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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
肥前化け猫騒動

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『10年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金』


ファミレスに入る際にソウマは財布の中身を頭の中で確認した。


『500円玉と100円が何枚かあったな、ドリンクバー位なら大丈夫か。』

他の3人も同じような事を考えていたようで、ユウセイに至ってはポケットの中の財布を握って中身を確認していた。4人はタツキに勧められるままファミリー向けの広いテーブルに着いた。


「お腹減ってないですか?なんでも注文してください、支払いは持ちますから。」

タツキの気前の良い申し出に4人はお互い顔を見合わせつつも躊躇した。

タツキは端末を操作しながらメニューを選び、端末をコウキに手渡した。それぞれが思い思いに料理を注文して行く。


「えらく気前が良いんだな?良い所のお坊ちゃんなのか?」

「そんな訳ないですよ?ノーリスクの稼ぐ方法があるって言ったでしょ?」


ここでも『ノーリスク』の単語が出た。タツキが言う『万引き』という呼び方が軽微な犯罪にも当たらない『悪戯』の様に思われがちだが、実際は窃盗罪となり、「10年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金」に処せられる、のだと。


「『現行犯』で捕まらなくても、防犯カメラの映像で確認できれば『通常逮捕』出来るんです。あの書店みたいに全ての通路が確認できるカメラが設置してあれば、後日被害届を出されたらそれで捕まりますよ?」


タツキの説明に一同は驚愕する。カバンに商品を入れて表に出たところで声を掛けられなければ成功だと思っていたが、そうではなかったとの事実に冷や汗が出た。


「・・・なあ、それってマジなのか?」

「本当ですよ?制服姿がカメラに映ってれば学校が特定されてすぐ捕まります。」


警察だって被害届が出されたら無視できない、動くしかないんです。そうタツキに言われ思い当たる節が幾つもある事に気付かされた。今まで学校帰りに色んな店で万引きをした経験がある、今、この瞬間だって被害届が出されないとも限らないのだ。


4人は今まで微塵も感じていなかった不安に襲われ、やがてテーブルに運ばれて来た料理を目の前にしてもほとんど食欲が湧かなかった。タツキだけはごく普通に料理を口にする。箸の進まない彼らを見てタツキが言う。


「こう言った説明を受けると物凄く不安になるでしょう?この不安を利用して稼ごうというのが今から説明するノーリスクな『ビジネス』なんです。」


にこやかに言うタツキに飲まれるようにしてソウマ達はタツキの言う『ビジネス』の内容を聞く事にした。


────────────────────


「簡単に言えば、万引きする奴を見つけて諭して更生させるんです。」

「諭して更生?それがどうして金になるんだ?」


タツキが言うにはこうだ。店内で万引きをしそうな奴を見つけて追跡、店外に出たところで確保。ただし店や警察に突き出す訳ではない、万引きは窃盗罪であり『 10年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金』の犯罪である。そう諭して反省させ『万引き』を撲滅する、のが活動目的となる。


ただその諭す際にこの活動に賛同してもらい『支援』してくれるように説得するのだ。具体的には月に5000円の『寄付』を募る「クラウドファンディング」の体裁を取るのだと言う。


「それって、つまり『万引き』の口止め料って事か?」

警察に捕まって家族に知られた上、50万以下の罰金を払うよりは月5000円を何十回かに分けて払う方がマシだと、相手に思わせると言う事か。ソウマの質問にタツキは笑って答える。


「嫌だなぁ、そんな事口が裂けても言いませんよ?あくまで寄付ですよ?」


「万引き撲滅」の活動を支援してくれていると言う事は、これ以上ない反省の意を示してる訳です。僕たちがそんなに反省してる人を警察に突き出したりする事は絶対ないと断言できますよね?つまりはそう言う事です。


『月5000円払い続けている限りは黙っていてやる、と言う事か。』

ソウマはタツキの考えを理解した、確かに自分達は危ない橋を渡らずに済む。


「でも、それっていつまで払わせるつもりなんだい?無期限だといずれ罰金額を超えてしまう事だって考えられるよね?」

ユウセイが当然の疑問を口にする、期限を切った方が良いのは間違いない。


「もちろんです。ターゲットは高校生、期限は卒業までの間としています。」

高校生なら月に5000円位バイトするなり親から小遣いを貰うなりすれば払えない額ではない。これが月に1万円だと破綻する可能性が高くなるだろう。


「で、支払い方法は電子マネー、メールのやり取りで行います。」


今時メールのやり取りかよ?と思ったが、捨てメアドを使えば匿名性は確かに高い。

キャッシュレス決済を利用すると電話番号やIDで足が付く可能性が高いし、口座振り込みは名前がバレる。電子マネーならメアドで電子マネーの番号のやり取りだけで済む。続いてコウキが疑問を口にする。


「それで、なんで俺達に声を掛けたんだ?こういう儲け話を他人に教えるメリットってなにかあるのか?」

「嫌だなぁ、僕の身体一つしかないんです、一人だと限界があるんですよ?」

タツキは笑いながら言う、『すでにキャパ超えてるんです。』と。


「今、別の本屋でこの活動してるんですけど、お店の人に評判が良くて他の店でもやってくれないかって相談されてるんです。」

「はぁ!?これって店公認なのか!?」

コウキが驚いて思わず声が大きくなる。幸い周囲には客がおらず会話の内容が漏れる事は無かった。


「ええ、これの良い所は店の協力が得られる事なんです。店にしても経費を掛けなくても万引きが減るし、店内の見回りなんて雑事から解放されるしメリットしかないんです。」

タツキは現状を説明する。万引きを未然に防ぐ事で店側から信頼されており、何なら報酬を払うから継続的にやってくれという提案すら受けているという。


「店から依頼されてるってのは凄いな、違法性は全く無いって訳だ。」

「ええ、そうなんですが、報酬の件は辞退してます。あくまで自主的にするって事にしとかないと後々面倒な事に巻き込まれかねませんからね。」

いつの間にかタツキ以外の4人も料理を頬張っていた、先ほどまでの不安は霧散してしまった様だ。


「これ、電子マネーが添付された受信メールの一覧です。」

タツキはスマホを取り出し皆から見易いように画面を向け、受信メールの一覧をスクロールさせた。ざっと見ても30件以上はある様だ。


「一件5000円ってことは、15万以上にはなるってのか!?」

「メールが送られて来るのは月末に多いから、あと20件以上は残ってますよ?」

ソウマ達は絶句してスマホの画面を見ていた。これが全部不労所得でおまけに一度きりではなく毎月の収入となっているのだ。


「どうです?やってみたくなったでしょう?」

タツキの問いかけにソウマが他の3人の顔を見る前にコウキは即答した。


「やるに決まってるだろう、なぁ皆!」

コウキの言葉にそれぞれタイミングが違いつつも同意の意思を示す。


「じゃあ、決定ですね。皆さん明日までに捨てメアド用意しておいて下さい。まずは連絡先を交換しましょう。」


4人はタツキと連絡先を交換し、明日から「万引き撲滅」に参加する事となった。





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