第二十一話 それでも私は……
◇◇◇◇
『いやぁ、誰に投票する?』
『え?誰にって何を?』
『そりゃもちろん、会長だろ』
『やっぱり、斉藤かな。ほら新しい学校を奏でるってね』
『まあ、やっぱり無難にそこだよなぁ』
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『演説長かったぁ。なんで体育館に全員集めて、やらなきゃいけないんだ?』
『一応、選挙だから顔を見えるようにとか色々あるんじゃないかな』
『暑いし、めんどくさいし、こっから教室で投票だろ?ならもっといい方法あるだろ。例えば、放送で流すだけにするとかさぁ』
『まあまあ。落ち着いてよ。でも面白いものは見れたでしょ?』
『確かにな。それはそうだ。シンデレラだっけか?今噂のやつ面白かったな』
『まさか、あんな感じで転ぶとはねぇ。ふふっ。思い出しても笑いが出てきちゃう。まあ、さっさと教室に戻ろうよ』
『おう。そうだな』
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『今回はもう決まったもんでしょ。やっぱり、生徒会長戦は圧倒的だったよね』
『そうですか?私にはそうは思えなかったのですが』
『そう?拍手の量とか結構違ったように思えたけど…』
『まあ、私は自分の信じる人に一票を投じることにするのです』
『そうね。それが一番だわ』
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『う〜ん。今回は悩ましいかな』
『そうだね、私も少し五分五分な戦いな気がするわ』
『まあ、でもそう言う時はとりあえず胸を張って堂々としておけばいいんじゃないかな。まだ結果も出ていないわけだし』
『そう?早苗がそう言うならしばらくは胸を張っておくわ』
『……。なんか大きく見えるね……』
『ちょ、なに、まじまじと見てるのよ。失礼よ。あと、早苗のは元から大きいじゃない』
『そう?』
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『演説良かったぞ』
『ちゃんと俺たちに聞いてくれたことも反映してくれて』
『ちょ、先輩方、後ろから急に押さないでくださいよ』
『まあ、結果がどうであれ、お前はすごい。俺らは人前に出て、あんな演説堂々とできねぇからな』
『そうだ。サッカー部の誇りだ』
◇◇◇◇
生徒会長選挙の結果は、残酷だった。
開票の結果、彼の名前は次点にすら入っていない。
あんなに気合を入れて「俺がこの学校の運命を変える」と演説したのに、全校生徒に届いたのは彼の「熱意」ではなく、演説中にマイクのコードに足を引っ掛けて派手に転んだ「笑い」だけだったらしい。
夕焼けが真っ赤に染め上げている。
そんな中、一人彼は赤と白の花が咲くツツジに囲まれて、ベンチで黄昏ていた。
「……フッ、時代が俺に追いついていないようだな」
彼の顔は、相変わらずキザに決まっている。
彼はいつだって入学した時から今日まで主人公であろうとかっこよく振る舞う。
今日の朝結果発表されてから、彼は負けたとわかっても、今までずっといつものように振る舞っていた。
でも、その瞳が少しだけ潤んでいるのを、私は見逃さなかった。
その不器用で、誰よりも真っ直ぐな背中を見ていたら、もう誤魔化せなかった。
「ねぇ、佐藤くん」
私は一歩、彼に近づく。
「あのね、私ーー」
心臓の鼓動が、放課後のチャイムよりも大きく響く。
そっとこっちを向いた彼が不思議そうに、でもどこか期待を込めたような眼差しで、私を真っ直ぐに見つめていた。




