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熊に殺され異世界に転移したので虫と薬草の知識で生きていきます 〜辺境村の薬師は怪異を医学で解く〜  作者: 猫山 緑
砂糖の脅威

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清潔という薬

「ぶつぶつ……アレルギーとかじゃないのか」


イツキは言う。


「いえ、それが呼吸困難や腹痛を起こしてる訳でもないですし」


ノアが言う。


「若い子ってどんくらいだ」


「10~20代の若い人ばかりですね」


「なるほどね」


イツキは少し考え込む。


「エマ、ちょっとこっちに来てくれ」


エマは、嫌そうな顔をしながらやってきた。


「もしかして、こんなやつか?」


イツキはエマの頬にある出来物をさしながら言う。


「そうです。これがもっといっぱいできてるんですよ」


「それはニキビかもしれないな」


「ニキビ?」


「思春期の子どもや若者によくできる皮膚の病気だ。甘いものや生活習慣が関係していると言われている」


「それって命に別状はないんですか?」


「それは心配しなくていい」


「イツキさんは19歳なのになんでニキビができてないんですか?」


「まぁ俺は予防してるからな」


「どうやって?」


エマは身を乗り出した。


「まず、早寝早起き。それから健康的な食事に適度な運動だな」


「無理」


「即答かよ」


ノアが呆れたように言う。


エマは聞かなかったことにするように踵を返した。


「一応、ニキビを治す薬は存在するんだけどな」


「えっ!?」


エマは勢いよく振り返った。


「今すぐ作ろう!」


食い気味に言う。


「ニキビを治す薬を作ったところで根本的解決にはならないんだ」


イツキは肩をすくめる。


「同じ生活を続ければ、またニキビはできる。予防が重要なんだ」


エマは露骨に不満そうな顔をした。


「でも、たしかにこの世界洗面用品が全くと言っていいほどないからな」


「洗面用品?例えばどんなのがあるの」


エマは興味津々に聞く。


「髪を洗うのに使ったり、顔を洗ったりするためのケア用品だよ」


「それを作ってくれるの!?」


エマは目を輝かせながら言う。


「まだ、作るとは言ってないがな」


「それをやればニキビは無くなるの?」


「完全とはいかないが今よりはマシになるだろう」


「じゃあ今すぐ作ろう」


「お前は本当にそればかりだな」


イツキは苦笑した。


だが、よく考えてみれば悪い話ではない。


洗面用品はニキビ予防だけでなく、体臭を抑えたり衛生状態の改善にも繋がる。


「……たしかに作る価値はありそうだ」


「やったー!」


エマは飛び跳ねながら喜ぶ。


イツキは紙を取り出し必要なものを書く。


3人は手分けして必要なものを集める。


今から作るのは、俗に言うシャンプーと石鹸、洗顔だ。


「結構必要なもの多いですね」


少し驚いたようにノアは言う。


「まずは、石鹸から作る」


耐熱容器に精製水を入れ、そこへ慎重に水酸化ナトリウムを加える。


発熱するので注意しながら混ぜる。


そして、これを体温ぐらいまで冷ます。


それと同時並行で前々から作っていたオリーブオイルとココナッツオイル、パームオイルを混ぜ体温ぐらいまで温める。


2つを混ぜ合わせ型に入れて乾燥させる。


「乾燥させるのは何日くらいかかるの?」


エマは聞く。


「約1ヶ月くらいだな。」


「長い!」


エマは悲鳴をあげた。


「まぁ落ち着け。一応作り置きしている石鹸があるからそれでシャンプーを作ろう」


なだめるようにイツキは言う。


シャンプーの方は簡単だ。


石鹸と精製水、植物性グリセリン、ラベンダーの精油。


精油は自分の好みに会うものでいい。


それを全て同じ容器に入れ優しく混ぜる。


「これでシャンプーは完成だな。でも、これだけだと髪がきしんでしまう」


「髪をサラサラにできるものもあるんですか?」


驚くようにノアは言う。


「もちろん」


イツキは頷く。


「リンスと言うんだ」


「それはどうやって作るの?」


「これはシャンプーと同じくらい簡単に作れる」


クエン酸と精製水、植物性グリセリンをボトルに入れて混ぜる。


そこにラベンダー精油を入れて軽く振ればリンス原液の完成だ。


使う時はお湯に割って使うと良い。


「最後に洗顔だ」


イツキはいくつかの材料を混ぜ合わせる。


顔の汚れや余分な脂を落とすための薬品だ。


ボトルの中で均一に混ぜると完成だ。


「エマこれ全部1回使ってみるか?」


「うん」


一直線に風呂に向かっていった。


……数十分後


「すごい!髪がサラサラしてる!」


エマは自分の髪を何度も触る。


「ずっと触っていたくなる……」


「それは良かったな」


「これ絶対村で流行るよ!」


イツキは苦笑した。


イツキはラベンダーの他にも、ローズやティーツリーの香りを付けた洗面用品を作った。


エマが使った感想はあっという間に村中へ広まった。


噂を聞きつけた村人たちは次々に買った。


洗面用品を使って体を清潔にするのが近いうちに当たり前になるだろう。


当たり前すぎて忘れがちだが細かな予防が大事なのである。

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