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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
人狼「メイ」

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こども食堂と児童養護施設


こども食堂を設立してしばらく経つと、この街にも程度の差こそあれ貧困にあえぐ子供達の多さを思い知らされた。


こども食堂を利用する事で3度の食事に困る事がなくなり、心身ともに余裕が出来て生活の質が向上しても、他に比べ学校生活では未だに不自由な家庭の子供も多い。

学用品等の費用も馬鹿には出来ず、必需品が揃えられずに肩身の狭い思いをするだけならまだしも、それが原因でいじめにつながる事例もある。


この辺りの事情は陽葵が中学時代に実体験した事もあり、こども食堂に来る子供達の様子から敏感に感じ取り、政光に実情を明かして相談する事にした。


「うちは貧しくて教科書とか筆記用具ももちろんですが、特に制服は高額なので替えが用意できない事が多くて苦労しました。」


公立の中学校、高校の制服一式の価格は平均4~6万円と言われている。

3年の在校期間をその金額で済ます事が出来れば、長い目で見れば私服を何着も買い替える事に比べて安くなる事も多いが、初期費用が高いのがネックとなる。


特に夏は洗い替えが少なく、毎日洗っては干してを繰り返すので痛みも早く、制服の見た目が明らかに違って見え、からかいや虐めの原因になっていたと言う。


「制服かぁ、学校に通う間だけしか着ないし、卒業と同時に捨てる事もあるよね。」

「はい。だからその捨てる制服を貰えないかって。当時親しくしてた先輩とかも居なかったし、言い出す事も出来なかったからなんとか出来ないかなって。」


陽葵の説明に政光は少し考え込み、やがて明るい表情で陽葵に言った。


「よし、来年の3月の卒業式以降に不要な制服を回収する仕組みを作ろう。」

自信たっぷりにそう言う政光の笑顔に、陽葵は心から安心する。なんとも慈愛に満ちたその笑顔に、幼い頃に死別した父親の面影が重なった。


「卒業式前に学校に連絡して、卒業生に対し不要な制服を「図書カード」と交換するって知らせてもらおう。そうして集めた制服をクリーニングと補修して、必要とする子供らに格安で販売するんだ。」


制服を金品と引き換えるのは親が快く思わないであろうから「図書カード」と引き換える事にすれば、親の同意も得易く集まり易いだろうとの判断だと言う。


「集めた制服を販売するんですか?無料で譲る方が良くないですか?」

必要とする子供に「販売」する事に違和感を感じた陽葵は政光に聞き返した。


「無料にすると本来必要としない者まで欲しがったりして数が足らなくなるかもしれないから、有料と言う事にして必要な者に行き渡るようにするんだ。」

そして、本当に必要な者には所得に合わせて格安、または購入額と同額の「図書カード」を進呈する事も考えているそうだ。販売する場所も、こども食堂の一角に値札を付けた制服を並べておけば、必要とする人の目に確実に触れるだろうと言う。


「食堂を利用する子供たちに優先で販売すると言う事ですね、いい考えです!」

「だろう?筆記用具も通販サイトで大量に購入して、小分けして販売しよう。」

学用品などの不安も今後はなるべくこども食堂で解消していく方向で政光が手配して行くと確約した。経済的に困っている子供達はかなり救われる事になる。


しかし、そこまでしても救えない深刻な問題を抱えている子供も居るのだ。



────────────────────


義経が「搾取子」として扱われていた子供らを救う為に、問題の親を「説得」して我が子への愛情を取り戻させる事が出来たのも、他の子供へ向ける愛情があればこそ出来た事だった。その愛情を「搾取子」である子にも向けさせればそれで良いのだ。


しかし、その愛情そのものが無い親と言うのも存在し、愛情が無い故にネグレクト、虐待が当たり前のように行われる家庭もある。愛琉々、祥子、陽葵の3人がそうだったが、彼女らは働ける年齢であった為、「アマツキツネ」で雇い生活の基盤を築く事が出来た。問題は働けない年齢の子供達だ。


祥子と陽葵はこども食堂に通う子供の中に2人、育児放棄の可能性のある子を見つけていた。自分達と同じような境遇の子供の存在に心を痛める彼女らだが、政光に相談したところ、『児童相談所』に相談したうえで『児童養護施設』に入れる事が最善ではないかと言う結論に達しつつあるようだった。


夕方4時前の、子供らの姿の無いこども食堂の様子を見に来た彩音に、祥子と陽葵はその子供らの件を話していた。児童養護施設がどんな所なのか詳しくは知らないが、施設で育つよりは、何とか親を改心させて親と暮らす事は出来ないだろうか、と。


「・・・児童養護施設か、僕もどんな所か知らないなぁ。」

一番身近な弥生が児童養護施設で育ってはいるが、施設で辛い目に合っていたりした場合、それを思い起こさせる事になるのではないかと、敢えて政光も義経も弥生の前では一切児童養護施設の話題には触れていないのだ。弥生には聞けない。


それに政光と義経がそう言う考えだと言う事は、やはり普通の生活と比較して辛い事が多い生活だと彼らも認識していると言う事だ。もちろん施設に依って職員の対応や設備の良し悪しと言う違いが有るのだろうが・・・。


「やっぱり、児童養護施設って辛い事が多いって事なんですよね?」

「うーん、政光さん達もそう考えてるっぽいけど、詳しくは解らないから近くの児童養護施設の実情を何件か調べてみるって言ってたんだよね。」


この近くの児童養護施設と言えば弥生の生活していた施設が真っ先に挙げられる。

『僕も姉さんがどんな生活してたのか気になるし、調べてみるかな?』


「姉さんの居た施設ってなんて名称なんだろう?直接は聞き難いしなぁ。」

彩音が思わずそう呟いた時、後ろから聞き慣れた声がかかった。


「私が居た施設は『合歓木ネムノキ学園』って名前だよ?」

「!?姐さん?」

思わず背後を振り返った彩音の目に、入り口に立つ弥生の姿が映った。


『しまった!姉さんの前では施設の話はしない様にしてたのに!』




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