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特定非営利活動法人 アマツキツネ 「ルナティックハウンド」  作者: 涼城 鈴那
信楽 弥生

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妖狐消滅


刀があっさりと首筋に斬りこんだ激痛に妖狐は混乱した。


『手練れの男の刃すら弾き返したこの身体を、何故斬れる!?』

更にその刀が自分の妖力を吸収している事に気付いた妖狐は恐怖する。


『力が吸われる!?なんだこの刀は!?不味い!力が入らぬ!』

刃がこれ以上喰い込まぬ様に必死の抵抗を試み、吸われる妖力も何とか頭だけは守ろうと残る力を頭へと集中する。その結果尻尾や後ろ足から徐々に硬直が始まる。


『不味い!石化する!?』


妖狐が恐怖した瞬間、首の刃に掛かる圧力が消えた。身体の上に乗った五月が意識を取り戻し、混乱する記憶に困惑し刀から手を放してしまっていたからだった。


────────────────────


「五月さん!妖狐を追い詰めてるのか!?」

神社の境内内で彩音は殺生石周辺の状況を状況を探っており、五月が妖狐に斬りかかった事を知った。しかし五月も負傷しており未だ決着には至っていない。周囲には死兵も未だ残っている。


「私!行かなきゃ!五月さんがケガしてる!」

突然弥生が叫び殺生石広場の方へ駆けだした。彩音は慌てて止めようとしたが、空外少年が眠っているので追いかける事も放っておく事も出来ない。


「姉さん!まだ妖狐が生きてる!危険だ!」

「私が行かなきゃいけないの!何故かわかんないけど絶対そうなの!」

妖狐を倒す為にも弥生の「オサキ」が五月の治療を主張しており、今すぐにでも現場に飛んで行きたいようだが、弥生を置いて「オサキ」だけが向かうのも危険な為、弥生を同行さようとしている様だ。「オサキ」が憑いていれば安心か?


「彩音君!そら君をお願い!」

弥生はそう言い残し、殺生石そばの五月の元へと掛けて行った。その周囲には3匹の「オサキ」が彼女を護るために陣形を組んでいた。


────────────────────


妖狐の上に馬乗りになったまま、メイは困惑して取っ散らかった思考をなんとかまとめ様と藻掻いていた。

『ドラゴンに転生しようとして・・・』

『鎧姿のおっさんたちが何か言ってて・・・』

『あれ?狐?・・・暁様!?・・・じゃないな、何だコイツ?』

混乱する頭の中にはっきりとした何者かの意志が伝わって来た。


『ここまではお膳立てしてやった、あとはお前の意志で妖狐を討て!』


メイは目の前の刀から伝わるのに気付くと、五月としての記憶を取り戻した。


『そうだ、妖狐を討たなければ!』


しかし電撃に撃たれ体に力が入らない、「この刀を手にしなければ、」そう思うのだが体は言う事を聞いてはくれない。周囲には未だ死兵が残っており、五月の邪魔をしようと迫って来るのを義経がなんとか防いでいる状況だった。最悪だ。


『弥生さん!?何故こんな所に!?下がって!』

義経の声が聞こえたかと思うと、五月の周囲に弥生の「オサキ」が纏わりつくのを感じた。「オサキ」は五月の身体に癒しを与え、五月の身体の自由が僅かに戻る。


突然乱入した弥生を護る為、義経は弥生に向かう死兵の方へ行き、残された死兵は一斉に五月の元へ群がった。未だ自由にならぬ両手をなんとか動かし刀に添える。

死兵に群がられながらも体重をかけて、刃を妖狐の首へと押し込んで、圧し切った。


『くはぁ!・・・・・・・・・・』


妖狐の首はあっさりと切断され、その刃は首の下の岩すらも両断していた。

その直後、死兵たちは力なくその場に崩れ落ち、辺りには静寂が戻った。


────────────────────


切断された妖狐の首はだらしなく開いた口から弛緩した舌をはみ出させ、完全に生気を失い、切断された身体の方は末端の方から徐々に崩壊が始まっていた。


身体の自由を取り戻しつつある五月は身体を起こし、未だ倒れたままの政光の元へ向かう。一匹の「オサキ」が政光を労わり、その身体に治療を施す。弥生が政光にペットボトルの水を差し出し、義経も五月にペットボトルを手渡す。


「マサミツ、大丈夫か?」

「・・・ああ、なんとかね。しかし凄い切れ味だな、その刀。」


政光の無事を確認した五月は岩すら断ち切った刀「炎帝朱雀」の刃を改めて見た。


岩すら切断したのに刃毀れも一切見当たらない様だ。流石は対邪神戦用に造られた最強の神剣と言われるだけの事はある。そんなものを自分が妖狐程度に使ってしまった事に若干の後ろめたさを感じた五月だったが、取敢えず今は感謝するほかは無い。


『紅月さま、マサキ様、有難うございました。』

そう心の中で感謝を伝え、刀を鞘へと戻そうとしたが、何故か収まろうとしない。


『あれ?反対だったか?』五月は鞘を確認するが間違ってはいない、どうして?


「五月さん!首が!妖狐の首が!」

弥生の叫びに驚いて妖狐の首の方を見ると、そこには首は無く、代わりによろめきながら立ち上がる全裸の少女、華陽の姿があった。


────────────────────


「・・・妖力を完全に吸われる前に切断されて逆に助かったわ・・・。」


「炎帝朱雀」に触れた場所から妖力を吸われ続けて、そのままでは完全に妖力を失って絶命する直前に頸を断たれ、刃が離れた事で頭部に妖力が残る結果となった。

その妖力を使う事で、何とか華陽の身体を再生する事が出来た様だ。


「炎帝朱雀」が鞘に戻らない理由がこれだったか、と五月は華陽に向かい刀を手に駆け寄るが、華陽は更に小さな狐の姿に変化して岩場の陰から蔭へと走り去りその姿を晦ましてしまった。


────────────────────


華陽は狐の姿で温泉神社へ向かった。目的地は境内内にある『九尾稲荷神社』。

失った妖力を回復する為にも。当分は完全に狐として正体を隠して神社内で過ごし、参拝する者達から集まる僅かな力を蓄え続ける事で復活する事を目論んだ。


『活動できるまで数年は掛かろうが、封印から逃れられたのだ良しとしよう。』


ここで力を蓄えた後に各地を巡り、力あるものを喰らって取り込む事を続ければいずれは完全に復活する事も叶おう、それまでの辛抱だ。なに、岩の中で900年過ごした事を思えば大したことではない。華陽はそう考え木々の間を抜けていく。


そして「九尾稲荷神社」に向かう途中に2人の少年を見つけた。

眠った空外少年を抱えて参道を降り、殺生石の元へ向かおうとする彩音の姿を。


『まだ、終わった訳ではない。奴を利用すれば『器』をこの手に出来る。』

華陽は足を止め、彩音を見つめほくそ笑んだ。




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