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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那


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3/7

絶対正義


暗闇に沈んだヤスの意識を現実に引き上げたのは頭部に加わる衝撃だった。


「痛っ!?」

霞む視界と共に腹と足の激痛と頭部の痛みが再びヤスを襲う。


「大丈夫ですか!?アニキ!殴っちゃ駄目ですよ姐さん!」

ヒロの無駄にデカい声が頭と傷に響く、うるせぇ黙れと言い掛けた口元に何かが押し当てられた。気付くと金髪の美女が手に持つ瓶の液体を飲ませようとしていた。


「目が覚めたらさっさと飲め。」

金髪美女は睨むでもなく蔑むでもない表情でヤスに命令し、ヤスは間近で見る女神の美貌に衝撃を受けつつ言われたままに液体を一気に飲み込んだ。


「!?」

液体が胃の腑に納まった瞬間、身体全体が熱くなり傷口に痛みが走ったが、それは一瞬で過ぎ身体を蝕んでいた痛みという痛みが全て霧散した。得体の知れない液体のその効能に驚くも、間近で効果を確かめる五月に心の動揺を見せない様に努める。


「す、済まねぇ姐さん。」

無様な姿を晒した事を後悔しつつ助けられた事に礼を言い立ち上がろうとしたが、足に力が入らず再び膝を付いた。痛みは消えたが失った血液はどうにもならないか。


「アニキ!立てますか?肩を貸します!」

「いいからそこをどけ。」


五月に言われヒロがヤスから離れると、五月はヤスのスーツの首元を片手で引っ掴み、母猫が子猫の首元を加えて運ぶようにそのまま玄関へと向かっていった。


『か、格好悪ぃ・・・。』

借りてきた子猫の様な醜態を晒しながらも、ヤスは自分の身長178㎝体重78㎏の決して軽いとは言えないその身体を手荷物の様に軽々と扱う五月に困惑する。

玄関先のランドクルーザーを停めていた場所に停まった、ヒロの中古のセダンの助手席にヤスはそのまま押し込められた。


ヒロが運転席に座り五月が後部座席に乗り込むと、ヤスはスマホを取り出し風香の現在位置をGPSで確認する。隣街へ向かう山越えの峠道の途中の廃倉庫らしき場所を指し示す。案外近い、普通なら車で10分もかからない場所だ。

しかし時間が悪い、夕方のラッシュに巻き込まれどれ程時間がかかるのか。


「ヒロ!お嬢の一大事だ信号も制限速度も無視だ!」

「はい!アニキ!」


ヒロは白のフーガを急発進させバイパスに合流すると、強引な車線変更と信号無視を繰り返し、鳴らされるクラクションと罵声の中、峠へと急いだ。



────────────────────


かなりの無謀運転を繰り返した為通報でもされたのか、当然の様に赤色灯を点灯させたパトカーが後方から猛追してきた。


『そこの白のセダン路肩によって停まりなさい!・・・停まれ!』

パトカーの姿を見ても停まるどころか、更に加速して逃げようとするフーガを悪質と見た警官のスピーカーでの呼びかけも高圧的になる。


「アニキ!前は車詰まってて逃げられません!どうします!?」

「停まる訳にはいかねぇ!このまま無視しろ!」


ヤスに指示されるままパトカーから逃げようとするも、やがて渋滞と中央分離帯に阻まれ進むに進めなくなったフーガの横にパトカーが並ぶ。パトカーの助手席のウィンドウが開いて警官が顔を出すと同時に、フーガの後部座席のウィンドウも開く。


「おい!幾つ違反してると思ってるんだ!覚悟しと・・・暁さん!?」

警官は後部座席の五月に気付くと五月の苗字の「暁」でその名を呼んだ。


「その名前で呼ばないで。ちょっと緊急事態発生。」

「はい!五月さん!事件ですか!?どちらへ?先導いたします!」

「おい、場所。」

「え?あ、はい!この先の峠まで行きたいです!」

動揺しつつヒロが答えると、パトカーは赤色灯を点灯しサイレンを響かせ警官がスピーカーで周囲の自動車に呼びかけた。


「緊急車両通行します、道を開けて下さい!緊急車両通行します!」

パトカーの呼びかけに周囲の自動車が動き出し。二車線の左側の車が左に寄り、右車線の車が右へと寄り白線上が緊急車両の為に開かれた。


「凄げぇや!アニキ!警察が俺らを先導してますよ!?」

「ああ、ありがてぇ、これで最速で辿り着けるな。」


先行するパトカーを追い掛けるフーガの車内でヤスは五月が警官にも顔パスな事実に驚いていた。五月が一言も発していないのに、暴走する車に五月が乗っていたと認識した段階で事件解決に向けて彼女が行動していると信じて疑っていないのだ。


『・・・一体、どうすればこんな信頼関係が築けるんだ・・・?』



────────────────────


車の通りもまばらになった郊外の峠の入り口付近で、五月はパトカーに手を振り『ここまでで良い』の意思を示した。その合図にパトカーはサイレンを止め、赤色灯も停止させフーガに道を譲り路肩へと寄る。


峠に向かうフーガを見送るパトカーの車内では運転していた警官が助手席の警官へと疑問を口にしていた。


「先輩、あの五月って女性、一体何者なんですか?」

「ああ、お前は知らなかったんだな。彼女は一年ちょっと前に出来たNPO法人の職員でな。地域の安全活動を目的に色んな事をやってるんだが・・・。」


警察が動くまでも無い事件や、警察が動けない事例に至るまで、依頼があれば解決に動く集団なんだが、何処の誰が設立した組織なのかが解らない、と言う。

一応書類上の理事や幹事、社員は居るが、彼らを集め「絶対正義」の行動原理で実力行使を任せている権力者が背後にいると噂になっているらしい。


「あと、これも覚えておけ。警察と奴らが敵対した時は向こうに理があるってな。」

「向こうに理ですか・・・・?」


滅多な事ではそうは成らんだろうが、そうなったら警察組織の上の方の何人かの首が飛ぶらしいぞ、と先輩警官がフーガの消えた峠を見ながら呟いた。



────────────────────


左手に崖を、右手に山肌を見る峠道を進んでゆくと途中で山側が開け、今は全く稼働していない廃倉庫の建屋が現れた。倉庫前には車が20台ほど停められる、白線の消えかかった駐車スペースとトラックが往来できる広めのスペースが確保してある。


人気のない駐車スペースにフーガを停め、五月が1人後部座席から降りた。


「あんたらはここで待っといで。」

「姐さん、一人で大丈夫ですか?」

ヤスは言ってから自分とヒロが足手まといにしかならない事実に思い付いた。


「邪魔、二人を救出したらお前は病院に行け。」

「・・・はい、此処でお待ちしています。」


廃倉庫の建屋近くに輩の好みそうな外見の車が10台ほどあった。放置車両と言う訳でもなく未だ新しい車なので、中に居る者たちの所有物なのだろう。中には最低10人は居る事になるが、五月は一向に気にも留めず倉庫に向かった。

シャッターの半分ほど開いた明かりの無い倉庫スペースの暗がりに、ヤスの乗っていたランドクルーザーが止まっていたが、その事は五月は知らず興味もなく無視して倉庫の観音開きの大きな扉へと歩を進める。


そこまで近づくと中から人の話し声が聞こえたが、何人で話しているのかまでは解らない。そして五月が扉の取っ手に手をかけた瞬間、中で少女の叫ぶ悲鳴が聞こえた。




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