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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
人狼「メイ」

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捜査協力依頼とアイスクリーム


彩音達が保護した少女は13名、中学生4人、高校生7人、20歳未満が2名の内訳だ。


取敢えずの宿として政光の顔の利くビジネスホテルのファミリールーム4室に分宿する形をとる事にした。早朝にチェックインした後、今回の騒動での疲れもあるだろうから夕方までゆっくり休養させて、夕刻から事務所に集まる事とした。


少女達は各自ゆっくり休養しているが、政光達はそうもいかない。

昨夜の騒動の件で警察署から捜査協力依頼があった為、政光がそちらの対応に追われる事となった。何しろ他県の犯罪組織に所属する総勢20名が制圧されたうえ、彼らの本拠地では一部当該施設が壊滅しているのだ。


S県警では対立組織との抗争かと緊張が走ったところへ、民間の非営利活動法人とのトラブルだったが、速やかに平和的に解決したという事がこちらの警察から伝えられた。それでも最初はなかなか信じて貰えず説明するのに苦労した様だ。


こちらの警察はこちらで、現場に弥生と五月が居ながら逮捕された20人に外傷がほぼ無いままに制圧された事に驚きを隠せずにいた。


五月が絡んだ事件の場合、相手の命までは奪わないが、相手が復讐など考えられなくなる程の恐怖と絶望が刻み込まれる事となる。手足の2~3本をへし折って本能に恐怖を刻み込むのが常であるため、全員無傷だったのが信じられなかった様だ。


特に弥生が傍にいた場合、五月は万が一にも弥生に危険が及ばない様に全員を一撃で戦闘不能にする傾向があり、相手の人数が増える程手加減が出来なくなるため、現場の惨状が酷くなるのが常だ。


反対に五月と相手が一対一の場合などは至って理性的に平和裏に解決する事となる。五月が相手の頭を片手で鷲掴んで力を入れ、頭蓋骨の軋む音を利かせるだけで大抵の犯罪者は戦意を喪失して許しを請う事となる。


「今回、五月さんが20人相手にしたって聞いた時は正直腰が引けましたよ。」

担当の刑事に言われ、政光は苦笑いで胡麻化した。


「被害者の少女達ですが、家庭環境が複雑な子が多いから僕達で預かります。捜査に協力は惜しみませんが、彼女たちのトラウマを刺激しない様に事情は僕たちの方で聞き出して、改めて報告させてください。」

「了解しました、なにかあればまた連絡しますのでよろしくお願いします。」


刑事と打ち合わせを終え、政光は事務所へと戻る事となった。


────────────────────


事務所では弥生と義経が少女達の住所や家庭状況を把握する作業に追われており、彩音は『管狐』で知り得た彼女らの情報を開示するなど手伝いをしていた。

五月は昼前に何処かへ出かけていたが、作業の途中で弥生が気づく。


「・・・あ、五月さん帰って来たみたい。」

「あぁ、何か買い出しに行ってたみたいですね、お昼には早いですが。」


彩音はその時見た。弥生の金色の「管狐」が外から戻ってきて弥生に体を擦り寄せたあと、義経に何か囁くようにしてまた外へ出て行ったのを。


『・・・姉さんの「管狐」は、義経さん達と情報を共有しているのか。』

金の管狐は力の覚醒していない弥生を護るため、義経や政光の力を利用しており、彼ら二人も事情が分かったうえで弥生を見守っているように思えた。そして五月さん、彼女も普段から弥生と行動を共にして物理的に弥生を保護しているようだ。


『ここは姉さんにとっても安心できる良い居場所の様だな。』

彩音がそう思っていると事務所の扉が開いて五月が荷物を持って帰って来た。


「少し休憩しよう、考えすぎるても良いことないよ?」

そう言って五月はアイスクリームショップの袋を3つテーブルに置いた。

その袋から8個入りのバラエティボックスを取り出し広げる。


「あら、アイスクリームですか、休憩に丁度いいですね。」

「8個入りって事は、政光さんはお預けって事で良いですか?」

政光さんアイスクリームって顔じゃないですからね、と義経。


「んー?4人で2個ずつだよ?あたしはコレ。」

そう言って五月は他の袋からチョコレートラズベリーケーキとダブルチョコレートケーキを取り出した。大量のアイスクリームケーキを五月一人で食べる場面を想像しただけで、彩音は頭痛がした様に錯覚し思わず頭を押さえた。


「・・・二つでも下手をすると頭痛がするのに、平気なんですか?」

「あ、あたしも一つだけ頂いて一つはおやつに頂きますね。」


義経と弥生が言う間にも、五月は愛用のアイスケーキナイフで切ったアイスを、アイスクリームスプーンで口に放り込む。それを見ていて彩音は本当に頭痛を感じた。


「・・・五月さん、凄いアイスお好きなんですね?」

頭を押さえながらの彩音の問いに五月は少し首を傾げ


「んー、バスの中で昔の夢を見てね、懐かしくて食べたくなったんだ。」


五月は少し遠い目をしてアイスクリームを口に運ぶペースがわずかに落ちた様に見えた。いや見えた様に感じただけか、既にケーキの半分は胃袋に消えている。


その時、彩音は見た。弥生の金色の「管狐」が五月が食べ続けるアイスクリームケーキの周りを周回しながら珍しそうに眺めているのを。


『もしかして食べたいのか?「管狐」が?アイスクリームを?』

僕の「管狐」は何かを食べようとした事は無いはずだ、やっぱり姉さんの「管狐」は明らかに普通のモノと違っているんだ、と。


五月にも金の「管狐」がアイスクリームの周囲を飛び回るのが見えていた。


『コイツ等ももしかしたら実体化出来るのか?桜達みたいに?』


五月はそう考えながら、アイスクリームスプーンで掬ったアイスを「管狐」に焦らすように見せびらかしながら、自分の口に放り込んだ。




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