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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
肥前化け猫騒動

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『割の良いバイト』


カラオケボックスでの実践でコツが解ったソウマ達は、次の段階としてタツキと2人のペアを組み、二人で万引き犯と相対するやり方を実践練習した。

説明する役と、動画撮影する役に分かれる事で一番効率が良いらしい。


そしてタツキとペアに慣れた後には、ソウマとユウセイ、コウキとイツキのペアに分かれて対応する事になった。もともとタツキは一人で行動していたので何も問題はない、その結果、現在は3組で万引き撲滅活動を行っていた。


────────────────────


「俺のところ昨日メールが2件届いたぞ、計1万円!」

「なんだ、やっと届いたのか?俺は既に3件来たぞ。」

「えー?そうなのか。俺の所にはまだ来てないぞ?」

「まだ月末まで10日位あるしな、寄付金工面するのに手間取ってんだろ?」


活動を始めてから10日も経つ頃には電子マネーが続々と送られて来ていた。送り主を確認するとやはりと言うか、私立の高校生の方が早く送って来ている様だ。おそらく齧り甲斐のある脛を持つ親が多いのだろう。


5000円をすぐに用意できるのなら最初から万引きなどしなければ良いのだが、やはり犯罪だと言う意識が乏しいのだろう。

『結果的には大損していると言うのにな。』ソウマはつい先日まで同じような立場だった事も忘れて、ノーリスクの立場に立った事に安心してそう思っていた。


『自分達は正しい事をやっているのだ』と思い込み、やがてその感覚が少しずつ麻痺して行っているのに全く気付く事は無かった。


────────────────────


そんなある日、コウキが体調を崩して寝込みイツキがフリーとなる事態が起こった。

『今日は活動出来ないな、ファミレスでソウマ達の終わりを待つかな。』

そうイツキが考えていた時に、タツキから連絡が届いた。


『もし暇なら割のいいバイトしませんか?荷物の配達です。』


荷物の配達か、大手通販でもスキマ時間で配達をしないか?と勧誘してるCMも見た事有るな。そんな仕事なのかな?ただ『割のいいバイト』と言うからには、それなりの金額にはなるのだろう、と考えたイツキは其のバイトを受ける事にした。


タツキに連絡をすると商店街の入り口で待ち合わせる事となり、出会った早々にタツキからコインロッカーのカギを渡された。


「駅のロッカーから荷物を取り出して指定された場所に届ければ良いそうです。」

「ロッカーに入る位の荷物って小さいな、中身はなんだろう?」

「それは詮索しない方が良いんじゃないですか?単に届ければいいだけです。」

それもそうかとイツキは思い、鍵を手にして駅へと向かった。


イツキが駅について目的の番号のロッカーを探すと一番小さなロッカーだった。

番号を確認して鍵を差し込み、扉を開けると中にはメール便の様な包みがあった。

包みを取り出すと小さなメモが貼ってあり『ネットカフェ〇〇の〇番ブースへ18:00~19:00」とあった。


この時間帯にこの指定のネットカフェへ届ければ良いのだろう。時間まで2時間ほどある事だし同じ市内のネットカフェだ。慌てる必要もなくイツキは駅を後にした。


────────────────────


18:10頃、イツキは指定のネットカフェに着き、指定のブースへと辿り着いた。

簡易的な扉がある為、中は見えないが人の気配はしていた。どうしようかと一瞬躊躇したが相手がこの時間に届けるように指定したのだと気付き戸を軽くノックする。


すると待つ間もなく扉の上から招くように手が現れた。イツキはその手に荷物を渡すと、荷物が引っ込んだ直後に再び現れたその手には封筒が摘ままれていた。

『これがバイト代なのか?』そう思い封筒を受け取ると、手は軽く振られ取引終了の意思を表した、ように見えた。イツキはそのままネットカフェを後にする。


『本当に簡単なバイトだったな。』イツキはソウマ達と待ち合わせのファミレスへ先に着き、ドリンクバーのジュースを飲みつつ席で封筒の中身を確認した。一瞬、口に含んだジュースを吹き出しそうになったがなんとか耐えた。


『・・・3万円!?たったあれだけの仕事で?割が良いにも程があるだろ!?』


意外な大金に一体あの中身は何なのだろうか、とか、もしかして犯罪の片棒を担いだのではなかろうかと一瞬焦った・・・が、何か問題が有るのだろうか?と考える。


中身が何であれ、自分は何も知らずに言われた通りに荷物を届けただけだ。普通の配送業者と何が違うと言うのか?もし職務質問でも受ける事になっても自分は本当に何も知らないのだ。警察もそれ以上どうする事も出来まい。


『本当に割のいいバイトだったな、またやりたいな。』

イツキがそう考えている所にソウマ達が合流してきた。イツキは今回の『割の良いバイト』の件を仲間たちに共有したくてたまらず、小声で顛末を話して聞かせた。


「そんな良いバイトがあったのかよ?良かったなお前。」

「まぁでも単発だ、こっちの活動は継続的に収入になる。あくまで臨時収入だな。」


最近金回りの良くなった彼らにとって、3万円は以前程の大金とは思えなくなってしまっていた。最初、タツキに連れられてファミレスに入った直後などは、代金が払えるのだろうかと心配して頭の中で財布の中身を確認していたと言うのに・・・。


「しかし、タツキってどこからそんなバイトの情報とか仕入れてるんだろうな?」

「そうなんだよな、商店街に偉く広く顔が効いたりしてるしその関係かな?」


そんな事を話している内に当の本人のタツキがファミレスへ入ってきた。レジの女性店員から小さく手を振られている、やはりコイツは顔が広いし相手の懐に飛び込むのが上手い奴だと感心した。席に着いたタツキにユウセイが話しかける。


「なぁタツキ君、俺達にも割の良いバイト紹介してよ?」

「ああ、あれですね。あまり数は多くないんですが色々な内容の依頼がありますからね。その時には声を掛けますよ。」

「助かるよタツキ君!」

ユウセイは嬉しそうに目を輝かせる。そんなユウセイにタツキは言う。


「でも、金額が大きく成る分多少のリスクは増えますからね?こっちの活動の方は地味ですけどノーリスクなんであくまで臨時ですよ?」

「今回位の仕事ならリスクの内に入らないって、割の良い奴また頼むよ?」


イツキも嬉しそうにタツキに依頼した、ソウマにはその瞬間にタツキがにやりと笑った様に見えた。・・・しかし、考えて見ればいつもコイツは笑っているよな?


『少し邪悪な笑いに見えたのは気の所為だろう。』ソウマは多少引っ掛かりながらもそう考える事で自分を納得させた。




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