38話 『灯台荘の読書時間』
38話 『灯台荘の読書時間』
雨が上がった翌日。
海風は少し冷たく、
灯台荘の廊下には静かな光が伸びていた。
食堂の隅では、
珍しく全員が“静か”だった。
理由は単純。
今日は——読書の日。
文子さんが古い本棚を整理していたら、
たくさんの本が出てきたのだ。
宙は絵本を逆さに持ちながら言う。
「風が“これ読め〜!”って言ってるよ〜!」
透が苦笑する。
「宙くん、その本は上下逆です」
「あっ!」
わらわら。
真昼は静かにページをめくり、
時々みかに手話で内容を伝えている。
雫は窓辺で詩集を読んでいた。
「……こういう静かな時間、嫌いじゃない」
湊は最初、少し離れた席に座っていた。
けれど、
気づけば皆のいるテーブルに近づいている。
ジュンはそれを見て、
何も言わず、そっとコーヒーを置いた。
湊。
「……ここって、“ひとりにしてくれる”のに、
“ひとりぼっち”にはならないんですね」
絵凛がランタンを揺らしながら微笑む。
「jun さん。
灯台荘は、“距離の優しい家”なんだよ」
そのとき。
研究棟のほうから。
ガタン!
ドサッ!!
透。
「……先生ですね」
蝦蟇口先生の声。
「本の山が崩れた〜!!
でも面白い本見つけたよ〜!!」
綾乃先生。
「……整理の意味を考えてください」
静かな読書時間は、
結局いつもの灯台荘になっていく。
でも、その賑やかさが、
今日はどこか心地よかった。




