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『灯台荘』   作者: 浮世雲のジュン


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37話 『雨の日の灯台荘』

37話 『雨の日の灯台荘』


午後になるころ、

空にはゆっくり灰色の雲が広がっていった。


ぽつり。


そして、海沿いの町に雨が降り始める。


宙は縁側で空を見上げた。


「風がね、“今日は静かにしてよう”って言ってる」


珍しく、走り回っていない。


雫は窓辺で洗濯物を見ながら、

「……今日は部屋干しかぁ」

と小さく笑う。


透は耳を澄ませていた。


「雨の日の海は、音が深いですね」


真昼は窓ガラスに落ちる雨粒を見つめながら、

手話で〔きれい〕と伝える。


みかは光を柔らかく調整して、

部屋全体を“雨の日の明るさ”に整えていた。


文子さんは、

大きな鍋でシチューを煮込んでいる。


「こういう日はねぇ。

 温かいもの食べるのがいちばんよ〜」


湊は窓の外の雨を見つめながら、

ぽつりと言った。


「……前は、雨の音も苦手でした」


ジュンが顔を上げる。


「今は?」


湊は少し考えてから、

静かに答えた。


「……今は、“遠い音”に聞こえます。

 ここにいると」


その言葉に、

灯台荘の空気が少しだけ柔らかくなる。


絵凛が微笑んだ。


「jun さん。

 安心できる場所ってね、

 音の聞こえ方まで変えるんだよ」


その瞬間。


ドンッ!!


玄関のほうから大きな音。


透。


「……先生ですね」


蝦蟇口先生の声が響く。


「うわぁぁ〜!!

 雨の日の床、滑るよ〜!!」


綾乃先生。


「……だから走らないでくださいって言ったんです」


わらわら。


雨の日の灯台荘にも、

ちゃんと笑い声があった。


灯台の光は、

雨の海を静かに照らしている。


そして灯台荘の夜は、

今日もゆっくり回り続けていた。

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