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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
肥前化け猫騒動

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交差点


タツキを名乗った少年ははソウマ達と別れた後、無事に検問を突破した、


そのまま少し進んだ住宅街にあった個人商店へ荷物を持ち込み本来の目的地の送り状と貼り替えて配送を依頼した。その際、軽配貨物車を偽装した小物も全て段ボールに詰め込み証拠が残らぬ様に徹底した。


そしてさらに先にあった郊外型のホームセンターへ車を停め、店内を一周して適当な上着を買い、それを着た状態で徒歩で店を後にした。その後、公共機関を利用しながら次の目的地へと向かっていく。


────────────────────


『彼』はとある地方都市のJRの駅へと降り立った。


現金強奪の事件となった県とはかなり離れた地方都市なので、足が付く心配など一切ない。宅配の送り先をこの地方都市にしていた為だが、荷物が届く日数を考慮して二日かけてこの都市まで移動してきていた。


この街にある高校の制服であるブレザーを入手して着ている『彼』は、JR駅から大通りを道なりに進んで目的地へと向かっていた。今日の午前中の指定で荷物は届いているはずだ。チェックインには少し早いし少しぶらついて行こう。


しばらく道を歩いていると前方でクラクションが鳴るのが聞こえた。

どうやら赤信号を横断しようとした歩行者がいて、青信号で進んだ車がクラクションを鳴らしたようだった。間もなく赤信号から青に変わり、問題の歩行者らしき二人連れの女性が前方から近付いて来た。


特に二人に興味はなく、普通にすれ違おうとした時、背の高い金髪の女性がいきなり三角跳びの要領でエントランスの壁を蹴って二階の廊下へ飛び上がった。

『はぁ!?』その挙動に驚いて思わず声が出そうになったが、それより早く


「ええええええ?五月さん!?ここから入るんですよね?普通!?」

と、可愛らしい感じの連れの女性の驚く声にかき消され我に返り口をつぐんだ。


「あー、其処から入るの面倒なんだよねー。」

と二階から至って平穏なセリフが聞こえてきた、『面倒ってだけでそんな事するの!?』思わず心の中で叫んだ。


「あ、そうだヤヨイ、これ使って。」

二階の金髪の女性が階下の女性に向かって何かを投げた、鍵の様だった。

『ヤヨイ』と呼ばれた女性は慌てた様子で受け取ろうとしたが、目測を誤り差し出したその手から逃れた鍵は跳ねて、背後の植栽の中へと転がった。


「あれ、今のカギ?どこに行ったの?」

鍵を見失い慌てる女性に助け舟を出すべく、転がった先の植栽の中へと手を伸ばし鍵を拾い、『ヤヨイ』さんへ鍵を差し出した。


「はい、これですよね、鍵。」

「あ、ありがとうございます。何処に落ちたか見てなかったもので・・・。」

「いえいえ、あのお姉さん凄いですねー、忍者みたい。」


二階を見上げると忍者みたいなお姉さんが笑ってこちらに手を振っていた。

この会話の途中で『彼』は小さな違和感に気付いた。この二人のお姉さんたちは『彼』に対して内心の感情を何も表していないのだった。


『あれ?そんな事あるの?』


『彼』は人の心が解る為、初対面の人にもにこやかに接して相手の感情を読み取ってから相手に対する対応を変えている。こちらに警戒心を持っている者でも、こちらが相手を利用したいときは、その警戒心を解くような無害で敵意の無い存在だとさりげなくアピールする。


普通に此方に好意を持ってくれている時はその懐に飛びこむようにして、さらに好感度を増すように行動している。だから『彼』は常ににこやかな表情を崩さない。しかし、この二人の女性からはその彼に対する感情が何も伝わってこないのだ。


少し興味の出た『彼』は会話を試みる事にした。目の前の女性は可愛らしい感じで幼く見える、高校生?大学生?まさか年下と言う事は無いだろうが・・・。


『彼』はこういう場合、相手を呼ぶときには「お姉さん」を使う。この位の年頃の女性は幼く見られる事を嫌うだろうと考えるからだ。ただ。年配の女性は『おばさん』と呼ばれるのを嫌う為、年配の女性にも『お姉さん』を使うのが常だが・・・。


「あ、あの、お姉さん。この辺に〇〇ってビジネスホテルないですか?」

「え?ビジネスホテルですか?私この辺初めてで・・・。」


問いかけられて少し慌てた『お姉さん』は困った様にそう言ったが続けて


「あ、このまま行って二つ目の信号を右に曲がるとありますよ。」

と、確信めいた道案内をしてくれた。その言葉の中にもこちらに対する妙な感情は見受けられなかった。『まぁ、僕に興味がないって事なのかな?』『彼』はとりあえず、そう言う事なのだろうと納得して『ヤヨイ』に礼を言った。


「・・・あ、そうなんですねありがとうございます、じゃあこれで。」


とりあえずこちらに『害意』がある訳ではないのだ、放っておいて良いのだろう。

まずはビジネスホテルに行って荷物が間違いなく届いて居るかの確認が先だ。

『彼』はそう判断して、ビジネスホテルの方へと向かって歩き出した。



────────────────────


『彼』は弥生に教えられた通りに道を歩き、とあるビジネスホテルへ向かう。

15:00からのチェックインに合わせ寄り道をしながらだったが、途中で道沿いの商店を確認しながらだった為、退屈もせずに15:00過ぎにたどり着く。


フロントのスタッフへにこやかに『予約していた信楽しんぎょうです、』と名を告げ、示された宿泊カードに必要事項を記入する。彼が氏名欄に記入したそれは、


信楽しんぎょう 彩音さいおん


それが「上杉 達希」を名乗っていた彼の本名だった。



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