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熊に殺され異世界に転移したので虫と薬草の知識で生きていきます 〜辺境村の薬師は怪異を医学で解く〜  作者: 猫山 緑
毒キノコ辺

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知らぬが毒

痙攣……もしかしてまだ、ベニテングタケを食べた人がいるのか。


それとも、違うキノコを……


などと考えていると、騒動を聞きつけたトラッシュがやってきた。


「トラッシュさんここに眠っている人を診療所に連れて行ってください。あと縄でベットに縛り付けておいてください。暴れるかもしれません」


幻覚を見ている人は、自由に行動させては行けない。何をしでかすか分からないからだ。


「あ…あぁ、わかった。」


一瞬理解がおいつていない様子だったがすぐに行動に移ってくれた。


その場をトラッシュに任せてイツキとエマは痙攣者の方へと向かう。


そこには、1人ではなく3人ほど倒れていた。


手足がバラバラに動き、裏返った虫みたいだった。


イツキは素早く全員の安否を確認する。


「良かった。全員息はある」


まだ、致命的ではないがこのまま放置しておくのは危険だ。


「エマ、あっちで倒れている人を僕の言う通りに治療してくれ」


エマは一瞬恐怖で躊躇した。だが、自分で顔を叩きやる気を入れた。


「任せて」


短い言葉だったが、そこからは覚悟を感じた。


「まず、上体を起こし水を飲ませろ」


イツキは2人同時に上体を起こし水を飲ませていた。


「この時、絶対に一気に飲ませてはいけない。ゆっくり嚥下させろ」


エマは、慎重に行う。


「そして、人差し指と中指を合わせて喉の奥に差し込み吐かせる。」


汚いかもしれないがこれが一番簡単に吐かせることができる。


吐かされる側は少ししんどいが毒が身体を駆け回るよりマシだ。


「吐かせたら、水に炭を混ぜ飲ませるんだ」


炭には毒素を吸着させる作用がある。


「これでとりあえず応急処置は完了だ。」


周りの人に手伝ってもらい診療所に連れていった。


「エマ、この人達を頼む。」


とだけ言いイツキは、急ぎレオンのところに向かった。


「レオンさん急ぎこの祭りを中止してください」


イツキは焦るように言う。


「それは、何故だ?」


「このままでは、次に倒れるのが誰か分かりません」


「わかった。急ぎ祭りを取りやめさせよう。」


イツキは診療所に戻り


痙攣していた人達に何を食べたかを聞いた。


「な…ナメコみたいなキノコだったんだ。お……美味しそうと思い食べてみると、に…苦くてな」


3人いたが3人とも同じことを言っていた。


「ナメコみたいで苦いキノコ……もしかして、ニガクリタケを食べたのか」


ニガクリタケ、名前の通り苦いキノコである。


「それは、危険なキノコなの?」


エマが聞く


「あぁ危険だ。すぐに処置しないと肝臓がボロボロになり最悪の場合死に至る」


「どうやれば治るの」


食いつくようにエマは聞いてくる。


「肝臓を守る漢方を作る。」


このキノコに対する解毒薬はない。


「エマ、熊胆とオウレン、キハダ、アカメガシワそれから...アロエ、ハチミツを持ってきてくれないか」


「わかった」


エマは、返事するなり急いで裏手に取りに出た。


その間、イツキは調剤道具を用意していた。


「持ってきたよ」


息を切らしながらエマが持ってきた。


「ありがとう。では、調剤を始めよう」


手際よく薬草を砕き、ハチミツでまとめる。それを飲み込みやすい大きさに丸める。


「これを噛まずに水と一緒に流し込んでください」


「わかった」


3人は飲み込む。


「ニガ…」


3人は口を揃えて言う。


「良薬は口に苦し。いい薬の証拠です」


3人には、1週間分の薬を処方した。


余談だがベニテングタケを食べた男とワライタケを食べた男も何事もなく退院することができた。


レオンさんに聞いたがこれまでは、キノコ祭りで中毒者は出たことがないらしい。


なぜ今年は、こんなにも中毒者が出たのだろうか


誰かが管理していたのか、それともただの偶然か。


答えは分からない。


村に静けさが残る頃、誰もがこの事件を忘れられなくなっていた。


キノコは恵でもあるが、毒でもある。


「知らない」と言うだけで、人は簡単に命を落とす。


……だからこそ、知ることをやめてはいけない。

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