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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
人狼「メイ」

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増援


魔物の群れの中に躍り出たメイは、ゴブリンやオークと言った亜人間は無視し、魔法攻撃をする魔導士や明らかに知的なヒューマンを狙って跳躍する。

魔物を指揮する者を潰してしまえば、残りは烏合の衆で後はどうとでもなる。


メイに狙われていると知った魔導士達は、オークやゴブリンなどは端から使い捨てと割り切っている為、自身の身を守るためにメイの傍らに魔物が居ようが構わず、範囲魔法を放ち、何とかメイの足止めを狙う。


それをメイは軽々と躱し、範囲魔法に晒された哀れな魔物はその場で大地に伏す。

例えメイに魔法が命中したとしても、彼女はすぐさま回復し何事もなかったように目標を確実に屠って行く。オークの振るう巨大な斧はメイに掠りもせずに周囲の魔物を薙ぎ払い、同士討ちの結果魔物の集団はすでに半減していた。


────────────────────


城砦に囲われたイグニスの街は東西南北に城門を構え、守備隊は城門を中心に配置されている。北門はメイと100人程度の冒険者が守り、南門はメイと同じく人狼の「アキラ」が同数の冒険者達と受け持ち、東門には冒険者と守備兵が1000人近く配置されていた。それに対し西門には100人に満たない冒険者が警備している程度だ。


これは西門の方向に広がる牧草地帯のすぐ先に、ドラゴンの縄張りたる山があり、縄張り内は完全にドラゴンの支配下にあり、邪神の支配が及ばないからだ。

さらには縄張りの周辺で無益な戦闘行為を行うと、ドラゴンの怒りに触れて両陣営供に壊滅の危機に見舞われる。それは邪神側としても望む所ではない。



『南門のアキラも同じ位は倒しているのだろうな。』


順調に魔物を片付けるメイは、南門を引き受けた同じく人狼の「アキラ」の戦果を気にした。元々二人は黒竜こと「サンダードラゴン」を神と仰ぐ縄張り内の住人で領内の食物連鎖の頂点たる「グレートウルフ」の統率者でもあった。


少し前に厄災に見舞われたイグニスの街を救うべく、ドラゴンの縄張りに侵入したビーストマスター「マサキ」と、彼と行動を共にする「九尾の狐」の姿をした「神」の存在とその力を二人の人狼は知る事となった。


それ以降、彼ら眷属の最高神である「九尾の狐」の為に粉骨砕身すべく同行する事となり、世界各地を転戦してきたのである。邪神との最終決戦を控え、その最高神たる「九尾の狐」から『イグニスを護れ。』と命を受けた二人は、彼らの命に代えてもこの街を守り抜くと神へ誓ったのだ。


『悔しいがアキラは私より強い、南門の守備に不安は無いだろう。』


今まで何度もアキラに挑み、その度に敗れてきた。自らの戦闘経験値を上げようにも、世界の頂点に近い人狼の相手が務まる者など存在せず、鍛えるにも限界がある。

目の前のゴブリン、オーク程度なら一対一で負ける事はあり得ず、相手の攻撃を避ける事もせず絶対的な力でねじ伏せるのみだった。


城壁の上からメイの戦いっぷりを見ていた冒険者達はその圧倒的な実力差に言葉を失っていた。1000体は居たはずの魔物達がそのほとんどが大地にその骸を晒していたのである。残るは100体ほどだがそれも間もなく片付くだろう。


「・・・すげぇな、あんなに力の差があるなんて思いもしなかったぜ。」

「マサキさんの連れてる白い犬も化け物の様に強いが、姉さんもとんでもねえや。」

「こりゃ南門の方も問題なさそうだな。後は王都の邪神が片付けば。。。、」


イグニスの街の冒険者達に安堵の声が上がっていく。この街は救国の英雄が特別に庇護する女性たちの集団「ヴィルトカッツェ」がある。身寄りのない女性たちが自分達で助け合い共生する為に立ち上げた主に派遣業を生業とする集団だったが、街の危機の際にマサキと共に行動し街を救った事で街の中での居場所を確立していた。


「ヴィルトカッツェ」は北門から近い場所にあり、その用心棒を務めるメイが北門を護るのは至極当然だった。その上で最高神である九尾の狐から「街を護れ」と言われては、此処を死地と決めて魔物に街の敷地を踏ませない覚悟で臨んでいる。


『・・・これで守り抜けたのか?邪神は今頃どうなっているのか・・・』


残り僅かとなった魔物を片付けながらメイが考えていた矢先、突然空気が変質したような感覚に囚われた。先ほどよりも夜の闇が深くなったように感じた夜空に、突然周囲より更に暗い、暗黒の穴が出現した。


「なんだありゃ!?空に穴が開いた!?」

「なんであんな所にあんなモノが!?」

「おい!見ろ!何か落ちて来るぞ!?」


城壁の上で空の異変に気付いた冒険者達が叫ぶ、何かが降りて来る、と。


その天空の穴からは、先程まで侵攻してきていた魔物の群れに倍する物量の魔物達が舞い降り、大地で集団を形成して行く。魔導士の数も以前の比ではない、明らかにメイを警戒し魔法の射程距離ギリギリまで離れた場所へ陣地を構築して行った。


『コイツ等、さっきの戦闘を学習しているのか!?』


先程の戦闘では魔導士達は魔物の数を頼んで彼らを肉盾代わりにしていたが、彼らに視界を塞がれた状態で肉盾毎一切を破壊するメイの投擲に為す統べなくやられた為、射程ギリギリの視界を確保した場所から攻撃しようとしていた。


オーク達の武器も取り回しの悪い巨大な斧を止め、振りの早い片手剣を持っていた。メイの速度に対抗するつもりか、防具も重く動きを妨げるものではなく、軽装でなんなら一糸纏わぬ者すらいた。


新手との戦いの火蓋が切って落とされると、戦法を改めたのかゴブリンたちはメイを無視して一斉に城壁へと向かっていた。メイを無視して城壁をよじ登り、一刻も早く街の中へと進入しようとするつもりか。


此処でようやく城壁の上の冒険者達の出番がやってきた。城壁に取りつこうとするゴブリンに一斉に弓を射かけ、岩を落として侵入を拒む。先程よりも緊張が高まる。


どうやら北門だけではなく、南門と東門でも黒い穴からの新たな増援が出現した様だ。北門と南門は人狼二人の配置でなんとかなる。が、東門は先発の魔物がまだ半数以上残っているうえ、増援が加わり防御が破られるのは時間の問題となった。


『増援をさっきよりも早く、確実に倒して東門に向かうしかない!』


メイは先程より厚みを増した魔物の群れに再び飛び込んだ。



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