毒と医者の選択
「いつ頃、この不老不死の妙薬を飲みましたか?」
イツキは聞く。
「俺は、朝だったな。仕事を行く前に貰ったんでな」
ガルドは答える。
「ぼ...僕達は……お昼頃に飲んだんだ。」
リオもガルドに続いて答えた。
(もし、今さっき飲んだのであれば吐かせて活性炭投与でどうにかなったんだが...)
ここまで、時間が経つと体内に取り込まれている。
排出させるには、金属と結合させ体外に引きずり出すしかない。
いわゆるキレート剤だ。
キレート剤とは、重金属と結合し尿などで排出させる薬剤のことだ。
これを飲むとほぼ確実に治るが、作るのはかなり難しい。
でも、治すといいきったからには作らねばならない。
「少し待っておいてください。薬を調剤してきます」
イツキは奥へと向かった。
(材料はある……だが、時間が足りるか)
30分ほど経っただろうか机の上には
無色だが腐った卵のような匂いがする油のような液体。
成功か失敗か、その境界線にあるような代物だった。
これを前レオンさんに頼んで作ってもらった注射で吸い上げる。
これでキレート剤の完成だ。
(これで、間に合うはずだ……いや間に合わせるしかない)
「お待たせしました。」
「こ...これでミナは、な...治るのか」
リオは不安そうに聞く。
「えぇ治ります。」
力強く言い放つ。
本当にそうであって欲しいと、内心で思いながら
「ところで、誰から打ちますか?」
「誰も行かないなら俺から打とう」
ガルドが迷いなく腕をめくり前に出た。
「腕ではなく、おしりに打ちます」
「は……?」
「筋肉に直接打つ必要があるので」
「は...恥ずかしいから別の部屋は、用意できないか」
「たしかにそうですね」
そこまで、気が回らなかった自分に少し恥ずかしさを感じつつ別部屋に案内した。
ガルドは歯を食いしばり、背を向けた。
「さっさとやってくれ」
イツキは針を構える。
(失敗は許されない)
皮膚に針を突き立て、ゆっくりと薬液を流し込む。
「ぐっ……!」
ガルドの肩が強ばる。
重たい液体が筋肉の中に押し込まれていく感覚。
「終わりました」
そんなこんなで3人に注射をすることができた。
「これを打った後、体内で毒と結合したものが排出されます。」
薬には副作用が着いてしまう場合がある。
「その影響で、口臭や尿の匂いが強くなるかもしれません」
「それは体に影響はないよね」
リオは心配そうに聞いてくる。
「大丈夫です。それが、毒が抜けている証拠です。」
3人が帰って少したった頃。外から叫び声が聞こえた。
イツキとエマはすぐに叫び声の聞こえた方に向かった。
そこには、リオとミナがいた。
下に目をやるとそこには、錬金術師が1人倒れていた。
イツキはすぐに意識があるかを確認した。
意識はある。だが、腕や足は産まれたての小鹿くらい震えていた。
呂律も上手く回らず、「た…たす...」と途切れた声だけがもれる。
「重度の水銀中毒だ。早く治療しないと命に関わる」
重度の認知症のようになり、最終的には、昏睡状態に陥いる。
これが水銀中毒の末期症状だ。
今助けないと、彼は本当に死んでしまう。
ほんの一瞬、見捨てる理由が頭をよぎった。
彼とその一派がこの村に悲劇を産もうとした張本人だからだ。
だが、今死にそうになっているのは医者として見過ごす訳には行かない。
それに助けないのは、イツキのポリシーに反する。
「あなたを、ここで死なせはしない」
イツキは錬金術師の手を強く握り力強く言う。




