第十話 お絵描き
学食で小柳先輩と佐藤くんの話し合いを見た翌日。
私は里奈と一緒に漫画研究部の部室に向かっていた。
部室の前に着くと内側から話し声が聞こえる。
どうやら今日は小柳先輩以外の先客がいるようだ。ノックをして、扉を開ける。
「早苗ちゃん、もうそろそろ新しいのを作り始めた方がいいと思うの」
「そうだね。でも……。おや、こんにちは二人とも」
小柳先輩は私たちに席を促し、話し始めた。
「まず、一年生二人には仮入部の時に教えたと思うけど、漫画研究部は学校の広報誌、例えば入学者用のパンフレットだったり、文化祭のパンフレットだったりに載せるための『クルッポン』のイラストを描いているってことは説明したよね」
私も里奈もこくりと頷く。
「それでね、今年の分の入学者用のパンフレットは昨年の一月に提出期限があったからそれは急がなくてもいいんだけど、文化祭用のパンフレットは五月に締め切りがあって、それをそろそろ取り組まなきゃっていう話をしていたんだよ」
そう話を続けているとふと思い出したように言った。
「あれ、そういえば二人は美咲と初対面だったけ?」
「「そうですね(わね)」」
「それじゃあ、少し自己紹介してて」
そう言って先輩は立ち上がり本棚の方に向かうと、向かいにいる美咲と呼ばれている先輩が話し出した。
「それじゃあ、初めまして。私は二年の佐々木美咲っていうの。普段あまりこの部活に顔を出さないけど、よろしくね。あと、お絵描きが好きだからこの部活に入部したのと、何か絵のことで相談や質問があったらどんどん聞いていいの」
佐々木先輩というらしい。先輩の挨拶に続けて、私たち二人の自己紹介も行った。
「そういえば早苗ちゃん。今年のこの部活のライングループって作ってる?」
「そういえば作っていなかったね。じゃあ美咲、グループ作ってもらっていい?」
その一声で漫画研究部のグループラインができた。真衣は陸上部はすでにあると聞いていて、漫画研究部はもしかしたらないのかなと心配していたので、ちょうどよかった。
「このライングループは基本的になんでも喋ってもらっていいけど、普段使うのは私たち二年生が来れない時に連絡を入れるものだと思ってもらっていいよ」
そう言いながら先輩は備え付けの機器に電源を入れ、本棚から取り出した文化祭のパンフレットを見せながら先ほどの説明を続けた。
「それじゃあ、少し話を戻すけど、例のパンフレットの件なんだけど、文化祭が六月の終わりにあるんだけど、製本の都合とか実行委員の作業の関係で五月の中旬には仕上げて欲しいって言われているんだよ。それで、できればみんなにも少しずつ書いて欲しいなと考えているだよ」
「早苗ちゃん、私はもちろん最後の隅にある四コマは描かせて欲しいの」
「美咲。まあ、最終的にそこはちゃんと割り振ってあげるから他のところの分担をしないといけないでしょ。そういえば、結局本入部してくれたのは三人か。真衣ちゃんはいつ来るか分かったりしないかい?」
「そういえば、しばらく陸上部の休みがグラウンドの都合とかで火曜日だからなかなか漫画研究部にいけそうにないって言ってたわね」
「そうなんだね。そしたら、真衣ちゃんはとりあえず頭数に入れずに割り振っていこうか」
そう言って先輩は、なるべく本人の(主に佐々木先輩の)希望に沿いながら役割を割り振っていく。
「じゃあ、こんなもんかな。部活動内では五月のゴールデンウィーク明けの最初の部活までを締め切りにするから、それまでの部活でなるべく仕上げるようにしてね。あと、もし何かしらの都合で期限に間に合いそうになかったらなるべく早めに教えてね」
「ねぇねぇ、二人とも。早速描き始めたいと思わない?さっき早苗ちゃんから聞いたんだけど、二人ともまだこの機械触ってないんでしょ?楽しいからやってみようよ」
そう言って佐々木先輩が私たちの手を引っ張って機械の前に移動させる。
「せっかくだし、入り口のあの張り紙も新しいやつにしちゃうの」
そう言って佐々木先輩が液晶を起動させ、専用のタッチペンを持って作業を始めた。
「一応簡単な機能を紹介しておくと、このボタンで色を変えられて、太さをここで変えて、こうすると書けるの」
シャーシャーと描いていくと鳩らしき輪郭が見えてくる。
「一応、最初になんとなく構図をとって、後は全体のバランスを見ながら細かいところを書き入れていくと……」
クルッポンの特徴的な目玉や嘴を描き込んでいく。
「そして最後に囲まれた部分をこうやって、こうして、色をつけてっと。これで完成なの。そして、これに文字を加えてっ」
画面にキーボードを出現させて、入力していく。『芸術は爆発だポン』
「そして、最後にプリンターの電源を入れて、出力すると……。あっ、間違えた、B3で出しちゃったの、あ〜止めるにももう遅い〜。まあ、仕方ないの、早苗ちゃんこれで飾ってもいい?」
「まあ、いいよ」
「それじゃあ、完成なの。こんな感じで描けるから、二人も描いてみるの」
あっという間に絵が完成してしまった。
その様子に私は里奈と顔を見合わせて驚きながらも、促されたように椅子に座り、液晶に絵を描き始めた。
その日はひたすら描いて描いて描きまくって、活動を終えた。
佐々木先輩は絵を描くのが早く上手で、教えるのが丁寧だった。
絵を描ける人はマジで尊敬しています。
私が正確に描けるのは正六面体のサイコロぐらいかな(美術の定期テストで必要だったから何百回も描いて練習した…( ̄∀ ̄))。




