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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
肥前化け猫騒動

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決行


某日午後1:00過ぎ、タツキとソウマ、コウキの3人は大手地方銀行の駐車場へと集合していた。3人共に作業着を着て駐車場の整備をしている風を装っている。


タツキは目的の乗用車の後ろのバンパーに垂らした紐の先に、空き缶を結び付ける作業を終わらせた。後は間もなく大金の入ったカバンを持って出て来るであろう目標を待つだけだ。待つ時間は何故か永く感じられる。


その待つ間にソウマは昨日からの準備を思い出し、何か見落としやミスが無いか再確認していた。待つ間に心の中で沸き上がろうとする不安を宥める為にも、『問題ない。』と自分に言い聞かせる為にも、それは必要な事だった。


────────────────────


昨夜、夜9時頃。ソウマ達4人は〇市、□町にある数少ない商業施設の一つである郊外型のカラオケボックスへタクシーで移動した。もちろんカラオケを楽しむためではない。自分達の住む町から□町へ移動する事さえ、不自然に思われぬ様にする為だ。


カラオケボックスの前で降りた4人は、店舗前で他の誰と待ち合わせをしている風を装い、しばらく雑談しながら過ごした後掛かってきた電話に出て


『おい、いま何処にいるんだよ!?皆カラオケの前で待ってるんだぞ!?」

少し離れた店舗入り口の店員に聞こえるかどうかは解らないが、あえてそう言う。

もしここで屯しているのを店員が見ていたとしても、一連の行動で待ち合わせだと思うだろう。それに電話が掛かって来てからどこかに移動するのを見ていたとしても、予定がキャンセルにでもなったのだろうと思わせる為だ。


『なんだ?来れなくなった?解った、今からそっちに行くから待ってろ。』

そう言って電話を切ってから4人で少し話してから移動すると言う念の入れようだ。


兎に角誰かに見られても怪しまれない様に服装も地味目の物を着用している。

4人がヤンチャな服装で歩いていれば、地元の不良から絡まれたり、補導されたりしかねないからだ。そして、軽く会話を交わしながら歩いて行く途中で、一人、また一人と離れていき、各々が目的の場所へと密かに移動して行った。


────────────────────


ソウマは目的の場所へと辿り着いた。そこは住宅街の中にある空き地を利用した月極駐車場だった、その片隅に目的の『軽バン』が停まっていた。


銀色のシンプルな古い商用車で荷室には何も物が載っていない。配送業者が良く使っている様なごくごく普通の軽バンだ。実車を前にソウマは少し迷った。


『これを移動すると、一応窃盗になってしまうんだよな・・・。』

商業施設に不法駐車されていた車の移動と同様の事をするだけだ、だが持ち主の意思に反して移動する事で正式には『窃盗』になってしまう。

現在時刻は夜の10時を回っている、周囲を見渡し人影が無い事は確認済みだ。


道路から人目につかないところで周囲の様子を伺っているが、先程から駐車場に面した道路を走る車もない。駐車場もほぼ埋まっており、これから車が戻ってきて鉢合わせする可能性も低いだろう。少し躊躇してしまったソウマのスマホが振動した。


『ナンバープレート確保できた、待ち合わせ場所に向かう。』

ユウセイからのメールだった。車を確保するソウマとコウキは、それぞれユウセイとイツキを迎えに行き繁華街の指定駐車場へ車を移動しなければならないのだ。


『もう動き出したんだ、止まる訳には行かない。』

ユウセイからのメールに背中を押され、ソウマは軽バンに乗り込み鍵を確保しエンジンを掛けてゆっくりと車を進ませた。誰にも咎められずに道路へと出た軽バンはそのまま夜の住宅地を後にした。


────────────────────


4人がそれぞれ危なげなく役割をこなし、目的の地方銀行の近くにあるネットカフェに集結したのは夜の11時を回った頃だった。ソウマは指定された近くの自走式立体駐車場の指定された階に軽バンを停め、コウキの指定場所は郊外の大型商業施設だった為、夜間は入る事が出来ず商業施設が営業を開始してから車を移動する事となる。


カバン強奪に参加しないユウセイとイツキは決行前までに別の任務があった。

午前中にタツキに指定された物を買い集め、軽バンに積み込むと言う役目だ。

これもタツキから指定された店で購入しなければならない。足が付かない為に絶対必要な事なのだ、タツキはここまで徹底していた。


こうして全ての準備が終わり、当日の午後を迎えたのだ。


────────────────────


『大丈夫だ、あれだけ入念に準備をしたんだ。間違いなく成功する。』

ソウマが全員が無事に役目を終えてこの時間を迎えた事に、この計画の成功を確信していたその時、タツキから小声で声が掛かった。


「其のままで聞いてください、目標が銀行から出てきました。」

ソウマとコウキはロック式のコインパーキングの機械を点検する振りをしたまま、目標の方は振り向かずに作業をする振りをしていた。目標は中型のスーツケースを2個押して来て、駐車場入り口にある精算機で料金を支払った。


そしてレンタカーらしきコンパクトカーに向かって歩くと、車のトランクを開け中へスーツケースを2個とも乗せ、運転席へと乗り込んだ。ソウマ達はまだ動かない。

下降したロック版の上をゆっくりとコンパクトカーが進んだ所で、車に引きずられた空き缶が地面を転がる音が鳴り響いた。


運転席のドアが開き目標が何事かと確認しに車の後部へと周り、空き缶が紐で車に引きずられているのを確認すると、目標は小さく舌打ちしてその場にしゃがんで紐の結び目を解いて空き缶を駐車場わきへと放り投げた。


「今です!」

タツキの合図でソウマとコウキも男へと走り、しゃがんだままの男の背中にモデルガンを突きつけ『動くな!』と脅す。言われるまま動きを止めた男に対し、


「両手を後ろに回せ!」

タツキに言われた通りに男が両手を後ろに回した所でソウマがその手に手錠を掛ける。タツキは男の頭に麻袋を被せて軽く紐で縛って袋が外れない様にし、コウキが奪ったコンパクトカーに2人とも乗り込み、そのまま駐車場から車を出庫させた。


この間わずが10秒程、目撃者に見られる事を前提に準備をしていたが、目撃者は居なかったようで全く騒ぎにもならず、走る車を咎める者もおらず、車は悠々と強奪現場を後にした。後は郊外の大型商業施設の駐車場へと向かえば終了となる。


大型商業施設へは5分程で着いてしまう距離でしかない、あとは警察に見咎められる様な行動を慎んで、周囲の車の流れに沿った運転を心がけて慌てずに進めば良い。

もうほとんど成功したも同じだ、気が緩みそうになるがそんな時こそ気を引き締めなければ、ソウマがそう考えていた時、タツキが話しかけてきた。


「実は僕、以前からある人を探しているんです。」

「・・・探し人?一体誰を探してるんだ?」

いきなり思いもしなかった告白をされ戸惑ったが、ソウマがタツキに問うた。


「身内なんですが、一度もあった事は無くて名前と年齢しか解らないんです。」

「名前と年齢しか解らないなんて、どうやって探すつもりなんだ?」

「興信所ってその道のプロに依頼してるんですが、費用が馬鹿にならないんです。」


『興信所』・・・探偵などと言われる『身辺調査』や『人探し』などを生業にしている業者であるが、人件費だけで一日数万円程かかり、相応の費用が必要となる。


「そうか、この100万円があればそれの足しになるって事か・・・。」

ソウマは言う、タツキが様々な金儲けに精を出しているのはそれが原因か、と。


「ええ、でも100万円なんて一月分位にしかならないんですよ。」

『もっともっとお金が必要なんです。』そう言ったタツキは、ソウマ達がが予想すらしなかったとんでもない事を付け加えた。


「・・・だから、僕はこのお金を持ち逃げします。」


と。

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