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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
肥前化け猫騒動

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少年A


特定非営利活動法人 天狗アマツキツネに就職が決まった「信楽しんぎょう 弥生やよい」は、早速同僚の「アカツキ 五月メイ」に連れられてこれから同居する事になるマンションへと向かっていた。


今日から五月とルームシェアをするマンションは職場の在る雑居ビルから出た時点ですぐに視界に入る程の近距離にあった。


『徒歩2分ですよ。』

義経の言葉を思い出したが本当に2分で着きそうだ、ただ途中に信号のある交差点があって、信号に掛ると3~4分掛るかも知れないがそれでも近い。これだけ近いと油断しすぎて逆に遅刻しそうだと一瞬考えたが、フレックスタイムなのだと気付いて安心した。


すぐに交差点に付く、赤信号だったのでその手前で止まる、五月は赤信号に構わずそのまま横断歩道を渡ろうとした為、慌てて後ろから引っ張って止めた。


「ちょ!?五月さん!?」

「んー?なーにー?」

面倒くさそうに五月が振り向く、その前を車がクラクションを鳴らしながら通り過ぎて行く。一歩間違えば今の車に撥ねられていたかも知れない。


『彼女、日本の一般常識が無いのでよろしくお願いします。』

義経の言葉を思いだしたが、まさかこれ程だったとは。でも日本以外だって信号位あるよね?それとも信号すらない国からやってきたって事?


「五月さん!赤信号で渡っちゃ駄目ですよ!?」

「あーそうだっけ、面倒だねー?」

程なく青信号に変わった横断歩道を周囲を確認しながら渡る、車が来ないかの確認も勿論だが、さっきのやり取りを見られてないかの確認でもある。幸い周囲に人が少なかったのと、一瞬だったので気付いてる風の人は居なかったようだ。


すぐに目的のマンションに着いた。築年数は割と新し目の小奇麗なマンションで広めのエントランスの入り口に立って五月に聞く。


「綺麗なマンションですね、何階なんですか?」

「ん?2階、ここ。」

五月はそう言うやいきなりエントランスの壁面に向かって跳び、三角跳びの要領で2階の廊下に飛び移った。弥生が声を掛ける暇すらないほんの一瞬の出来事。


「ええええええ?五月さん!?ここから入るんですよね?普通!?」

「あー、其処から入るの面倒なんだよねー。」

確かにエントランスで入り口のカギを開けて、エレベーターを待って2階に上がるよりは、今みたいに最短距離で行けば一瞬だけど、普通の人には無理ですよね!?


今度ばかりは数人の通行人に見られていたらしく、呆然として2階の五月の姿を見上げているブレザー姿の男子高校生とスーツ姿のサラリーマンらしき目撃者が居た。


「あ、そうだヤヨイ、これ使って。」

五月はそう言うと呆然と佇んでいた弥生に向かって何かを投げた。小さな金属片が陽の光を反射して目測を誤り、受け取るつもりが掌で跳ねた。金属片が道路に落ち、更に跳ねて植え込みの中に入った。その行方に弥生は気付かず


「あれ、今のカギ?どこに行ったの?」

周囲を見回すが視界に入らず焦る、そこへ今までの一部始終を見ていたと思われる男子高校生がしゃがみ込んで植え込みに手を突っ込み、鍵を拾い上げた。


「はい、これですよね、鍵。」

「あ、ありがとうございます。何処に落ちたか見てなかったもので・・・。」

「いえいえ、あのお姉さん凄いですねー、忍者みたい。」

男子高校生は五月を見上げ、五月は五月で鍵を拾ってくれた男子高校生に手を振っていた。とりあえずこれで部屋には行けると弥生が思った時


「あ、あの、お姉さん。この辺に〇〇ってビジネスホテルないですか?」

「え?ビジネスホテルですか?私この辺初めてで・・・。」

この辺の地理には詳しくないのだが、何故かこんな時は良く勘が働いてくれる。

このまま真っすぐ行って二つ目の信号を右に曲がった所にある気がする。


「あ、このまま行って二つ目の信号を右に曲がるとありますよ。」

「・・・あ、そうなんですねありがとうございます、じゃあこれで。」


男子高校生は礼を言ってそのまま歩いて行ってしまった。『この辺は初めて』と言っておきながら見えない場所にある事を断言してしまったが、不審に思われていないだろうか?弥生は少し気になったが男子高校生は気にもしていなかったように思う。


『まあ、大丈夫よね。それにしても今の男の子・・・。』

今更になって気付いたが、彼もアマツキツネの人達と同じように考えている事が解らなかった様に思う。今まで考えてる事の多寡はあれども何も伝わってこない人はほとんど居なかった。それがこの町に来てこんなに出会うなんて・・・。


『この町にはそんな人たちが多いのかな・・・?』

漠然と男子高校生の後姿を見送りながらそんな事を管変えていると


「ヤヨイー、上がっておいでー。」

階上の五月から声が掛かった。弥生は気を取り直しエントランスに入ると鍵を使って玄関の扉を解錠し、エレベーターに乗り込んだ。




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