表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
九十九神(ツクモガミ)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/17

九十九神(ツクモガミ)


弥生は黒いハイエースを追ってインターチェンジへと進入する。


ハイエースはETC搭載らしく、ETCレーンを素通りし流入ランプを加速していく。

弥生はゲートで通行券を取る手間の分、追いかけるのが少し遅れて流入ランプへ入りRのきついカーブを本線へと加速する。


平日の夜8時と言う事もあり交通量は少ないが、ちらほらと走行車線を制限速度前後で走行する車を抜き、黒いハイエースは追い越し車線を120km/hを超えて爆走する。

弥生はエンジン回転数を6000以上にキープしてギヤを繋いでハイエースを追う。


フロントガラスが極端に傾斜し空気抵抗が少なく、重量が700kgに満たない軽量な車体を100psを超える出力を叩きだすエンジンがぐんぐんと加速させる。


一方ハイエースの大柄な箱型の車体は横風に弱く、今夜の横風の吹く高速道路の状況では120km/hでも運転手の技量の限界を迎えていた。走行車線に他の車の姿が無くなった時点でハイエースは走行車線に移動し110km/hに速度を落とした。


「五月さん!居ました黒い車!」

「ヤヨイ!横につけろ!」


目標のハイエースを発見した青い軽自動車は更に加速した。


────────────────────


『おい!アマガエル!あいつに体当たりして止められるか!?』

《無茶言わんでくれ姐さん!流石にこっちが弾かれちまうわ!》


五月は心の中で青い軽自動車、「アマガエル」に黒い車を制圧出来るかを問い、「アマガエル」はその無謀な提案を断固拒否した。なんとこの「アマガエル」には自我が存在していた。いわゆる「九十九神」と呼ばれる存在である。


道具は長い年月を経ると精霊を得て「九十九神」に変化することが出来るという。「つくも」とは、「百年に一年たらぬ」ことから「九十九」(つくも)のことであるとされるが、必ずしも99年必要と言う訳ではなく、あくまで長い月日を現す意味で「九十九」が当てられている。


愛着を持って使用される事で物に魂が宿る事があるとされるが、この軽自動車も

最初のオーナーに大切にされる事で魂は宿っていた。不具合箇所を修理し、改造を重ね30年経る間に神格が上がり自我も得て、神性が増し自我もはっきりとした「あやかし」へと変容していた。


本来、弥生の様な免許を取って1年にも満たない女の子がこのようなチューンアップした車などまともに運転する事など出来ないが、「アマガエル」自身が走行状況に応じた操作のタイミングを「管狐」を通じて主に伝える事でその性能を遺憾なく発揮させていた。


「アマガエル」も自分の機関に不調があるとそれを即座に察してくれる弥生は、自らのポテンシャルを完全に引き出してくれる唯一無二の存在であるため、彼女を乗せて走る事を無上の喜びとしていた。


────────────────────


「おい!なんか小型車が横付けしてきたぞ!?」

「並走してるだと!?ガキ攫ったのがバレたのか!?」


ハイエースの男達は走行車線を並走する小型自動車の存在に困惑していた。

資産家の家の子供を誘拐して、地元警察の管轄外から遠く離れる事で捜査を錯乱するつもりが、誘拐直後にバレるとは計画が大幅に狂ってしまった。


「逃げられるか?」

「これ以上速度出すとヤバイ、空荷で横風の影響がもろに出ちまってる!」

運転手の男は横風にハンドルを取られない様に細心の注意を払っており、これ以上速度を出すのは危険と判断した様だ。そこで助手席の男が気づいた。


「おい!その車乗ってるの女二人だぞ!なんとかなるんじゃねーか!?」

「ああ!?マジか?よし!ちょっと幅寄せしてビビらせてやるか!?」


黒いハイエースは横風を恐れながらも「アマガエル」に幅寄せをして来た。


「きゃ!?寄せてきた!?危ない!」

弥生はハイエースが120km/h近い速度で幅寄せしてきた事に驚愕したが、いつもの様に無意識に手足が動いた。「管狐」が「アマガエル」の意図を感知し、弥生に伝えて弥生は適切なタイミングでブレーキとステアリング操作を行う。


一瞬ブレーキを踏むことでハイエースの幅寄せを躱すと、即座にシフトとステアリングを操作してハイエースの後方から左側へと車体を移動させた。ハイエースの男達からしたら一瞬で位置関係が入れ替わった様に感じ、混乱した様だ。


「あ!車が消えた!?」

「いや!いつの間にか左に居やがる!?一体どうなってんだ!?」

慌てる男達を尻目に「アマガエル」がハイエースを揶揄する。


《は!全く図体ばかりデカくて役立たずのノロマめが!》


「アマガエル」は高速域でも機敏に動ける自らの運動性能を誇る。そしてその性能を遺憾なく発揮させてくれる主を誇らしく思い、運転技術も未熟なうえに犯罪に手を染めるような輩に操られるハイエースを嘲笑った。


その「アマガエル」へ、ハイエースの怒気が含まれた意思が伝わった。


《・・・調子に掘るなよ、このガラクタ爺ぃが!》

《・・・ほう、一人前な口を利くか、この小童めが。》


黒いハイエースにも九十九神が宿っていたようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ