第十六話 新たに
ゴールデンウィークが明けた日。いつも通り、私は学校に登校し、朝から真衣と里奈との雑談をしていた。
「日曜日は、楽しかったね」
「そうね。少し、買いたいものも買えたし、よかったわ」
「あそこの本屋、そこそこ品揃えが良かったし、ブックカフェは少し面白そうだったね」
「漫画がたくさんあって、あっという間に時間が溶けていったよね。一人だったらやばかったかも。あははは」
「普段活字以外はあまり読まないから、新鮮だったわ」
「あと、あそこのショッピングセンターに大きい100円ショップがあったよね。文化祭の時とか、あそこまで買い出しするのかな」
「あ、そっか。真衣は文化祭のクラス係だったよね。まあ、何が使えそうか、少し考えておかないとだよね」
「まあ、まだ学校周辺に何があるかわからないから、陸上部の先輩とかに教えてもらっているんだけどね」
「あれ?あなた、こんなキーホルダーつけていたかしら?えーっと、北欧のほうのおみあげじゃなかったかしら。家族が旅行で北欧にいったの?」
「あっ。本当だ。赤くてかわいいね」
日曜に案内した女性からもらったものだ。
「えっと、家族からもらったんじゃなくて、日曜日、二人と別れたあと、スウェーデンの女性が道に困っていたみたいだから、案内したら、お礼にってもらったんだよ。むこうのお守りなんだって」
「えっと、外国の人に話しかけったってこと?すごいじゃん!もしかして、英語で話したの?」
「うん。少し上手に喋れた訳ではないけど、案内した神社の説明とか少ししたよ」
「先々週に英語の先生が言ってたことを早速実践するなんて、やるわね」
「結構大変だったけど、意外と話してみたら、自分の英語が伝わっている感じで少し楽しかったよ」
そんなことを話していると、教室に、少し駆け込みながら、佐藤くんが入ってくるのが見えた。
「あっ、そういえば日曜の朝に佐藤くんが道案内してたよ。なんか彼はすごい笑顔で案内してた。少し慣れてたのかな」
「へえ、そうなんだ。まあ、少し目立ちたがりなところもあるし、確かにやりそうだよね。そうそう、先輩たちの間でも結構噂になっているよ。こないだの食堂の件とかもね」
「もうそろそろ、チャイムが鳴るから席につきましょう」
そう、里奈が促し、ちょうど席に着いた瞬間にチャイムが鳴り、担任の先生が教室に入ってきた。
「気をつけ、礼!」という日直の号令と共に挨拶をし、お辞儀をして、担任の先生が今日の連絡事項を淡々と説明していく。
「…。あと、今日の化学は実験だから実験室に資料集を持って始業のチャイムの鳴る前に着席するように、だそうだ。あと、最後に、生徒会選挙が行われる。もし、立候補したいものがいたら、来週の月曜日までに選挙管理委員会に届け出るように。詳細はこの紙に書いてあるので、気になる人は確認しておくように。以上。じゃあ、今日も一日頑張りましょう」
そう言って、先生はすぐに横の掲示板に紙を貼り付けると出ていってしまった。
「フッ。生徒会、か。きっとこの俺を欲しているだろう。そして、入ればまさに主人公のようだな」
隣にいる彼は、少し自信に満ちたようにそう呟いていた。
◇◇◇◇
放課後は漫画研究部に行っていた。
「小柳先輩、本貸してくださり、ありがとうございます」
「あ、返してくれてありがとう。どうだったかな?」
「結構、話の流れが面白くて、最後のハッピーエンドもよかったですね」
「まあ、私が好きなのはラブコメだからね。あ、そうだ。進展聞くの忘れてた」
「え?何のですか?ゴールデンウィークまでの締切はみんな守れているはずじゃなかったんですか?」
「いやいや、そんなことじゃないよ。ほらほら、例の彼との…」
先輩がにじりにじりと私に近寄ってくる。
「えっと?何のことですか?」
私はそろりそろりと後ろに後退していく。
「え〜、まだとぼけるかな。じゃあ、はっきり言おうか、佐藤くんとの件だよ!」
「それ結構前に、否定しましたよね。蒸し返すのはなしですよ」
「気づいてたかな?君、漫画研究部にきてから、7割くらい、彼の話をしていたことを」
「えっ」
「ゴールデンウィークで案内している話は何度も聞いたし。さて、実際のところどうなんだい?ほら、早苗お姉さんに話してみるんだよ」
壁に追い込まれた。
「そんなに追い詰めったって、話しませんからね」
私が対話を断固拒否する姿勢を見せると先輩は思ったよりすぐに引き下がった。
「ふーん。まあ、いいよ話したくなかったら話さなくて」
先輩は少し意味ありげに笑みを浮かべていた。
「まあ、当分の活動は自由だから何してもいいよ」
そういうと、先輩は液晶を起動させ、活動が始まった。
【簡単に補足(''◇'')ゞ】
人間って無意識に意識していることって気づかないうちに何度も喋っちゃったりしているんですよね…。
漫研でいきなり本を返す描写に飛んでいるのも私の中ではそんな話したつもりがなくても、実際は彼の話を何度もしていたっていうことを暗示させています。




