表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どこまでもモブだけど主人公になりたい佐藤くんがかっこいいことを私だけが知っている【青春】  作者: 大山小水


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/24

第二十話 終端

雨が明けた日。


五月独特のジメジメした感覚が私の身を包む。


生徒会選挙もいよいよ明日に全校生徒の前でスピーチをして、投票があって決まる。


今日まで佐藤くんは、朝の挨拶を欠かすことはなかったし、お昼休みの時に、各教室を回って、演説もしていた。


『生徒会なんて、誰がなっても変わらない』


そういっていた人もいた。


でも、彼の頑張りを見てきた私は、誰よりも彼になって欲しいと思っている。


彼なら、きっと言葉だけではなく、しっかりと掲げた公約を果たしてくれるだろう。


そう思って、空を見上げてみると、少し雲が残りながらも晴れていた。


今日は小柳先輩が「少し用事があるから、今日は部活はできそうにないけど、やる?」とグループに送っていた。


私も特にゴールデンウィーク締め切りのイラストの作業が終わり、特に部活動でやらなきゃいけないこともあったので「やらなくて大丈夫です」と送ったので、今日は部活はお休みだ。


少し図書室に寄った後に、帰ろうと学校を出た。


出たすぐのところのベンチに座っている彼がいた。


彼は、こないだ生徒会選挙に向けて書き込んでいたノート片手にうんうん悩んでいた。


急に強い風が吹きつけてきた。


すると彼が手に持っていたノートはふっと舞い上がり、私の足の前に落ちてきた。


なので、私はそれを拾い上げて、彼に手渡した。


「はい、佐藤くん」


「ありがとう、急に強い風が吹いて、びっくりした」


彼は普段、話す分には普通なのだ。まるで物語のモブのように。


時たま変わっていたり、ちょっとおかしなことに巻き込まれるだけで。


でも、私が少しわかるようになってきた彼の様子の中で一つだけ、気になることがある。


それは……。


「ねぇ、どうして、佐藤くんはそんなに頑張れるの?」


「えっ?急にどうした?何を?」


「生徒会の選挙だったり、いま佐藤くんが座っている椅子を綺麗にしたり。ずっと頑張ってきたじゃないかな」


「それは主人公になるためだ」


彼は少し胸を張るように私に目を合わせて答えた。そしてこう続けた。


「この世界には、空気抵抗があるから、すごく高くから落ちると、どんなに速く落ちても、ゆっくりと落ちていっても、最後はみんな同じ速度に落ち着くんだ」


彼は少し目をグラウンドに向け、私も釣られて目を向ける。


「……それは人も同じ。年をとれば、大人になれば、みんな似たような速度で歩いて、似たような顔になっていく。それが怖いんだ」


その時に私はちらっと彼の横顔を見た。


「だから俺は、抗いたい。一度だけでも、俺だけの速度で走る主人公になりたいんだ」


そう言い切る瞬間「フッ」と最初に彼が呟いた横顔と同じように、少しギザに決まっていた。


「そのために、主人公のように、どんなことにも挑戦するし、色々なことを経験していきたい。それが頑張ってきた理由だ」


最後の瞬間は普段の彼に戻っていた。


「そっか……。じゃあ、明日演説頑張ってね」


そう私が言うと、彼は笑顔で「もちろんだ」と返し、私は彼の邪魔にならないように足早にその場を後にした。

タイトルの終端は「終端速度」からとりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ