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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
人狼「メイ」

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魔物の目的地


巨大魔獣の攻撃で遂に崩壊した南門、崩れた城壁から魔物達が街へと雪崩れ込む。


「やべぇ!魔物が入ってくるぞ!」

「ここで何としても食い止めろ!」

「アキラの大将!こっちに手ぇ貸してください!」


幾らアキラが攻撃しようとも巨大魔獣は何の痛痒も感じていないようで、城壁を更に崩そうとその巨体を破壊の為に活用していた。アキラは一旦巨大魔獣への攻撃を止め、雪崩れ込んだ魔物の殲滅に移った。


街の中心部に向かおうとする魔物へ追いついたアキラは、魔物の背後から手刀で後頭部を貫く。絶命した魔物には目も呉れず、次の目標の脊髄へ強烈な蹴りが入る。


総数は100匹程度であったが、城壁を破られた事の責任を痛感するアキラの猛攻で、全ての魔物が大地に倒れる事になった。巨大魔獣は随伴の魔物の行方など眼中にないようで、城壁を更に破壊する事に専念していた。


城壁を破壊する巨大魔獣の背中越しに、虚空の黒い穴から更に魔物の増援が下りて来るのが見える。更には破壊された南門の東側から、少数ではあるが魔物が襲来する。


「ああ!東門を攻撃してた奴らがこっちに回ってきやがった!?」

「おい!まずいぞ!南門から全部の敵が雪崩れ込んでくるぞ!」


アキラは血が流れるのも構わず唇を嚙みしめる。自分が不甲斐ないばかりにこの街を危険に晒してしまうとは・・・。アキラが背後の冒険者達に叫ぶ。


「住民が避難している行政区の建物の護衛に就け!ここは俺に任せろ!」


アキラも一人で全ての敵を殲滅できるなど思っていない。殲滅するつもりで戦うが、擦り抜けていく奴らも必ず出る、そいつらを最終防衛線の行政区に籠る冒険者達と協力して殲滅しなければならない。


巨大魔獣は冒険者達の動向などお構いなしに城壁の破壊を続けていた。


────────────────────


「メイの姐さん!東門の魔物の半数が南門に向かってます!」

「奴等、南門から中に入るつもりだ!不味いですよ!?」


城壁の上から周囲の状況を確認していた冒険者がメイに報告する。

報告がなくともその状況はメイも把握していた。何しろ今闘っている北門の魔物達の一部も東の方へ移動しているのが見えたからだ。しかしメイはここから動けない。

メイが守るべきは北門から程近い『ヴィルトカッツェ』だからだ。


『南門はアキラと冒険者達に任せて、私は此処を死守する!』


二回目の増援も残すところあと僅かとなった所で、冒険者がそれに気付く。


「ああ!姐さん!また空から新手が来やがった!?」

「マジか!?前より多いぞ!?守り切れるのか!?」


虚空の黒い穴から更に増援が襲来した。今回の魔物は皆身体が黒い者ばかりだった。

見るからに今までの奴らとは雰囲気が異なっている、強化された奴等か?


『南を心配するどころでは無くなったか、コイツ等を殲滅・・・出来るのか?』


邪神が封印されない限り際限なく増援が来ると言うのか?王都の戦いは今どうなっているのだ?いつまで戦い続ければ良いのか?・・・考えても仕方ないか!


メイは新たに出現した魔物の増援目掛けて、駆けだした。



────────────────────


「おい!コイツ等おかしいぞ!?行政区には見向きもしてないぞ!?」

「何処に行こうってんだ!?コイツ等に何の目的があるってんだ!?」


南門のアキラの手を潜り抜けた数匹のオークは、住民の多くが避難する行政区の建物の前を素通りして、大通りをそのまま掛けて行く。それどころか後ろから冒険者達が斬り付けても全く動じず、冒険者の存在など気にもせず一匹、また一匹と倒されてその数を減らしていった。それでも南門からはまばらに魔物が街中に散って行く。


大通りから一本外れた路地を移動する数匹のオークが見えた。冒険者達はオークを追い掛けつつ疑問に思う。『一体オーク達はどこに向かっているのか?』と。


「こいつら行動もおかしいぞ?何かに操られてるんじゃないか?」

「俺達を一切無視して目的地に行くように命令されてるのか?」

「何処に向かってんだ?向こうにゃ場末の酒場とかしかないが?」


場末の酒場・・・?まさか・・・『ヴィルトカッツェ』か!?


「おい!不味いぞ!コイツ等『ヴィルトカッツェ』に向かう気だ!」

「王都で戦ってるマサキさんの弱点を突いてきやがったのか!?」

「邪神の奴等!戦いに集中させないためにこんな手を打ってきやがった!?」


『メイの姐さんと、行政区の護衛の連中に報せろ!早く!』

冒険者達は手分けして各方面へ報告に向かった。



────────────────────


『コイツ等!跡から後から湧いてくる!?』


北門ではメイが大量の魔物の処理に追われていた。満月下の人狼は無限と言える程に活力が湧き出でて来る。幾ら相手が居ようとも常に全力を出しきって戦える。

しかし、目の前の魔物達は幾ら斃してもその数が減らないどころか、更にその数を増してきている。しかも今やその大半がメイを避け、城壁を登る事を目標としていた。


『もっと速く!もっと正確に!もっと力を込めて!もっと!・・・もっとだ!』


メイはこの戦いの最中で以前のメイとは比べ物にならない位の成長を遂げていた。


今までは力任せにぶん殴れば勝手に相手が倒れていたが、今現在戦っている魔物はそれらよりはるかに強く、多い。最速で行動し、正確に弱点を突き、勢いを生かして流れるような攻撃をしなければ一向にその数が減って行かない。


メイが戦いに集中する間に、いつの間にか城壁の淵に手を掛けたゴブリンが居た。


『しまった、いつの間に!?』


城壁の上に立ったゴブリン目掛けて跳躍しようとしたメイの目に、城壁から突き落とされるゴブリンの姿が映った。ゴブリンを落とした冒険者がメイに手を振る。


「よくやった!その調子で昇る奴を突き落とせ!」

メイの叫びに被せる様に冒険者が叫ぶ。


「姐さん!一大事だ!コイツら、『ヴィルトカッツェ』に向かってやがる!』

「!!?なんだと!?」


我先にと城壁へ向かう魔物の群れの中で、メイは一瞬頭の中が真っ白になった。



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