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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
魔少年

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対峙


意識を失う直前の彩音の『汚い大人達に鉄槌を下す。』という意思に従い、数を増やし凶暴化した「管狐」達は周囲の輩達を襲い始めた。それはただ殺すのではなく、苦痛を長引かせ体力の限界までもがき苦しませてから命を奪うと言うモノだった。


意識を失った彩音の傍らで愛琉々は彩音に寄り添いその身を案じていた。彼女にとっては「管狐」達の存在は認識できず、ただ大人達が勝手に倒れて苦しんでおり、彩音は悪夢にうなされた様に倒れこんでいる状態としか見えない。


成す術もなく、男達がもがき苦しむのを見ているしかなかった愛琉々の目に、駐車場を突き抜けてこちらへ突っ込んでくる一台の乗用車の姿が飛び込んできた。


赤と黒のツートンカラーのクラウンクロスオーバーのタイヤがが芝生を抉って急停止し、中から数人が降りてきた。男が二人と女の二人、その内の女性が叫ぶ。


「おい!弟分!!」

「サイ君!?」


降りてきた弥生の目には倒れた男達の集団に交じって彩音と一人の少女が動けずにいるのが見えている。五月と政光、義経の目には彩音を中心に暴れまわる大小様々な「管狐」達の姿が映っていた。


「おいおい!なんて数の「管狐」だ!?」

「『管狐」は75匹に増えるとは言いますが、これは100匹近く居ますよ!?」

政光と義経が「管狐」の数に驚いている間に、五月は彩音目掛けて走った。


『汚い大人達に鉄槌を下す』の意思に従う「管狐」達にとっては新たなターゲットの出現に、周囲の輩を攻撃しているモノ以外の「管狐」達が五月に向けて襲い掛かる。


集団で襲い来る「管狐」目掛けて五月は右手を薙ぎ払う、が、その手は空を切る感触しかなく「管狐」には何の痛痒も与えられなかった。


『!?』

五月が一瞬戸惑った隙に「管狐」達は五月に襲い掛かり、その身体に打撃を加える。五月は「管狐」から同時に体当たり攻撃を喰らい、一度に数十発の強打を受けた感触に一瞬の判断で大きく後方に跳躍する。一気に10mの距離を跳び、更に10m程を一気に後方に逃れる。


「ヨシツネ!こっちの攻撃が当たらない!なんで!?」

五月の報告に義経が今見た状況を分析し、仮定だとしつつも五月に答える。


「おそらく目標に接触する瞬間に実体化して攻撃してるんです。普段は物体を擦り抜けるからダメージは通りませんよ!」

「ズルいなそれ!でもちょっと思いついた!」


何かを思いついたらしい五月は再び彩音に向かって跳躍する、五月に向かって襲い掛かる「管狐」の群れを躱しつつ、五月は彼らの動きを観察する。


「管狐」は大きさの違いがあり、大きさによって動きや攻撃範囲が違う様だ。ある程度の速さで突っ込んでくる奴らは、攻撃を躱されると方向転換が遅れて軌道修正に手間取る風である。遅い奴は楽に躱せる。それなら攻撃を見切る事も可能だろう。


『奴らより早く動けば何とかなる!』


五月は限界まで早く動くために「管狐」達の群れを一旦引き離し、義経と弥生の居る場所まで戻る。そこで動くのに邪魔なパーカー、ジーンズ他をいきなり脱ぎ捨てて、黒のスポーツブラ、ショーツのみの姿となり、再び「管狐」の群れへ飛び込んだ。


「五月君!僕も加勢する!半分は任せろ!」


政光も五月の負担を減らす為に五月と反対方向へ身を躍らせる。政光は五月程早くは動けないがタフさはかなりの物がある、「管狐」の半数を引き受け攪乱するが、明らかに五月より多くの攻撃を受けてしまう。いわゆる肉盾の役を引き受ける。


「痛っ!五月君、よくこんな攻撃躱せるもんだ!?いてっ!痛!」


政光が囮として飛び込んだお陰で五月の負担が減った分、五月は「管狐」の攻撃をほぼ躱していた。五月の動きに付いてこれた数少ない「管狐」の攻撃を、五月は当たる瞬間を狙って攻撃し、確実に「管狐」の数を減らし続けていた。


五月の攻撃で「管狐」の数が半減したころ、その負担が減ったからなのか彩音の意識が戻りつつあった。愛琉々にその手を握られ見守られる中、意識が回復してきた彩音はまだ完全に覚醒していないものの、自分の置かれた現状を思い出した。


『??なんで五月さんと姉さんが此処に?』

気付けば「管狐」は五月と知らないおじさんを襲っていた。


『「管狐」が五月さんを襲っている?そうじゃない、襲うべきはあいつらだ!』


彩音は「管狐」の攻撃目標を地面に転がる汚い大人達へと変更させた。五月と政光に向かおうとしていた「管狐」は全てが本来の目標に向かって攻撃を再開する。


「がっ!!」「やめ・・・!」「うがっ!」再び辺りは男達のうめき声で覆われる。

 

「彩音君!やめるんだ!君がそんな事をする必要はないんだ!」

政光が彩音に近づこうとしても、「管狐」が威嚇して大人達への攻撃を止めない。


「こいつらが好き勝手するから!皆不幸に成るんだ!大人達がコイツ等をのさばらせておくから世の中は良くならないんだ!大人がやらないなら、僕がやる!」


こいつらが女の子たちを売り飛ばそうとしているのを思い出し、怒りが沸き上がる。

汚い大人達とそれをのさばらせる大人達に対して彩音の怒りが爆発する。

「管狐」は輩達だけではなく、邪魔をする大人達へも無差別に攻撃を加えていく。


『コイツ等の所為で力の無い弱い者たちが苦しんでるんだ!この世から消えろ!』

苦痛のあまり声も出せない為、阿鼻叫喚とはならないが男達にとっては無間地獄に叩き落された様な時間が続く。・・・その時、異変に彩音が気づく。


『・・・どうしたんだ?動きが鈍くなっていく?』


彩音の意思とは裏腹に「管狐」達は徐々にその動きを止めて行っていた。ダメージを受けたのではなく、動けなくなったのでもなく、ただその場で動きを止めていた。

彩音が気付くと3匹の金色の「管狐」が、彩音の周囲を浮遊していた。



「サイ君、もうやめよ?もう少し周りの大人を信じて上げて?」

いつの間にかすぐ傍に弥生が居り、倒れた彩音を優しく抱き締めた。


「姉さん・・・。」

弥生の「管狐」が弥生の周囲をゆっくりと回っており、彩音の「管狐」はその威に押されて完全にその動きを止めていた。彩音の100匹近い「管狐」も弥生のたった3匹の「管狐」には無条件でひれ伏す程の圧倒的な力の差があった。


「でも、コイツ等女の子を金儲けの道具にしようとしてるんだ・・・。」

「うん、でもそんな事はサイ君はしなくて良いの、周りの大人に任せなさい。」


いつの間にか義経が倒れて苦しむ一味のボス、武藤の傍にしゃがみ込んでいた。


「さ、起きて。すぐに女の子を開放するように連絡しなさい。」

武藤は義経に言われるがまま起き上がり、何事もなかったかのようにスマホを取り出し、どこかへ連絡を始めた。やがて電話に出た相手に対し


「俺だ、計画は中止だ。集めた女はそのままにしておけ、また連絡する。」

そう言って通話を終わらせた直後に、そのままその場に意識を失って倒れ込んだ。


「そっちはよし、と。じゃあ早速その女の子たちを迎えに行こうか?」

政光がスマホを取り出してどこかに連絡を始めた。数回のコールで相手が出る。


「夜分遅くにすいません、至急マイクロバスを一台用意して貰えますか?」


政光が相手と話しあっという間にマイクロバスの手配を終わらせてしまった。

もう日付が変わる時刻だと言うのに、相手はすぐに電話に出て文句の一つも言わず、政光の要求をあっさり受け入れてしまっていた。一体この人は何者なんだ?


「あ、あれ?体中痛かったのに何ともない??」

愛琉々は自分の身体にあったはずの痣や打撲の跡が全く消え失せて、痛みもなくなっている事に気付いた。彩音にはその原因が見えていた。


弥生には全く見えていないようだが、弥生の「管狐」が愛琉々の身体を包み込んで彼女の怪我の治癒を行った一部始終を彩音はその目で見ていたのだった。


『こんな事も出来るのか?いや、姉さんの「管狐」は金色、特別なのか?』

弥生の金色の「管狐」は彩音の「管狐」には出来ないであろう『治癒』が可能の様だ。それどころかこの3匹の前では『管狐」達は大人しく成らざるを得ない様だ。


「おい、弟分、ケガはないか?」

気付くと五月が傍に立っていてケガの心配をしてくれていた。それは良いのだが、何故か彼女はその見事なプロポーションを僅かな面積の布で隠した姿で平然と立っており、彩音は目のやり場に非常に困った。


結局、今夜の後始末はここに居る「大人達」が全て終わらせてしまっていた。



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