美緒の行方・2
色々と考えを巡らせていた義経だったが、何かを思いついたらしくテーブルの上に置かれていた美緒のスマホに手を伸ばした。
「すみませんが、もう一度スマホを拝見させて頂きますね。」
「・・・・」
「はい、どうぞ。」
押し黙る隆興に代わって夫人が了承する、義経は再びメッセージアプリの内容を確認していく。多くの友人との何気ないやり取りが綴られているだけで特に変わった内容は無さそうだ。義経は一通り調べた後にスマホをテーブルに返した。
「奥様、警察に交友関係のリストを提出されたと思いますが、同じものを頂けますか?それか特に仲の良かった友達のモノだけでも構いませんが。」
夫人が了承して一旦部屋を出て行った後、隆興は義経に言った。
「あんた、交友関係は既に警察が調べて特に問題ないと言ってたんだぞ?一般人のあんたにそれ以上の事が出来るとは思えんのだがな?」
「でしょうね、でも令状とって家宅捜索してるわけではありませんから、娘さんの行方を知らないかとか、心当たりを聞きこんだ程度でしょう?まだやり様はあります。」
そうこうする内に夫人が20人程度の名前と住所が表記してあるリストを用意した。
あくまで夫人が把握している友人のみで、実際には学年の違う友人も多いのだろう。
その内の4人に赤丸が付いている、特に親しい友人の印と言う。
「その特に親しい友人の家は念の為に警官が数日張り込んで、不審人物の出入りが無い事は確認されているそうだ。あんたにそれ以上の何が出来る?」
「出来る事は全てやっておきたいのです。それともう一つ宜しいでしょうか?」
「・・・これ以上何を・・・?」
隆興は呆れたように義経に言うが、娘の行方を調べる為だ嫌とは言えない。
「例の梯子を使って娘さんの部屋に出入りできるか確かめたいんです。」
義経の返答に隆興は戸惑った。それは警察が既に調べて確定しているはずだが。
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夕方、陽が落ちかけた頃、山鼡邸の庭で義経と隆興が2階を見上げていた。
「所長、どうですか?出入りできそうですか?」
義経は美緒の部屋の真下から、外壁に掛けた梯子に昇り部屋に入れるか確認中の政光に声を掛けた。部屋の中には夫人が居り、階下の義経の傍らには隆興がいる。
「うーん、そうだなぁ僕は問題ないけど女の子には少し怖いんじゃないかなぁ?」
政光は窓から部屋に入るのと出る事を何度か繰り返して、そう結論付けた。
「なんであんたが直接確認せんで所長さんに昇らせてるんだ?体格は所長さんよりまだあんたの方が近いだろうに?」
隆興が問いかけると『私、高い所苦手なんですよ。』と義経が応える。
「梯子を掛けたのは事実ですが、実際娘さんが梯子を使ったのかの確認です。」
「どういう事だ?用意した梯子から降りていないと言うのか?」
「失踪当日、玄関からこっそり出る事も可能だったんじゃないかと思いついたんです。当日梯子を壁に立てかけたりすると音で家人に気付かれるのではないかと。」
警察の見立てでは夕方帰宅した時に梯子を準備して、夜に窓から梯子で下りて梯子を片付けて証拠を残さない様に家出をした、と考えているようだ。
しかしそれでは梯子を動かす際に多少なりとも音が出てしまう。家人に気付かれてしまう可能性を考えたら、梯子は前日にでも一度立てかけてわざと跡をつけ、夜中にこっそり家を出る方が簡単ではないかと義経は考えたのである。
何しろこれだけ無駄に大きな家で家族3人だけで暮らしているのだ。
日中にはハウスキーパーが来て家事をしていくようだが夕方には帰ると言う。
夜に気付かれずに玄関から出る事も可能だろう。当日は娘が失踪するなど誰も考えておらず、監視の目はなかったと言える。
「梯子を使わずこっそり玄関から出たとして、この事で何が解るんだ?」
「まぁ、入念に偽装工作をしていますから事件性はほぼ無くなりますね。」
義経の言葉に隆興は安堵の表情で胸を撫でおろす、そして気づく。
「うん?それなら『猫の幽霊』はどう関係してくるんだ?」
「それはこれから調査します、娘さんの自作自演で済めばいいのですが奥様まで夢で猫のお告げを聞いたとなれば、ちょっと面倒な事になりそうですからね。」
『面倒ってどういう事だ?』隆興の疑問に『それを明日調べるんですよ。』と返す。
義経はそう言うと梯子を下りた政光と一緒に、梯子を片付けてみた。
この梯子は2連式になっており、ロープ操作で長さを調整するタイプだ。伸び縮みの際にカチャカチャと音が鳴るし、結構重さもあって女子高生が立てかける際にはそれなりの音がしそうだ。
それに暗くなると上り下りは格段に難しくなるだろう。やはり梯子は失踪当日には使っていないのかもしれない、梯子は偽装工作の可能性が限りなく高くなった。
「もう暗くなります、友人宅に伺うには遅い時間です。改めて明日、友人宅を調べますので、今日の所は私たちはこれで一旦失礼いたします。」
政光はそう言うと山鼡夫妻に今夜泊まる温泉宿を教え、なにかあれば遠慮なく携帯に連絡するように言い残し、義経と共に山鼡邸を辞去した。




