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どこまでもモブだけど主人公になりたい佐藤くんがかっこいいことを私だけが知っている【青春】  作者: 大山小水


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第六話 伝説となった

学食から帰ってくると、隣の席の彼が席に座って、窓の方を見ていた。


そういえば、彼は学校中で「シンデレラ」と噂になっていることをー切気にする様子はなかった。


むしろ「フッ、目立つのも主人公の役目だな」と満足しているようだった。


そんな彼が、おもむろに呟いた。


「フッ。主人公たるものやはり、人気のない委員会とかに所属するのはかっこいいな」


昨日、おばあさんを助けていた彼は、今日も平常運転だ。


◇◇◇◇


六限目のロングホームルーム。


例の係委員会決めの時間だ。


私と里奈は無事図書委員のところで手を挙げ、ちょうど四人だったので、すんなり決まった。


しかし、他の委員会関係のはなかなか決まらない。環境整備委員、美化委員、保健委員、体育委員。


これらは、時間がかかったり、めんどくさかったりするため、敬遠される委員会だ。


しかし、隣の席の彼は、「フッ、環境整備委員、いいじゃないか学校の環境を整備する。主人公になる俺に見合っている」と私にだけ聞こえるような小さな声で呟き、誰も手を挙げていないところで、一人だけ手を上げた。


そして、先生が「名前、お願いできる?」と尋ねた。


クラス一同が沈黙し、注目する。


なぜなら、彼がどんな名前か誰も知らなかったからだ。


「はい、佐藤です」


…………。


あの勢いや少し意味深な呟きで『佐藤』か。


クラスのみんなも、えっ、「⚪︎条」や「◻︎△寺」のようなすごい感じの苗字じゃないの?と言った気持ちがあふれ、ざわざわしている。


そんなクラスの反応に彼は満足いったのか「フッ、これだから主人公は注目を集めてしまうのだ。世界は俺が中心に回っているのだからな」と顔が物語っていた。


私は『そうじゃなくて、みんなあなたの苗字を初めて知って驚いているんだよ!しかも、すごいモブっぽい苗字で、みんなそのギャップに驚いてざわついているだけだから』という内心を隠しながら、その横顔を見つめていた。


◇◇◇◇


少しクラスがざわついた後はとりあえず残りの委会決めを保留し、係決めに移り、みんな次々と手を上げていく。


真衣は念願の文化祭クラス係になり、嬉しそうにしていた。


ーーーー


そして、全員が手を挙げ終わってから、問題は起こった。


なんと一部の委員会の定員が足りなかったのだ。


残っているのは保健委員と美化委員と体育委員。


「誰かこの残っている委員会に所属してくれる奴はいるか?」


担任の催促の声が上がる。


クラスにどろっとした重い沈黙が流れる。


いつも新学期はこうだ。


委員会決めは大体最後、委員会だけ残る。


気まずくなった私は先生の向けるまなざしから逃れるようにふと横を見ると、佐藤くんが「フッ、委員会掛け持ちは主人公っぽくないか?」と呟いていた。


でも、彼はすでに環境整備委員になっていた。


私は、その様子を見て、喉元まで出かかった『それだと、ただの便利屋だよ』という言葉をどうにか飲み込んだ。


別に言ったところで自分が立候補するわけでもない。


そして、その言葉で彼が考え直したり、彼が止まるような人ではないと感じていたからかもしれない。


彼は手を挙げ、立ち上がった。


「俺が美化委員をやってもいいですよ」


そう告げる彼の横顔は、一人で強大な敵を迎え撃つかのようにキリリと引き締まっていた。


「ああ、佐藤。お前がやってくれるのか。助かるぞ」


そうやって彼は椅子に腰を下ろした。


でも委員会はまだ保健委員と体育委員が残っている。


「あと二つ、誰か委員会に所属してくれる奴はいるか?」


再び先生がそう告げると、教室は気まずい沈黙が支配した。


その沈黙は、さっきよりもいっそう深くて重いものだった。


「誰かいないか?」という先生の言葉が、誰もいないトンネルに向かった叫びのようにクラス中を駆け巡った。


このままでは、クジ引きという名の処刑か、あるいは出席番号順という名の強制執行が始まってしまう。


そんな絶望的な空気の中、隣からまたしても、あの「フッ」という吐息が漏れた。


私は戦慄した。 いくらなんでもそれはない、と。


彼はもうすでに環境整備委員と美化委員の二つの委員会を掛け持ちしているのだ。


そんな私の内心をよそに、彼が再び、手を高く上げた。


「そしたら、残り二つも俺がやりますよ」


その言葉は、先ほどの先生の言葉より素早く生徒の間を駆け抜けた。


先生は、すこし慌てたように「佐藤、お前四つの掛け持ちになるが大丈夫か?」と聞いたが、彼は深く頷き、「大丈夫ですよ」と答えた。


クラスには、ほっとした安堵と、彼を称えるような拍手がすごい勢いで起こった。


「佐藤、お前マジで聖人かよ!」「ありがとうシンデレラ!」「お前はヒーローだ!」


クラスメイトからの彼への賛辞は止まらない。


私は少し照れくさそうでいて、満足そうな彼の横顔をみて、委員会決めが終わったことに深く安心した。



そして、彼の噂に、「四つの委員会を掛け持つ男」と言うものも加わった。


学校に長くいるといっていた社会の先生が授業で「委員会を掛け持つことは、学校のルール上できるが、実際にそれだけ掛け持ちしているのを見るのは初めてだ」と言っていた。


そう、彼は伝説となったのだ。

伝説になっちゃったかぁ…。



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