第五十三話
それからの記憶が、おれにはない。
2月の始め、8日とかだったはずの時間は気づけば3月になっていて。
おれの受験も、終わっていた。
自分自身は動いていたはずだが、なんとなく記憶がない。
小夜なら何か知っているかと思ったけれど、何も知らない、という。
「あ、じゃあ私が頑張って言ったあれも覚えてない?」
そう聞かれても、心当たりがなかった。
「……あれ、って?」
やっぱり覚えてないかー、と言った小夜は、気が重そうだった。
「……ごめん」
「いいよ。そのあれについて、今話すか明日話すか悩んでるんだけど、星はどっちがいい?」
おれに選択肢があるなんて、と少し驚いた。
小夜の様子的に、明るい話ではないだろう。
なんとなく、今とも明日とも言いたくなくて、黙ってしまう。
「あ、そうだ!覚えてないだろうけど明日オフ会ね!そして星が選んでくれないので明日に決めましたー」
いつものその強引さに、少しだけ安心するおれがいた。
わかった、とだけ返した。
姉さんにも、何か心当たりがないか、聞いてみようかな。
なんとなく、知らなそうで知ってそうだ。
病院に連れて行かれなければいいな、と思った。
「ばいばい、星」
「ああ、またな」
そう言ってから、違和感を覚えた。
ばいばい?
小夜は、そんな事言わない。
少なくともおれは、一度も聞いたことがない。
おかしい。
それが、小夜がさっき言っていたアレに関わることなのかな、と思ったところで、思考を切った。
多分、明日までは教えてもらえない。
だから、考えるだけ無駄だ。
そう、思った。
そうだ、何かおかしくなかったか、夜半や月先輩にも聞いてみよう。
そんなことを考えながら、おれはドアに触れた。
ドアノブには、白く曇りながらも、銀に輝いていた。
定期……じゃなかった投稿。
さて多分次次回くらいに終わりそうです。
お疲れ様でした




