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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
肥前化け猫騒動

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検問と別れ


タツキ達を乗せた軽配貨物車は繁華街を抜け郊外へと向かった。


向かう先はこの車のナンバープレートに表記してある地名の地域方面だ。

逃走する際も不自然に見えぬ様、地域に溶け込むようにわざわざこの地域の車とナンバーを入手したのだ。もちろん車種もごくありふれた物を選んでいる。


「このまま検問に出くわさなきゃいいがな・・・。」

コウキがソウマにそう言った、やはりまだ少し不安がぬぐい切れないようだ。


「いえ、逆ですコウキさん。検問を抜けた方が安全です。」

「は?そうなのか?」

「ええ、検問を突破しさえすれば監視の目が緩みますから、その直後に荷物を送る手配をします。あとは適当な商業施設に入って車を乗り捨てます。」


検問で止められて積み荷を調べられても、不自然に思われぬ様に送り状にはこの辺りの住所を筆跡を変えて記入してあると言う。さらに札束の入った段ボールには「書籍」と、脱いだ作業着と小物の入った段ボールには「古着」と記入し、持っただけでは怪しまれない様にしているそうだ。


そこまで徹底してるのなら危険は少ないのか・・・。ソウマはそう思った。

しかし、コイツは今までどんな生き方をしてきて、こんな注意深く対策が立てられる様になったのだろう。相当な修羅場を潜り抜けて来たのではないだろうか?


ほんの一月ほどの関係だったが凄く濃い時間だった様に思う。しかし、それも間の無く終わるのだ、コイツの本名も知らないまま・・・。ソウマがそう考えていた時、タツキが道端にある自販機の前に車を寄せ、停車した。


「ん?なんだ?喉が乾いたのか?」

「そう言えば俺も気が張ってて気づかなかったけど喉乾いたな。」

「・・・前方で検問してるみたいです。休憩する体で様子を見ます。」


タツキにそう言われ、ソウマとコウキは進行方向を見た。郊外の道の両脇に建物が少なくなった500m程先で車の列が並び赤色灯が点滅しているのに気付く。


タツキはスマホを取り出し、アプリから缶コーヒーを購入する。

「ソウマさん、コウキさん何を飲みますか?」

『あー悪いな、』と言いつつソウマは缶コーヒー、コウキは炭酸飲料を選ぶ。

3人は飲料の封を開け、一口、二口と喉を潤す。


『流石に軽配貨物に3人乗ってるのはおかしいですから、ここでお別れですね。』

タツキが二人にそう告げた。タツキは先程彼が言っていたようにあえて検問を潜り抜けるべく、この道を進んでゆくのだ。ソウマとコウキはここから見送るしかない。


「本当に大丈夫だよな?タツキ?」

「お前があれだけ準備したんだ、間違いないとは思うが・・・。」

「大丈夫ですよ、今までも何度もこんな事やってきたんですから。慣れてます。」


『慣れてるのかよ!?』ソウマはそう口に出して突っ込みそうになったがやめた。

コイツは俺達よりも年下なのにこんな事に慣れているとか言う。一体どんな生い立ちならこんな事に慣れてるなんて言えるのか?


「あ、後で自宅の住所をメールしておいてください。お礼を送らなきゃ。」

タツキはそう言った後に補足した。

「書籍の名目で送りますから怪しまれないでしょうが、当分は手を付けない方が良いですよ?もしかしたらお札の番号を控えられてる可能性もあります、使う時も地元で使わずに離れた土地で少しずつ使った方が良いかもしれません」


タツキは別れ際まで細心の注意を払って、札から足が付かない様にとアドバイスまでしていた。ソウマ達もそこまでは気付けなかった。


「ああ、解った。極力目立たない様にするさ。」

3人はそう言葉を交わした後、残った飲料を一気に飲み干した。


「じゃあ、僕行きますね、短い間でしたが楽しかったです。」

「ああ、俺もお前といた時は退屈せずに済んで楽しかったよ。」

「落ち着いたらまた連絡くれよな?」

コウキの言葉にタツキが返す。


「いえ、これ以上関わると良くないですから僕の連絡先も消しといて下さい。」

「・・・そうか、じゃ本当にこれで最後だな、気をつけてな。」

「はい、ではこれで失礼します。」


タツキはそう言うと空き缶をゴミ箱に捨て、後ろを振り返らずに車に乗り込み、そのまま検問に並ぶ車の列目掛けて軽配貨物車をゆっくりと進ませた。

ソウマとコウキはやはり結果が気になる様で、検問の方へと歩いて行く。。


やがて軽配貨物車の順番が来たらしく、赤いテールランプが光って消えたかと思えば数秒程して再びテールランプが点灯し、消えた後に軽配貨物車はそのまま進んで行った。ほとんど検査らしい検査はされかった様だ。


「なんだよ、あれだけ準備したのに調べられる事もなくスルーされたのかよ。」

「まぁ、あれだけ準備したからこそ、普通の宅配業者だと思ってくれたんだろう。」


無事にあっさりと検問を抜けた軽配貨物車を確認した後、ソウマとコウキは帰宅するべくタクシーを呼ぼうとした。しかし、学生風の自分達が現場近くからタクシーに乗るのも却って目立つかも知れないと思い直した。


『アイツが此処まで準備して成功させたんだ、俺達が怪しまれる行動をしてアイツの足を引っ張る訳にはいかない。』

二人はマップアプリを開き、近くにあるバス停からバスに乗って移動する事にした。


────────────────────


その日の夕刻には先に地元に戻っていたユウセイとイツキと合流し、いつものファミレスで計画の成功と、タツキがもう戻ってこない事の説明をした。


「・・・そうだったのか、アイツが居ないんじゃ明日から寂しくなるな。」

「連作先を消したら本名を知らないアイツとは完全に切れてしまうな。」

「アイツは『奴等』と俺達の接点を消そうとしてるんだ、仕方ない。」

「今後、奴の事を聞かれたら、親の都合で引っ越したって口裏合わせとこう。」

ソウマがそう言うと、ユウセイとイツキも同意して言う。


「さっきもここの店員さんに『あの子は?』って聞かれたんだ、今日は別行動してるって答えといたから、今度から聞かれたらそう言うよ。」


それを聞いたソウマは、アイツ結構顔が広いしなんだかんだ皆から好かれてたから色んなところで聞かれるんだろうな、と思う。皆寂しく思うだろうし悲しむだろう。


でもアイツはそんな周囲との良好な関係を全てリセットしてまで、「探し人」を見つける事を最優先しているのだ。『探し人の名前を聞いておけば万一ソイツに出会った時、連絡する事も出来たのか?』とも考えたが、即否定した。


興信所で見つからない者が俺達の行動範囲程度で見つかる訳もないだろう。下手に動いてアイツの足を引っ張る事になったらアイツに申し訳ない。アイツは全てを捨ててでも「探し人」を選んでいるのだ。

ソウマには「探し人」が見つかるように祈る事しか出来なかった。



そしてその数日後、ソウマとコウキの元へ「書籍」が宅配便で送られて来た。




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