第五十四話
姉さんや夜半に聞いたけれど、特に異変はなかった、と返されただけで終わってしまった昨日が過ぎて、今日は卒業式の総練習だった。
そのおかげで今日は、3時間授業だ。
「……小夜」
いい加減、話してくれないか?
その言葉は、口に出さずとも小夜には伝わったらしい。
小夜は、しばらく黙った後、答えた。
「……わかった、話すよ」
「私ね、転校することになったの。」
その衝撃的な言葉に対して、何か言おうと口を開いたはいいものの、言う言葉が思いつかなかった。
「その様子だと、本当に覚えてないんだね。まあ、星が嘘をつくとは思えないけどね〜」
そう明るく言っている小夜は、どこか寂しそうだった。
「おじいちゃんの家に引っ越すことに、なったんだ。どこだっけ、地名は忘れちゃった。」
いつもの小夜のはずなのに、どこか違う。
その違和感が何のせいか、おれにはわからなかった。
「今まで黙っててごめんね?」
そう言った小夜は、やっぱり寂しそうにしていた。
それと同時に、気づいた。いや、気づいてしまった。
結局おれは、いつも一緒にいる幼なじみの苦しみさえ、気づいてあげられなかった。
それが、どうしようもなく情けない。
1番近くにいるのに、苦しみにさえ気づいてあげられない。
おれはただ、小夜を甘やかしているだけだった。
「そういえば、延期になっちゃったねえ……」
小夜は転校の話をこれ以上する気がないようで、話を変えてくる。
さっきの話を続けたとしても、何も言えなくなるだけだ。
そう思ったおれは、その話題に乗ることにした。
「延期?何のことだ?」
「あれ、グルチャ見てない?」
そういえば、昨日は今日の予定だったのか。
最も、おれは延期した、という感覚があるかと言われたらないのだが。
月先輩が、いきなり予定が入ってしまった、とキャンセルした。
それで、せっかくなら全員で行こう、という話になって、土曜日に延期したらしい。
昨日聞かされた日時がずれていた、という感覚がするのは、意識がない時間が長すぎたからだろう。
「あぁ、そういえば延期って言ってたな。おれとしては実感がないけど……」
最近の小夜には、嘘偽りなく話せているような気がする。
それは、小夜の、記憶をなくしたおれへの優しさだろうか。
それさえ、今のおれは、わからなかった。
暇なので小話。
めちゃくちゃ今更なんですけど
どっかの回で星の一人称が変わってるんですね
僕→おれ って感じで
これちゃんと意味がありまして
僕って言うのは小夜が僕って一人称がいい、と言っていたからそうしていたんですが
何かの拍子におれって言って
小夜が指摘しないせいでそのままっていう設定があります




