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第五十九話 オリヴィアさんをデートに誘った

修正箇所の指摘、ありがとうございます。少しずつですが、進めさせていただきます。

「それにしても、オリヴィアさんが加わってくれたおかげで早く終わったよ。ありがとう」


「お、お礼なんてそんな」


 お互い、いつものペースを取り戻したのを確認してから、お礼を告げる。


 恐縮する彼女の表情は、やたらと畏まりこそしても、血色もよく元気そうである。色々あったけど、素直によかったと感じた。


「収納魔法が使えたら、もっと楽に運べるのにな」


 それこそ、この状況なら荷運びでいくらでも仕事があるんじゃないかしらん。ハワードさんのところへ行けば、ツテの問題で仕事が来ない、なんてこともないだろうし。


「ま、魔力回路が治るまで、し、辛抱ですね」


「そうだね。無理してクセになっても馬鹿らしいし、それまでは一緒に内職とかしよう」


 はい。と、返事をしてくれたオリヴィアさんは、やけに嬉しそうだ。不思議に思ったのがバレたのか、彼女は慌てた口調で弁明しはじめる。


「そ、その、すいません。ふ、不謹慎なーー」


「ああ、別にそんなふうには思ってないから」


 笑顔を作ると、彼女は謝るのをやめ、僕の顔を少し窺ったのち、やや安堵した様子でポツリと呟いた。


「そ、その。は、働いて、お金を貰うって、き、気持ちがいいんですね」


「そうだね。何かに没頭してると、気も紛れるし」


「そ、それに、今日私たちが作ったものが誰かの役に立つと思うと……」


 オリヴィアさんは小さな子供のように頬を紅潮させながら、輝く目で噛み締めるよう口にする。初々しい充足感が、まるで手に取るように伝わってきた。


「なにより、初給料だもんね。よし、おじさんが何か奢ってあげよう」


「お、おじさん……? そ、そんなことよりっ、悪いですよ……!」


 別に、悪いなんてことはない。今日の仕事の半分以上をこなしてくれたのは、手が器用で覚えのいいオリヴィアさんだった。


「もしかして、予定とかある感じ? それとも、ちょっと疲れちゃった?」


「い、いえ。そんなことは……でも……」


 遠慮がちな瞳の奥に期待が覗いているのを確かめたうえで、僕は多少おどけてみせた。


「なら遠慮しないの。デートしたらお金は男が出すもんでしょ」


「こ、これって、デートだったんですか!?」


 てっきり『な、何を言っているんですか……もう』なんて苦笑いを予想していたのだが、思ったより反応が大きかった。


「あはは、オリヴィアさん反応でかすぎ」


 そう笑うことで動揺を隠す。どうしよう。彼女いない歴イコール年齢かつ童貞のくせして、慣れない言葉を使うんじゃなかった。


「す、すいません。ま、まさか自分が、お、男の子とデートしているなんて……で、でもたしかに、これ、で、デートと……言えなくも……」


 うん。男の子じゃなくて、君より一回り近く年上のおじさんなんだけどね。まだ落ち着かない内心で、訂正しながら年下相手にマウンティングしていたものの、俯き小声でブツブツ言っていた彼女が急にこっちを向くと、思わず背筋が伸びてしまった。


「で、でも、いいんですか? も、もっとかわいい服とか、お洒落してきてたら……」


 正直女性の服に詳しくなかったこともあり、僕は不用意にも率直に訊ねてしまった。


「え、それ可愛くないの?」


 途端に、噛み噛みながら物凄い勢いで食ってかかられた。


「か、可愛くないですよっ!? まず、か、髪からしてこんな、ど、どうしたら……」


 か、可愛くないのか……。いや、たぶんそれはオリヴィアさんの規準でってことなんだろう。百五十キロを投げられる投手が百四十キロしか出せなかった日を嘆いているのと同じなのだ。


 僕ら一般人からしたら、今の彼女ですら嫉妬するほど羨ましいレベルである。なのに目の前のオリヴィアさんは、僕が目の前にいると言うのに髪を撫でつけたり服のズレか皺を気にする素振りを見せたりと、忙しなく動き続ける……が、やがて諦めた顔で僕に向き直った。


「あ、あの……ジョージさん」


「な、なに?」


 ただでさえ合っていなかった目線を更に下へ大きく外し、くねくねとまごつく。なんだろう。


「さ、さっき言って下さった可愛いって……き、気を使って下さっての……」


「いや、本当に可愛いと思うよ」


 本当のことを言うと、オリヴィアさんは可愛いというより綺麗と言った方向の美形だ。けど、後押しが欲しそうだったので、ストレートに褒めることにした。


 オリヴィアさんは、少し困った顔で困惑し、口をややすぼめては見せたものの、不快そうな様子は感じない。むしろ、だんだんと笑いを噛み殺しきれなかった人のように、嬉しそうな様子が浮き出てきた。


「す、すいません。その、にやけてしまうものなんですね……あ、ありがとうございました……っ」


 ほとばしるような満面の笑みで、オリヴィアさんはお礼を言った。この人、僕なんかの言葉で舞い上がってくれるんだな。


 右も左も知らない若い子だからなんだろうけど、これだけ喜んでくれるならもう少し心を込めて言うんだった。いや、それはそれで気持ち悪い感じになったかも知れないし、今回はこれで、いいか。

更新ペース落ちます。楽しくない話題でエンタメの雰囲気壊したくないので、もし詳細知りたい方は活動報告にでも。週二更新は守りたい。

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