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熊に殺され異世界に転移したので虫と薬草の知識で生きていきます 〜辺境村の薬師は怪異を医学で解く〜  作者: 猫山 緑
砂糖の脅威

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18/21

歯を守る習慣

「では、これからはこれを使って歯を磨いてください」


イツキはがそごそと棚を漁る。


取り出したのは、鉛筆くらいの柳の木の枝だ。


イツキはナイフで皮をはぎ、ハンマーで叩く。


すると先端の繊維がほぐれて、ブラシ状になった。


イツキが普段から使っている簡易的な歯ブラシである。


「イツキがいつも使ってるやつだ」


エマは言う。


「なら、ハッカの匂いがするものも用意するんですか?」


ノアが言う。


「あぁもちろん用意するよ」


イツキは調剤室に入るや否や薬棚から炭酸カルシウムとグリセリン、ハッカ油、サッカリンを取り出す。


小さな容器の中でグリセリンとサッカリンを混ぜる。


そこへ炭酸カルシウムの粉末を少しずつ加え、粘り気のあるペースト状にする。


そこにハッカ油を入れて匂いをつける。


歯磨き粉の完成だ。


これをガラス瓶に詰め込み持ってきた。


「お待たせいたしました」


「こ...これは……」


ルークの母親は不思議そうに聞く。


「歯ブラシと歯磨き粉です。これを使って歯を磨くんですよ」


イツキは自分用の歯ブラシを使い実演して見せた。


「これを朝と夜の2回。甘いものを食べた後なら、なおいいです」


「これだけで虫歯は防げるんですか?」


「完全ではありませんが、今よりずっと減らせるでしょう」


ルークとルークの母親が帰った後イツキはその場をエマとノアに任せてレオンの元へと向かった。


「レオンさん歯ブラシを普及させましょう」


「は...歯ブラシとはなんだ?」


「これです」


イツキは、かばんから歯ブラシを取り出しレオンに見せつけた。


「これは何に使う道具なんだ」


「名前の通り、歯を磨く道具です」


「でも、なぜ今頃」


「最近、この村では砂糖菓子が普及しました。これのせいで虫歯という病気になる人が増えています」


「つまり、この道具は虫歯とやらを予防することができるんだな」


「はい」


「では、作らせよう。病人が増えるのは敵わんからな」


数日後、村の広場には奇妙な看板が立てられていた。


「歯磨き講習会開催中」


「なんだこれ?」


村の人たちは不思議そうに看板を見つめる。


「場所は診療所って書いてるな」


1人の村人が言う。


「おもしろそうだし行ってみねぇか」


「それはいいな」


村人たちが診療所に入ると真ん中にはイツキが立っていた。


「本日は虫歯を防ぐ方法について説明します」


村人たちは顔を見合わせる。


虫歯という言葉自体、初めて聞くものばかりだからだ。


「皆さん毎日ちゃんと歯を磨いていますか?」


村人たちは磨いていると言わんばかりに顔を縦に振る。


「布で歯を拭くのは、歯を磨く事にはなりませんよ」


村人たちは顔を見合わせる。


そんなことないと言いたげだ。


「信じて貰えないならば実践しましょう」


イツキは寒天培地を2つ取り出した。


「昨日、協力者を募って調べてみました」


「これは、ちゃんと歯を磨いている人の培地です」


少しコロニーが見えるが綺麗な培地だ。


「次に歯を磨いていない人の培地です」


培地の中にコロニーがたくさん点在していた。


村人たちは自分の口内がこんなに汚いなんて信じたくない様な顔をした。


「じゃあどうやったら綺麗になるんだ」


1人の村人が言う。


「これを使うんですよ」


イツキは歯ブラシを取り出す。


「これは、どうやって使うんだ?」


木でできた歯の模型を出し目の前で磨き方を村人に教えた。


村人たちはそれを真剣な表情で見つめていた。


イツキは、講習会に来た人全員に歯ブラシと歯磨き粉を渡した。


この日を境に、グレン村には朝晩に歯を磨く習慣が少しずつ広がっていく。


「最近、顔にぶつぶつができる子が増えてるんです」


ノアが言う。


「ぶつぶつ?」


イツキは首を傾げた。


「特に甘いものをよく食べる子たちです」


イツキは少し考え込む。


虫歯だけではなかった。


砂糖がもたらした問題は、まだ他にもあるのかもしれない

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