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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
肥前化け猫騒動

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用意周到


保険金詐欺の舞台はタツキ達の居る市から20km程離れたターミナル駅のある繁華街となる。そこの大手地方銀行前が決行場所となるのだ。


実行までには1週間ある。それまでにリスクを限界まで軽減する為の用意をする事となる。主な事前準備は『放置車両からのナンバープレートの入手』、『逃走用の軽自動車の確保』であり、当日に行われるのは『大金の入ったカバンを積んだ乗用車の強奪』だ。4人の役割分担を相談する。


「まず、『現金を積んだ車の強奪』ですが、これは多くても僕を含めて3人までとします。それ以上は却って時間のロスに繋がり兼ねません。」


確かにタツキの言う通りだろう。役割としてはモデルガンで脅す役、手錠を掛ける役、その間に車を確保する役、の3人が必要になる。2人でも出来ない事は無いが目撃者が居た場合、『何故反撃しなかったのか?』と不審に思われない様、襲撃された側が反撃を躊躇うような人数を考えれば2人よりは3人の方が良いだろう。


そして「ナンバープレート」と「逃走車両」の確保だが、放置気味の軽自動車を失敬してくるのと、完全に放置された車両のナンバープレートを失敬するのとではリスクが当然違う。それなのに報酬が同じでは不公平感が当然出てしまう。


「なので、4人で報酬400万円の所を『軽自動車を確保』する人は150万、『ナンバープレートを確保』する人は50万円としたいと考えます、どうですか?」

タツキの提案に4人は尤もだと頷いた。リスクの違いに報酬の差があって当然だ。


「そして150万円の報酬には『カバン強奪』の役割も含むとします、いかが?」

成程、『ナンバープレート』の確保というリスクの少ない仕事は50万円。『軽自動車の確保』と『カバン強奪』の2件で150万円の報酬か、妥当なところだろう。


「そしてその役割ですが・・・。」

タツキがそう言って4人の顔を見回す。4人も各々お互い視線を交わして頷く。


「俺とコウキで『カバン強奪』『軽自動車確保』だろうな。」

ソウマがそう口を開いた。他の3人もそれに同調し同意する意思を示して頷く。


体格の良い2人が『強奪役』に回る、それが自然な流れだろう。タツキ、ユウセイ、イツキの背の高くない3人組が襲撃するには不自然だし、傍から見たらどう見ても高校生か中学生にしか見えない。そこから足が付くかもしれないのだ。


「じゃあ決定ですね。決行の日までにマップのストリートビューで経路を確認して頭の中に入れておいてください。そしてこれがそれぞれ目標の置かれた場所の地図と写真です。」

タツキはそう言うと『ナンバープレート』を失敬する放置車両の場所のマップ、失敬する『軽自動車』の置かれた場所のマップと、その車両の特徴、車内の何処に鍵が置かれているかのメモを渡した。


ソウマが担当する『軽自動車』はいわゆる『軽バン』と呼ばれる軽貨物車だった。

そのサンバイザーの裏に鍵が置いてあるとメモに書いてあった。


『こんな事まで調べてあるのか?一体どうやって・・・?』


この軽バンの置かれている場所は隣町で、ここから10㎞は離れている。一体何時、どうやってこの軽バンが普段施錠しないで、おまけに車内に鍵を置いてある等と調べたのだろう?ソウマの抱く疑問は当然と言えた。


あの時もそうだった、本屋で万引きした女子高生たちが化粧品を隠し持って居る事を見抜いたのも一体どうやったのだろう。何か理由があるのか、それとも鋭い洞察力の賜物なのか?それは解らない。しかしソウマはタツキのこの情報取集の真相はどうあれ、そのタツキの呼びかけだからこそ今回の行動が成功するだろうと確信していたのだった。そうでなければこんな危ない橋など渡ったりしない。


「ねぇ、タツキ君、疑問に思ったんだけど、用意するのは何で軽自動車なんだい?」

普通車でも良いんじゃないかと思ったんだけど?とイツキが疑問を口にした。


「ああ、軽自動車のナンバープレートはドライバー一本で簡単に外せるんですよ、取り付けもそうですし、普通車だと後ろのプレートが封印されてて簡単に外せないし、簡単に取り付け出来ないんです。」


万一検問に引っ掛かった場合、ナンバープレートに異常があるとそれだけで失敗するかもしれませんからね、と言う。タツキは検問にかかる可能性まで考慮に入れていたのだ。ソウマはそれを聞いてこの件は必ず成功するのだと確信を深めた。


コウキが皆の手にしたマップを見て気付いたように言う。


「このナンバープレートも車も隣の〇市の□町で全部揃うんだな。俺、□町って行った事ないから経路はしっかり調べとかないといけないな。」

「僕もないなぁ。□町って商業施設とか無いから足を踏み入れたことないや」


二人の言葉に、タツキが〇市の□町でブツを集めるその理由を説明する。


「目標はどれも人目に付きにくい場所にあるんで、犯人は土地勘のある人間だと思わせる為です。僕らの所にはまず捜査の手は届きませんよ。」

「なるほど、ますますリスクが低くなるって訳か。」


ユウセイが感心したように言う。タツキが手の内を説明する度、彼らの中ではこの計画には幾重にも安全装置が掛けられているように思えて来ていた。タツキの指示通りに従っていれば間違いないのだ、と。



そして遂に、決行前夜を迎えた。



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