第五話 社交的
入学してからはや四日。
教室では、みんな少しずつ肩の力を抜け、落ち着いてきた。
そんな朝のHRで担任が告げた。
「えーっと、今日の六限目のロングホームルームなんだけど、係や委員会を決めるからなりたいものをあらかじめ選んどいて」
ロングホームルームは簡単にいえば学活のようなものだ。
そして、うちの学校は六時間授業だ。一コマ五十分で午前には四コマ、午後には二コマである。
中学の頃の友達が通う他の学校だと、七コマ授業や四コマ(一から三コマ目までは九十分)という感じで、学校によって違うらしい。
うちの学校はたしか、集中力がしっかりと長続きするようにするために、コンスタントに休憩を取れるように一コマは必ず五十分なのだそうだ。
そんなことを考えているうちに、担任が「じゃあ、今日も一日頑張っていきましょう」と言って、出席簿を持って、教室から出ていった。
すると、真衣と里奈がやってきた。
「今日学食なの忘れてないよね?」
「あぁ、うん。もちろん」
「じゃあ、昼休み一緒に行こうね」
◇◇◇◇
昼休みになった。
今日の授業はめっちゃ大変だった。
数学の先生はとにかく言っていることが早すぎて、聞き取りづらかったし、物理の先生はなんか物理への愛が溢れていたのか、なんか知らない実験道具を持ってきて色々実演して見せたが、なんかすごいことだけはわかった。
噂によると、物理の先生は教科書も執筆しているそうで、界隈で権威なのだそうだ。
とにかく午前の授業は勢いがすごくて、疲れた。
「いや〜、午前の授業濃かったねぇ」
「そうだったわね。すごく物理の先生の実験、興味深かったわ。特にポテトチップスの袋で電波が遮断できるなんてね」
「いやぁ〜、あれ何言っているのかよくわからなかったんだよねぇ、アハハハハ」
「まあ、高校の教科書に載っていたし、三年間かけてじっくり理解していけばいいんじゃない?」
そう言いながら真衣と里奈がやってきた。
「じゃあ、学食に行こっか!とりあえず、勉強のことは忘れるぞぉ」
「そういえば、二人って結構仲がいいけど、中学が一緒だったの?」
「いえ、違うわ。一応、中学の頃に通ってた塾が一緒だっただけだわ」
「へぇ〜」
そんな他愛のない話をしながら歩いていると、学食についた。
学食では、ものすごい列ができていた。
「あちゃー、遅れちゃったか。噂によるとこの学校の学食はすぐ混むから早めにいった方がいいって聞いてたんだけどなぁ」
「まあ、気長に待てばいいわ」
そう、この学校は『学食』なのである。
『購買』ではないのだ。
なので、温かい食事を提供しており、かなりの人気なのだ。
また、ラノベであるような、争奪戦などもなく、みんなしっかりと列に並んで、順番を守り、楽しんでいる。
また、多少、『購買』のような機能も兼ねており、菓子パンやアイスをついでとして販売している。
入学案内では、在校生アンケートで十年連続好きな場所ナンバーワンを獲得していると書かれていた。
ちなみに、嫌いな場所ナンバーワンはなぜか、生物室らしい。
学食の順番待ちの列が進み、私たちの番になったので、食券を購入し、調理さんに渡し、食べ物を受け取り、席に着いた。
「そういえば、朝先生が言っていたけど、係委員会って何やる?」
真衣がそう切り出した。
何にしようか?
まあ、図書委員あたりの委員会かな?
「私は適当に、庶務係かしら。まあ、なんでもいいのだけど」
「私はね、文化祭のクラス係をやろうかなって。やっぱり高校生の青春は文化祭にあり、だよ!」
「うーん、私は無難に図書委員ぐらいだと思っているけど…」
「いいんじゃない?結構向いていると思うよ!」
「いいんじゃないかしら。私もそれにしようかしら。図書委員ってたしか定員は各クラス四人までだったわよね」
「え、うん。たしかそうだったと思うよ」
「ねぇねぇ里奈。文化祭のクラス係になってもいいんだよ!しかもこっちには定員ないんだよ!」
「そちらについてはお断りするわ。だって、二つ所属するのは現実的じゃないもの
。ある程度自分にできる範囲でやるのがいいのよ」
「え〜、つれないなぁ。まあ、いいや。昨日は、どこに仮入部に行った?私は一昨日同様、陸上部だよ」
「私は、昨日、漫画研究部に行って「おや?そこにいるのは昨日の仮入部の子じゃないか!覚えているかな?小柳早苗だよ?」」
「あらら、もう先輩と仲良しなんだ。早いね」
「おやおや、これは友達も一緒だったみたいだね。じゃあ、自己紹介をさせてもらおうかな。一応、漫画研究部の部長の二年の小柳早苗だよ。学食は普段から使っているから、割と何がおすすめか教えることができるよ?」
えっ。小柳先輩って部長だったんだ。ラブコメのシーンを再現するためにロッカーに入るぐらい変人なのに……。
「はいはい。先輩!!この季節のおすすめはなんですか?」
「うーん。丼ものも捨てがたいが、四月はうどん類がおすすめだね。割と優しめの味付けだから、少し緊張もある四月だとちょうどいいのかもしれないね。その中でも特におすすめはキツネうどんだからね。ぜひ、次回利用するときに食べてみるといいよ」
「ありがとうございます!ところで、先輩はなぜ学食を毎日利用しているんですか?」
「そうだね。美味しいからというのもあるが、中学時代の友達と食べるのにちょうど…、あっ、やばい怒られてしまう。じゃあ、このぐらいで。お邪魔しちゃってすまないね。じゃあ、またなんかあったら話しかけにおいで。あと、漫研の部員募集中だからよろしくそれじゃあ」
嵐のようにやってきて、あっという間に去っていった。
里奈がぼそっと呟いた。
「少し、かっこいいわね」
「そうだね、新入生にフランクに話しかけてくれて優しい人だったね」
確かに今のシーンだけ見れば、まともに見えるが……。まあ、わざわざ言う必要もないか。
「まあ、二人もよかったら、仮入部に来るといいよ」
「じゃあ、いってみようかな」「少し検討しておくわ」
学食の食べ物は美味しかった。また来週も学食に行くことが決まった。
……小柳先輩は社交的な人みたいだ。
7月24日 修正




