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死んだはずの俺を生き返らせたのは絡新婦で、そのまま怪異と戦うことになった  作者: 狛野カムイ


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夢を嗤う獏と、怪物となった俺

「紫蜘蛛──!!」


髑髏に向けて糸を放ち、勢いを乗せて蹴りつける。

──直撃したが、砕けない。


だが、火那森先輩から引き剥がすことは出来た。


「火那森さん!無事ですか!」


髑髏を蹴り飛ばし、先輩に駆け寄る。

先輩は身体の一部が黒く染まり、虚ろな目でどこかを見ている。


「……八重原、くん」

「はい!俺です!良かった、意識はある!」


先輩を抱き起こし、無事を確認する。

身体の方は、何かに侵されていて動かせないようだった。


「紫蜘蛛、なにか手はないか!?」

《──やれることは、少ないけど》


糸を数本伸ばして、先輩の体に繋ぐ。

糸が妖しく光りだす。


《──私の妖気を流して、狐火を起こす》


言われてようやく、狐火が表に出てきていないことに気付く。


いや、出てこれなくなったのかもしれない。


──ガチ、ガチ、と。


骨のぶつかる音がする。


自分たちのいる屋上に、首のない巨骨が手をかけていた。


「っ!」


──髑髏が浮き上がっている。

大口を開けて、何かを吸い込んでいる。


──口の中。

喉の奥に。

本のようなものが埋まっているのが見えた。


『──っ!二人とも……あの本を……奪え……!』


「狐火さん!」


息を吹き返したように、狐火が先輩の身体を使って声を絞り出した。


《──あれが、"核"ね》

『そうだ……あれを壊せば、餓者髑髏は、止まる……!』


〈アッハハハハ!!残念、もう少しで壊せたのに!〉


どこからか、声が響く。


「誰だ!?」


周囲を見渡す。

だが、宙に浮いた髑髏とそれを待つ身体しかない。


髑髏に視線を向ける。

──次の瞬間。


──髑髏に、誰かが座っていた。


「──っ!?」


『でも中々面白いものを見せてもらったわ』

『そこの女は夢を拒めず壊れかけて』

『アンタは他人の夢を壊して現実を突きつけた』


クルクルと傘を回して、立ち上がりながら楽しげに話しだす。


『ホント、人間って昔から変わらないわね!』


突然、少女が目の前に現れた。


視線は逸らしていない。

油断もしていなかった。


──なのに、一瞬で髑髏の上から消えて、間合いを詰めてきた。


『結局、人間なんて自分が一番可愛いの!』

『命を取るか心を取るか!違いなんてそれだけ!』


無垢な子どものように、どこまでも楽しそうに語る。


「……なんだと?」

《──結局、あなたは誰なの》


嫌悪と苛立ちを乗せた声で、問う。


『ああっと、自己紹介がまだだったわね』


クルリと片足で回って、ポーズを決める。


『アタシはハミィ。夢を司る"(ばく)"の頂点』

『そして、この学校を呑み込んだ"悪夢"の親よ!』


「──!」


夢を司る獏。

──コイツが、この異変の元凶か。


『アンタ達の推理も中々冴えてたわ!』


嬉しそうにハミィが声を上げる。


『アタシが人間たちの夢を束ねて、この学校に投影したの!』

『それも学校を憎み、恐怖している人間のね!』


『その結果、とっってもアタシ好みのエキサイティングな夢が見れたわ!キャッハハハハ!』


「──趣味悪すぎるだろ、お前」


心の底からの嫌悪を吐き出す。


アレが楽しいと本気で思えるのなら、間違いなく人間ではない。


『あら残念、お気に召さなかったようね』

『でも、そこの女はそれなりに気に入ってたみたいだけど?』


ハミィが先輩を見る。


「──何言ってんだ?お前。火那森さんの何をどう見たら──」


『ソイツ、死んだお友達の夢を見てたのよ』


「──なに?」


ハミィが構わず続ける。


『ソイツ、九年前に友達が死んでるの。いじめが原因でね』

『苦しみに気付いてあげられなかったことを後悔していたのよ。それこそ夢に見るほどにね』


ハミィの口が大きく裂ける。

まるで、ここからがハイライトだと言わんばかりに。


『だからアタシが見せてあげたの!死んだはずの友人と再会する夢をね!』

『アタシ好みのアレンジで、身体を寄越せって言わせたんだけどね!』

『あんな良い子が絶対言わないセリフを喋らせたのに、あの子受け入れちゃったのよ!』

『ホーント、おっかしいんだから!!アッハハハハ!!』


ハミィが腹を抱えて笑い転げる。


「────」


頭の奥が、煮えるように熱い。


怒りを超えて、思考が染まる。

コイツは、殺す。

殺さないと、いけない。


《──っ、暁人、ダメ──!》


思考が溶ける。


力が増す。


纏う装束はより固く。

筋肉は糸でより強靭に。


──紫蜘蛛の声が、聞こえない。


背中が裂ける。


──肉を押し破るように。

糸で編まれた腕が四本。

蜘蛛の脚のように突き出す。

その指先は、槍のように鋭く尖っていた。


顔も黒い糸で侵食されるように覆われる。


視界が黒に染まった後──赤に染まった世界が写る。


──四つの赤目が、"敵"を捉える。


「──ハァァァァァ───」


『──あら、超絶やる気じゃない』


ハミィが笑いを止める。


その視線の先。

──そこにいたのは、蜘蛛と人が混ざったような、怪物だった。


『でも残念、今回の相手はアタシじゃない』

『ていうか、アタシに構ってる場合?』


そう言いながら、ハミィが髑髏の上に立つ。


「──」


無言で、五指から糸を放つ。

触れたものを切り裂くような、細く鋭い糸。


だが、外した。


ハミィを乗せたまま、宙に浮いた髑髏が屋上へ這い上がってきた首なしの巨骨の元に向かう。


『さあ!ここからがハイライトよ!』

『蜘蛛男と餓者髑髏、どっちが強いのか!最後までアタシを楽しませてちょうだい!』


髑髏と首が、合体する。


〈オオォォォ────ッ!!!〉


餓者髑髏が、吠える。

怒り、悲しみ、憎しみを抱えた声で。


「──アアアァァァァァ────!!!!」


蜘蛛の怪物が、吠える。

純然たる殺意だけを込めて。


──悪夢の夜の学校で。

怪物同士の殺し合いが、始まった。

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