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死んだはずの俺を生き返らせたのは絡新婦で、そのまま怪異と戦うことになった  作者: 狛屋カムイ


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6/11

無視できない既読虫と、無視しない私たち

──八重原くんと分断されてから、しばらく経った。


目の前の怪異──既読虫との戦いは、正直ジリ貧だった。

あいつの特性についても、掴みきれていない。


反応すれば、傷がつく。

だから、”無視して”斬る。


でも、一手足りない。


どれだけ斬っても、追い詰めている感覚がない。

むしろ、追い詰められている気さえする。


「どうする……」

八重原くんのこと、怪異の攻略。

思考が堂々巡りを始めた、その時。


⦅主よ、一つ提案があるんだが⦆


狐火の声が刀を通じて響いてくる。


「なに?狐火」

《あいつは"無視された"と感じると攻撃してくる⦆

《いや、”中途半端に反応したから”攻撃してくるんじゃないか?》


──なるほど。

最初から反応しなければ、いないのと同じ。

一度でも反応してしまえば、その先は”無視”になる。


「だとしたら、もう術中にハマってるわけね……」


思わずため息が出る。


⦅だから、"無視しなければ"いいんじゃないか?⦆

《全部に反応してやればいい》


──つながる。


今までは、”見ても反応しなかった”。

それが条件を満たしてしまっていた。


「でも、全部は無理よ」

《大丈夫、そこは僕に任せてほしい⦆


狐火が自信ありげに返す。


⦅というわけで、身体半分借りるよ。主⦆


左の耳飾りが妖しく光り、視界が揺れる。


左目が熱を持つ。

彼が──”入った”。


『さてそれじゃあ─楽しい口喧嘩といこうか』


口が勝手に動く。


〈見た〉

『あぁ見たとも。それで?』

『あーでも、”見ている”が”見てないな”。眼中に無いってやつ』


〈…聞いた〉

『ハッ一本調子だな。それしか言えないのか?』

『国語の教科書でも読み直してこい』


自分の声で、容赦なく煽り倒す。


〈ギギギィィッ……〉

『おっと、効いてるみたいだな。歯軋りか?』


半笑いのまま煽り続ける。

ほんと──口悪いんだから。


目の前の虫がわなわなと震える。

次の瞬間、怒りのままに飛びかかる。


『主!』


反射的に上へ躱す。

そのまま背中に、一閃。


〈ギッ!〉


『おいおい、口でダメなら腕尽くか?それ"負けました"って言ってるようなものだぞ』


〈ウザ〉

〈なんだテメェ〉

〈消えろよクソ〉


『ハハッ語彙が貧弱だな。退屈だ』


脚と、言葉の矢。

全てを捌き、斬り払う。


──楽だ。

余計なことは考えなくていい。

”文字”は狐火が拾ってくれる。


それに、怪異の動きが目に見えて遅くなっている。


〈死ね〉

〈死ね!〉

〈殺してやる!〉


複眼を歪め、罵声を撒き散らす。


語気と攻勢が増す。

だが、威力は落ちていく。


もう避ける必要もない。

刀で受け止められる。


『あーあ、面白くもない。童でももう少しマシな罵倒をするぞ』


あくび混じりにまだ煽る。


『そういう短慮でガキっぽいところが──』


一拍。


『”無視される原因”なんじゃない?』


〈ギィィィィィイイイィッッッ!!!〉


……泣いた。

(狐火、やりすぎ….)


『主』

「ええ」


距離を詰める。

踏み込み──


──抜刀。


炎が走り。

両断。


一瞬の静寂。


──罵声が、止んだ。

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