39話 『海辺の約束』
39話 『海辺の約束』
夕暮れ前。
ジュンは湊を海辺へ誘った。
「……少し歩く?」
湊は少し迷ったあと、
静かに頷く。
透は杖を持ちながら、
「海の音、今日は穏やかですよ」
と送り出した。
雫は小さく手を振る。
「……無理しないでね」
宙は砂浜を指さした。
「風が“今日は大丈夫〜!”って言ってる!」
海辺には、
夕陽が長く伸びていた。
波は静かで、
貝殻が時々小さな音を立てる。
湊は足元を見つめながら歩く。
「……前は、人の視線が怖くて。
外を歩くだけで息が苦しかったんです」
ジュンは、急がず隣を歩いた。
「うん」
それだけ。
否定もしない。
無理に励まさない。
ただ、隣で波の音を聞いている。
しばらくして、
湊が小さく笑った。
「……灯台荘の人って、
“待ってくれる”んですね」
ジュンも笑う。
「急がせる人、いないからね」
そのとき。
宙が遠くから叫ぶ。
「風がね〜!!
“ちゃんと歩いてるぞ〜!”って言ってる〜!!」
雫が苦笑する。
「……全部風に報告されるんだね」
夕陽が海に沈み、
灯台の光がゆっくり回り始める。
湊は波打ち際で立ち止まり、
胸元の貝殻のペンダントを握った。
「……また海を見られるなんて、思ってなかった」
その声は、
以前より少しだけ穏やかだった。




