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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
肥前化け猫騒動

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幸多


闇バイトに応募した少年は「長谷川 幸多コウタ」と言った。

高校生かと思っていたが、中学を卒業後に働きに出た為、高校生では無かった。


コウタから自己紹介された彩音は名乗る時に思わず「上杉 達希」の名前を告げた。

思わず口から出た、保険金詐欺事件の時に使った名前だった。自分ではそう思わなかったが、案外愛着があったのかもしれない。


彩音はコウタの話を聞こうと深夜のファミレスへ行こうとしたが、店の入り口に18歳未満は22;00以降の入店が出来ないとの表記があるのに気付き、入店を諦めて他へ行く事にした。しかし、改めて探してみると22:00以降の入店可能な店は無い。


彩音は保険金詐欺の時の検問突破に役立った「偽造運転免許証」も持っている為、年齢確認をされた場合も何の問題もない。闇バイトに提出したデータの原本もコレである。それ故、高校生が深夜の入店等にこんなに苦労する事など思いもしなかった。


「コウタ君、君、家を出た後は夜どうしてたの?」

「うん、夜はどこも入店できないから公園とかで時間を潰して、昼間に寝たりしてたんだ。」


コウタの言葉に嘘は無い様だ。

彩音は「管狐」で相手の考える事が解るが、相手の記憶全てが見える訳ではない。

いや時間を掛ければ探れない事も無いのだが、相手が生きてきた膨大な人生の記憶の中から必要な情報を探るのはとんでもなく時間がかかって仕方ないのだ。


それに比べ、相手が「今」考えている事はすぐに解る、だから彩音は知りたい事を相手に聞く。闇バイトの『信長』の居る場所を探る際も『信長』が『今、何処にいる。』と思っていなければ基本的にすぐには解らない。

だから電話で答える事は無いと知りつつ「何処にいるか」聞いたのだ。そうする事で相手は「今、自分が何処に居るか」を無意識に考え、考えた事が彩音に漏れる。

それ故、彩音は必要とする事実を相手に直接聞いて確認する。


コウタは自分と同世代の少年だが、自分と違って「管狐」はもちろん何の力も持っていない為、その行動にはどうしても制限が掛かってしまう。そのコウタが言った

『家を追い出された。』の言葉に養子に出された「お姉ちゃん」の姿が重なった。


『情けは人の為ならず。』これを『その人の為にならないから情けを掛けたら駄目』と勘違いしている人の多い言葉だが、本当の意味は『他人に掛けた情けは巡り巡って自分に帰って来る』から、積極的に力になってあげなさいと言う意味なのだ。


今どこで何をしているのか、何か困っていないのかと「お姉ちゃん」を心配する彩音にすれば、誰かお姉ちゃんの近くに居る人が助けてくれる事を願わずにはいられない。自分がそう願うのなら、このコウタの助けには近くの自分がなるべきだ。


とりあえず今晩の宿をどうにかしなければならないが、ビジネスホテルも18歳未満だと親の同意書が必要だったり親からの入金の確認が必須だったりする。以前高校生としてビジネスホテルに逗留した際は、同意書を偽造し、母親役の女性に予約の電話を入れさせた為問題は無かった。しかし、今夜の宿ではその手も使えない。


仕方ない、利用した事は無いが「カップルズホテル」所謂ラブホでも利用するか。

近くのカップルズホテルを検索するが・・・男同士の利用は不可とある!?

女同士は利用可能だというのに、何故こうも世の中は理不尽なのか?



────────────────────


結局その晩はコウタの言っていた通りに公園で一晩を過ごし、朝の5時からファミレスに入り朝食を食べて少しの間、席で仮眠した。


公園で聞いたコウタの身の上によると、彼が小学生の頃に両親が交通事故で亡くなり、子供の居なかった母親の姉夫婦に引き取られた。昨年までは普通に過ごしていたそうだが、去年叔父が亡くなった後、叔母の生活が一変したのだと言う。


それまで地味だった叔母の生活が徐々に派手になり、最近は彼氏らしき男を家に連れ込むようになり、だんだんとコウタを邪魔者扱いするようになったそうだ。

今年の3月に中学校を卒業するまでは面倒を見てくれていたものの、新しい彼氏と生活するのに邪魔になったようで、卒業と同時に働くように言われ、寮付きの工場に放り込まれたのだと言う。


『コウタの両親の生命保険金と叔父の生命保険金を手に入れた叔母が、伴侶を無くして実子の居ない寂しさから金目当てで寄ってきた男と一緒になろうとしたのか。』


そんな男は金が無くなれば何処かへ行ってしまうのに、馬鹿な女だ。

しかし、この叔母にはコウタを育てる気はもうあるまい、手にした金で悠々自適の生活をしようと言うのだろうが、そうは問屋が卸さない。


両親が交通事故で亡くなった場合の保険金の受け取りは法定相続人である実子になる。おそらくコウタ名義の預金通帳に振り込まれているのだろうが、それを本人の許可なしに引き落とす事は窃盗罪が適用される場合もある。というか、相当の金額をもう引き落としているのではないだろうか?そこを突っ込むか。


保険金の様な纏まった金額が手に入ればコウタの生活は一変する。信頼できる弁護士に財産管理を任せて、月々の生活費を受け取れるようにすれば普通に高校に通って、大学進学、就職する位までは保険金で十分過ぎるほど賄えるだろう。


弁護士にコウタが受け取るべき財産の引き渡しの交渉を依頼しよう。金ならある。

しかしこの叔母達を懲らしめる必要があるな、コウタを虐めた罪は償って貰う。




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