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死んだはずの俺を生き返らせたのは絡新婦で、そのまま怪異と戦うことになった  作者: 狛屋カムイ


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11/14

終わらない廊下と、超えていく俺たち

散らばった破片を糸繭で縛る。


「さっきのアイツみたいに動かれたら、困るからな」

《──それが、賢明》


改めて異界化した景色を見る。


元がよく知る校舎とは思えない変貌ぶりだった。


「ここまでの変化が起こせるとか、どんな化け物だよ……」


あの夜出会った磯姫──海月を思い出す。

アイツも相当なものだったが、現実に影響を及ぼしている今回の黒幕は、それ以上だ。


《──暁人、集中》


首元にチクリと、爪を立てられたような痛み。


「悪かったよ、ちょっとあの磯姫を思い出しただけだ」


《──なら、もっとダメ》

「痛たたたたッ!?」


さらに深く、強く爪が押し込まれる。

思わず首に触れる。


「分かった、分かった!集中するから勘弁してくれ!」


痛みが消える。

ひとまず機嫌は治ったか。


気を取り直して、走り出す。


──壁や床、天井から模型や像が生えてくる。


「流石にもう慣れたよ」


糸弾、糸縛り。

"拘束"は紫蜘蛛に任せる。

あいつの糸は、決して逃さない。

だから俺は、"破壊"に集中すればいい。


拘束、破壊、前進。

拘束、破壊、前進。


「──長いな?」


階段が見えない。

どこまでも同じ景色が続いていく。


《──目印、置く?》

「ああ、そうだな」


梁に糸を放ち、巣を張る。

中心部に黒い糸で"弌"と綴る。


「目印のタイミングは任せる」

《──分かった》


再び拘束、破壊、前進。

3回壊すごとに、巣の目印を張る。


巣の数字が"什"を超え──


"弌"の巣が見えた。


……さっき、張ったはずの巣が。

同じ場所に、ある。


「……マジかよ」


息を吐く。

ループしている。

つまるところ、閉じ込められた。


しかも、繭がなくなっている。

脱出したか、消滅したか。


「どう思う、紫蜘蛛」

《──こういう時は、最悪を想定するべき》


最悪。

それはつまり──


──一階で見た"異形"が、大挙して目の前に湧いてきた。


動きがない。

次の瞬間──

波のように動き出した。

床を軋ませながら、押し寄せてくる。


「なるほど、想定してて正解だ!」


天井に跳び、四肢で張り付く。


今まで壊してきた連中が、異形の怪物となって、廊下を埋めていた。


……隙間がない。

足の踏み場さえも。


目の前だけじゃない、背後からもだ。


異形の中に、壊れていない像もわずかな隙間を埋めるように混ざっている。


真下の連中は、俺を捕まえようと手を伸ばしている。


「これ、無限に増え続けるやつだな?」

《──そうね》


無限に湧く怪物、無限に続く廊下。


詰みだ。

──本来なら。


「紫蜘蛛。さっきみたいに壊せる壁、探せるか?」

《──当然。任せて》


俺には紫蜘蛛がいる。

二人でなら、乗り越えられる。


「──行くぞ!」

息を吐き、目の前の群れに突っ込む。

一周目と同様に拘束して、壊す。

──はずだった。


だが。


怪物が、糸を引き千切った。


「っ!」

《──!》


腕の糸を力任せに引き千切る。

胴の繭は血肉を内側から膨らませ──弾き飛ばす。


紫蜘蛛からも明確な驚きが伝わってくる。


今まで、この糸を破られたことは──一度もなかった。


「怯むな!紫蜘蛛!」

《──大丈夫》


異形が腕を伸ばしてくる。

糸で軌道を逸らし、そのまま括って切断する。


他の異形も血肉の部分を糸で括って切り離していく。


《──ここ》

「よし!」


壁を蹴破り、突入する。


──壊した先には、同じ景色があった。


「クソ、ハズレか!」

《──いえ。違うところも、ある》


視線を移す。


一周目で見た、巨大な腕のようなもの。


──もう一本、ある。


《──あれ。まだ作り途中みたい》

「ついでだ、壊していくぞ!」


自分の拳を糸で固めて、突っ込む。

異形たちが守るように立ち塞がる。


「紫蜘蛛!」

《──!》


両腕を前に出し、注連縄ほどに束ねた糸を放つ。

異形の壁に差し込み、無理やりこじ開ける。


《──今度は、切らせない》


腕から縄を切り離し、巨大な繭に変える。


繭の門を突っ切り、跳び上がる。


巨大な腕の"骨"。

奴らが造っている"本体"の、一部が見えた。


「壊れろ──!」


思い切り身体を捻り、叩き潰すように拳を骨に叩き込む。


骨は、真っ二つに割れた。


「まだまだ!」


割れた骨に追撃を加える。

細かく砕き、修復不可能な状態へ。


《──これで、仕上げ》


糸弾を数発撃ち込み、繭に変える。


「こっちもやるぞ!」

《──ええ》


未完成の骨の方を向き、拳を握り──


──空間が、揺れた。


「っ!?」


周囲を確認する。


〈────イタイ────〉


声が響く。


低く、重い声。


「っ!?なんだ!?」


繭に変化はない。


湧いてきた異形と像は、時が止まったように動かない。


〈────ユルサナイ────〉


声が響くたび、空間が揺れる。


〈────オマエも────コワス────〉


声が止んだ瞬間。


──異形が、凄まじい速さで襲ってくる。


「っ!!」

《──まずい》


糸を横の壁に放ち、真ん中で結ぶ。

身体を糸に預け、張る。


《──飛ぶわ》

「待──」


言い終わる前に、足が床から離れる。


「────っ!!」


弾丸のように身体が飛ぶ。

うつ伏せの姿勢に変え、腕を顔の前でクロスする。


《──このまま、壁を壊す》

「壁!?廊下はループしてるはずだろ!」


舌を噛まないように、紫蜘蛛に聞く。


《──この速度なら、振り切れる》

《──怪物も、この空間も》


《──覚悟、決めて》


紫蜘蛛が言うや否や、壁が見える。

激突する。


「──っ!」


頭を守るように、腕に力を込める。


壁を打ち壊し、その先へ。


──階段が見えた。


糸を放ち、即席の巣を張る。


巣にかかり、停止。


《──念の為》


壁の穴に向けて、糸弾を数発。

穴を塞ぐ。


「……なんとか、なったか?」

《──ええ。少なくとも、先には進める》


巣から下り、階段へ向かう。


「……2階でこれだ。3階は──」

《──暁人。私が、ついてる》


また紫蜘蛛の熱が伝わる。

繋がっていると意思を込めるように。


階段に足をかける。


──ああ、そうだ。


二人でなら、乗り越えられる。

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