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『灯台荘』   作者: 浮世雲のジュン


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32話「揺れる日の食卓」

32話「揺れる日の食卓」


朝。


少し強い風。


灯台荘の窓が、ことりと鳴る。


文子さんが味噌汁をよそう。


湯気。


静かな匂い。


宙は椅子の上で揺れている。


「今日は、海が怒ってる?」


雫が窓を見る。


「怒ってるというより……機嫌が悪い感じかな」


透は外の空を確認する。


低い雲。


少し荒れた波。


ジュンは机に小さなメモを書く。


——不安は、突然やって来る


——だからこそ、日常を切らさない


絵凛が配膳しながら笑う。


「結局ね、“普通にご飯食べられる”って大事なんだよ」


真昼(手話)


「安心の形」


文子さんは、少し照れながら言う。


「昔はねぇ……不安になると、食べられなくなってたのよ」


静かになる。


だが、重くはならない。


灯台荘では、誰かの過去を無理に掘らない。


ただ、隣に置いておく。


宙が味噌汁を飲む。


「あったかい〜」


その声に、皆が少し笑った。


外の風はまだ強い。


けれど、食卓の灯りは揺れながら残っていた。

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