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死んだはずの俺を生き返らせたのは絡新婦で、そのまま怪異と戦うことになった  作者: 狛屋カムイ


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9/15

怪異の学校と、生徒の俺

7月。

夏休み。


蝉の大合唱が、じりじりと暑さを増長させる。

「39度のとろけるような日」なんて言い回しがあるが──実際はそんな生易しいものじゃない。

焼け死にそうな暑さだ。


こんな日は──


「いやー、文明の利器って偉大だな、ホント」


冷房の効いた部屋で、アイスを頬張る。

外の地獄が嘘のようだ。


『──暁人、お腹壊す』

「紫蜘蛛だって、その冷やしカステラ何個目だ?俺より食ってるだろ」


袖なしの浴衣に衣替えした紫蜘蛛は、加古川さん特製の冷やしカステラに夢中だ。


『──怪異は太らないし、お腹も壊さない』

「……困ったらそれだな、お前」


二人そろって、もう一口。

甘さが広がり、頬が緩む。


「なんだか似てきたねぇ、君たち。兄妹みたいだ」


アイスコーヒー片手に加古川さんが笑う。


既読虫の一件から一月ほど。

俺と紫蜘蛛は、小さな事件をいくつか解決していた。


小鬼、野衾、悪霊──

どれも群れれば厄介だが、単体なら脅威とは言い難い連中だ。


『──兄妹じゃ、ない』


紫蜘蛛が頬を膨らませる。

初めて会ったときと比べると、俺以外にも心を開いてきている。

目隠しをしている以外は、見た目相応の女の子だ。


……俺に向ける感情がやたら重いのは、相変わらずだが。


『お館様!鶴が帰ってたよ!』

『それと、火那森様がお越しです!』


元気な声とともに、二人の子供が事務所に駆け込んでくる。


赤い着物に白い菊の髪飾りの少女と、青い着物に黄色い蘭の髪飾りの少年。

双子の座敷童子──加古川さんに憑く怪異だ。


「ありがとうお菊、蘭丸。ほら、ご褒美の金平糖だよ」


『えへへ!ありがとうお館様!』

『ありがとうございます、お館様!』


加古川さんからお菓子をもらうと、二人の童子はぱたぱたと奥へ消えていった。

扉をすり抜けるように。


「お邪魔します、加古川さん」


入れ替わるように、制服姿の先輩が入ってくる。

背中には竹刀袋。


「お疲れ様です、先輩」

「ええ、お疲れ様。八重原君」


立ち上がり、挨拶を交わす。


『いやーキツかった。やはり夏は生物の敵だな』


竹刀袋から狐火が飛び出し、一直線に冷蔵庫へ。


『さっきお菊ちゃんが折り鶴持ってたけど、もしかして怪異の報せだったり?』


二人分の麦茶を注ぎながら加古川さんに聞く。


「ああ、今回も小物だといいんだけど」


そう言って折り鶴を開き──


「……これは」


眉間にしわを寄せる。


「何が書いてあるんです?」


先輩が湯呑を受け取りながら尋ねる。


「うーん……悪い報せが二つある。どっちから聞きたい?」


「どっちから聞いても同じじゃないですか」


思わず突っ込む。


加古川さんが苦笑いし、指を一本立てる。


「じゃあまず一つ目。今回は大きな案件だ」


「そして二つ目だが──」


二本目を立てて、一拍。


「場所は、平浪高校。君たちの通う学校だよ」


                   ~~~~~~


夜になっても、まだ昼間の熱気が残っている。


俺と先輩は、見慣れた校門の前に立っていた。


「なんか、悪いことしてる気分になりますね」

「実際、悪いことではあるんだけどね」


軽口を交わしながら、門を乗り越える。


着地の瞬間──空気が変わった。


重い。

“何か”に、見られている。


『──いる』


その気配に呼応して、紫蜘蛛と狐火が現れる。


『ああ。それも、大量にな』


見慣れた校舎が、やけに禍々しく見えた。


「火那森さん、どうします? 二手に分かれますか?」


校舎に向かいながら尋ねる。


「……単独行動は危険、だけど……」


先輩は視線を巡らせ、逡巡する。


今回は学校全体が舞台だ。

怪異の親玉を探すには分かれた方が早いが、その分リスクも大きい。


『──大丈夫。私が、ついてる』


紫蜘蛛が一歩、前に出る。


『そうだな。主は俺が守る』


狐火も続く。


先輩が小さく息を吐いた。


「……分かった。じゃあ、私は東棟から行くわ」

「なら、俺は西棟ですね」


下駄箱を無視し、土足のまま廊下へ踏み込む。


「じゃあ先輩、気を付けて」

「ええ。何かあったらすぐに連絡して」


──背を向けて、二手に分かれる。


夜の校舎が、静かに口を開けていた。

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