りに食堂を最後まで手伝う事にした。


『そう言えば『合歓木学園』って言ってたな、そこの様子なら僕でも探れるな。』


彩音は政光に頼んだ件とは別に、自分の目で弥生の育った児童養護施設を見てみようと思い立ち、明日『合歓木学園』へ行ってみる事にした。



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