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怪異に殺された俺は、“憑き人”として怪異を狩る  作者: 狛野カムイ
新たな憑き人とデスゲーム

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怒り狂うギャルと、全てを貫く私たち

『あ〜〜〜もぉ〜〜〜マジ腹立つんですけどぉ〜〜〜!!!』


白來が地団駄を踏みながら叫ぶ。

赤羽カゲロウに落とされてからずっとこの調子だ。


私は狐火の尻尾のおかげで無事に着地した。

加古川さんもお札で足場を作って降りてきた。

白來は、槍を壁に刺して火花を散らしながら無理やり落下速度を落とした。


身体は無傷だったが、お気に入りのネイルに傷が入ってしまったらしい。


「白來くん、そろそろ機嫌を治しておくれよ」


『これが冷静でいられるかー!あのキザ野郎、絶対許さないかんな!』


加古川さんが宥めようとするも、火を吹きそうな勢いで怒り続けている。


《なあ白來ちゃん。ここで怒ってても仕方ないだろう?早く上に戻って直接クレームつけたら良いじゃない》


狐火も加勢する。

私は、どう声をかけるべきか悩んでいた。


どうも、私は彼女に嫌われている。

確かに初対面でキツい当たり方をしてしまったが……。


『……はあ。なんか疲れた』


白來が急に落ち着いた。

どうやら怒りの炎が鎮火したようだ。


「白來ちゃん、その──」


『はいそこ、ちゃん付け禁止』


私の言葉を遮り、白來が私に指を差す。


『あーしのことは白來でいいし。あーしもアンタのことヒナリンって呼ぶから』


「あ、えっと……そう?」


──この子とのコミュニケーションは、難しい。


《──いつまでそこにいるつもりだい、君たち》


どこかからスピーカー越しで声がする。


『あぁ!?誰のせいでここにいるんだっての!つかいい加減顔出せよ餓鬼!』


白來がまた着火してしまった。

……ややこしくなった。


「やあカゲロウくん。僕たちを落としたのはどういう意図だったのかな?これでは君のリスナーは喜ばないと思うんだが」


加古川さんが話題を変えるように口を開く。


《すまないね。つい気が逸ってしまったんだ》


《だが安心して欲しい、帰還ルートは用意してある》


ノイズ混じりの声が響く。


《まずはそこの扉を抜けるんだ》


《その先でテストを受けてもらう。合格すれば、晴れてエレベーターに乗って僕の元に行けるようになる》


淡々と説明するカゲロウ。

まるで、ゲームのチュートリアルだ。


《テスト?なんのテストだ。まさか学力とか?》


狐火が怪訝そうに問う。


「あなたの遊びに付き合ってる暇はないのだけど」


私も狐火に加勢する。


《だが、僕の“遊び”に付き合ってくれないと君たちは一生その穴倉の中だ》


《選択肢はないと思うが?》


声色を変えず、私たちの意見を一蹴する。

フフン、と得意げに鼻を鳴らす。


『──なにバカ正直に聞いちゃってんのアンタたち』


白來が少し落ち着いた様子で私たちの前に立つ。


『こんな奴の言うこと聞く必要ないし』


『ヒナリン。ちょっとしんどいかもだけど我慢して』


白來が、私の胸に手を伸ばす。


──そのまま、ズッと、身体の中に入ってきた。


《!?おい何してる!主の身体は満員だぞ!》


《いいから場所開けろし!これが一番手っ取り早いの!》


「ちょっ……暴れないで……!」


白來が私の中に無理やり入り込み、内側で狐火と押し合っている感覚がする。

思わず胸を押さえてうずくまる。


「大丈夫かい火那森くん!今抑制の札を貼る!」


加古川さんが何枚か札を貼ると、いくらか痛みがマシになった。


胸の痛みが治まると、今度は左目に違和感を覚えた。

狐火が表に出た時の熱さとは違う。


まるで水が目全体を覆っているように、冷たい。


《──ふう。ちょっと狭いけど、まあいいっしょ》


《僕としては狭くて良くないんだけど……!》


加古川さんが興味深そうに私たちを見る。


「……これは驚いた。白來くん、君は──」


《そ。これがあーしのチカラ。“他人の力を強化する“。その為にあーしはご主人以外にも憑くことができる》


私の左手に、白來の槍が握られる。

右手には狐火の刀。


刀の方は、普段よりも力がみなぎっている。


「白來。何をするつもりなの」


薄々勘付いてはいたが、一応聞く。

加古川さんは宙に浮かせたお札の足場に乗り、結界を張って防御姿勢を取っていた。


槍の方から小悪魔のような声が聞こえる。


『そりゃあもちろん──』


『こうっしょ!』


直後。


炎の尻尾が四本、爆発するように生えた。


《うおお!?いきなりこんな火力出したら主の身体が保たないぞ!?》


《大丈夫!ヒナリンの負担はあーしが受け持ってるし!》


一拍遅れて、刀にも炎が宿る。

瞬く間に火勢が強くなっていき、刀を掲げないと足元を焼き尽くしそうだった。


掲げた刀から放たれた炎が、傘のように広がる。


「なるほどね!このまま上に飛ぶつもりか!」


加古川さんが叫ぶ。


左目が勝手にウインクする。


《さっすがカコちん!冴えてるぅ!》


《いや、誰でも分かるでしょこんなことやったら》


狐火の冷静なツッコミが刺さる。


「──とにかく、行くわ!」


剣と槍を掲げて重ねると、さらに炎の勢いが増していく。

脚に力を込めて、跳ぶ。

そのまま炎の尻尾が推力を生み出し、落ちてきた穴を遡る。


《な──して──!》


カゲロウの慌てる声がかすかに聞こえてくる。

炎の傘の向こうから様々なトラップが落ちてきているようだが、全て焼け落ち、溶けていった。


加古川さんが後ろからついてくる。

私たちの突進を楽しそうに眺めている。

だが、手に持ったお札で白來の負担をさらに肩代わりしている様子だった。


──フロントの香水の匂いが漂ってくる。

どうやら元の階に戻ってきたようだ。


「どうする!?止まる!?」


《止まるわけないじゃん!このまま突っ切るっしょ!》


白來が楽しそうに私の問いに答える。

私も、少し楽しくなっていた。


「はああああああ!!」

《イヤッフゥゥゥゥ!!》


一際大きな破壊音が鳴り、そのままさらに上へ。

餓鬼の叫び、コンクリートの砕ける音。

全てを置いていき、貫いていく。


──広い空間に出た。


視界に、見慣れない姿が入った。


半分怪異になりかけている男。

それが八重原くんだと、直感で分かった。


「良かった!間に合った!」


炎を刀身に押し込め、刀と槍を煌々と輝かせる。


「八重原くん!!」


そのまま突っ込み、対面していた赤羽カゲロウに刃を食い込ませる。


バーカウンターに激突して、止まる。


──赤羽カゲロウは、動かなくなった。

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