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怪異に殺された俺は、“憑き人”として怪異を狩る  作者: 狛野カムイ
新たな憑き人とデスゲーム

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37/61

夜は終わり、朝がくる

雨の降る中、いぶきさんの元に跳ぶ。

彼女は、雨を楽しむように佇んでいた。


『──どうでしたか?私たちの戦いは』


目を細め、微笑みながら俺に問う。

姿は大きく変わったが、中身は変わらずいぶきさんのままだった。


「正直、神様でも見てるかのような気分でした。雨と蛇──というか、龍を操るなんて」


思わず見惚れてしまうほどの、人界離れした現象。

世が世なら奇跡を起こす神の遣いとして崇められていそうだ。


『そう言っていただけると、見せた甲斐があったというものです』


『これが、私たち憑き人の到達点の一つ』

『人と怪異が共に歩んだ先にある姿です』


言葉と同時に、雨が止む。

二匹の蛇龍も姿を消した。


『八重原様。あなたも、私たちのようになれる可能性があります』

『しかし、確実ではありません。あなたも紫蜘蛛様も、危うい部分がありますから』


「……もし道を間違えたら、どうなるんです?」


恐る恐る、聞いてみる。

俺も紫蜘蛛も、今のところは上手くやれているつもりだが、いぶきさん的には違うようだ。


『最悪、あなた自身が怪異に堕ちる』

『あるいは、怪異でも人でもない“なにか”になる』

『そうなれば、私たちだけでなく怪異からも狙われる。あなたは世界の敵になってしまうのです』


真剣な瞳で、俺と俺のスカーフを見る。

まるで、紫蜘蛛にも言い聞かせるように。


「もしかしたら、あの蜘蛛の怪異が俺の末路ってこともあるわけか……」


餓鬼に捕らわれた時に脳裏をよぎった、あの映像を思い出す。

獣のように吼えながら、縦横無尽に暴れる蜘蛛の怪人。


『先ほどのあなたは、間違いなく人間よりも怪異に近い存在になっていた』

『怪異と一つになればさらに強くなれる反面、人間に戻れなくなる可能性も高くなる』


『どうか、そのことを忘れないでくださいね』


それだけ言って、いぶきさんが屋上の端に歩き出した。


『さて、そろそろ降りましょうか。みなさん待っているでしょうから』


振り返って、ニコリと微笑む。


──俺たちも、ああなれるだろうか。

──いいえ、なれるようにしましょう。


糸で結ばれたように。

言葉を交わさなくとも、紫蜘蛛の意思が伝わってくる。

俺たちは共に歩む。

そう、決意した。


下に降りると、加古川さんが車を出して待っていた。

車内では先輩が眠っている。

狐火は隣で見守っていた。


「ひとまず酒街くんの家まで送っていくよ。その後は──」


「今日は泊まっていってください。空いている客間がありますから」


怪異化を解いたいぶきさんが助手席を開けて話す。

加古川さんも働き詰めだった。

ここからさらに運転も、というのは辛いだろう。


「それじゃ、お言葉に甘えようかな。さあ乗って。着いたら起こすよ」


いぶきさんが助手席に、俺は先輩の隣に乗り込む。

狐火が霊体に戻って先輩の中に収まったことで、後部座席に余裕ができた。


車が走り出し、心地よく揺れる。

あっという間に、意識が落ちた。


翌朝、目が覚めるとベッドの上だった。

起こすと言っていたのに、結局ベッドまで運んでくれたようだ。


『──おはよう、暁人。よく寝てたわね』


横を向くと、紫蜘蛛の顔が目の前にあった。


「っ!?ビックリした……普段は俺の中で寝てるのに」


『──この寝床、心地良さそうだったから』

『──それに、あんなこと、しちゃったし』


少し顔を赤らめて、顔をそらす。


……ああ、あの甘噛みのことか。


『──もっと、暁人を近くに感じたかったの』

『──迷惑、だった?』


「そんなことはない。ちょっと驚いただけで、近くにいて欲しいのは俺も同じだよ」


紫蜘蛛の問いに、即答した。

迷惑なわけがない。

むしろ、今じゃいないと寂しいくらいだ。


「さて、起きるか。朝飯はあるかな」

『──なかったら、困るわ』


二人でベッドから出て、扉の方へ向かう。

首の辺りに違和感を覚えた。


「……紫蜘蛛、もしかして俺が寝てる間に噛んだか?」


『──噛んで、ない』


顔を逸らして、そそくさと部屋を出て行ってしまった。


「……やられたな、こりゃ」


──まあ、いいか。

紫蜘蛛が喜ぶなら、身体くらい。


──本当に?


また、俺じゃない俺の声が聞こえた気がした。

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