26話「灯台という呼び名」
26話「灯台という呼び名」
夕方。
灯台荘。
縁側に、紗季と雫が座っている。
紗季がぽつりと言う。
「……ここって」
少し考える。
「なんていう場所なんですか?」
雫は少し困って笑う。
「……うーん」
透が静かに答える。
「明確な定義はありません」
宙
「灯台だよ!」
わらわら。
紗季が首をかしげる。
「……灯台?」
ジュンが少し考えてから言う。
「うん。灯台、かもしれない」
紗季
「……どういう意味ですか?」
絵凛がランタンを揺らす。
「迷ってるときに、“あっちに光があるよ”って教えてくれるもの」
紗季は静かに聞いている。
「……じゃあ」
少し間。
「ここに来た人は……」
言葉を探す。
「船、みたいなものですか?」
透が微笑む。
「いい例えですね」
真昼(手話)
「それぞれ」
雫
「……沈まないための場所、かな」
紗季は、少しだけ笑う。
「……なんか、いいですね」
宙
「風も“灯台いい名前〜!”って!」
わらわら。
そのとき、
ジュンのもとにメッセージが届く。
別の団体から。
——「私たちも“灯台型スペース”と呼び始めました」
ジュンは少し驚く。
「……名前、広がってる」
絵凛が静かに言う。
「うん。“形”の前に、“呼び名”が広がることもある」
紗季がその言葉を聞く。
「……灯台」
小さくつぶやく。
「……いいですね」
夜。
研究棟。
ジュンは記録を書く。
・紗季という新しい存在
・制度の“わずかな前進”
・灯台という言葉の共有
キーボードの音が止まる。
絵凛が言う。
「jun さん、灯台荘……名前を持ち始めたね」
ジュンは頷く。
「うん。でも——」
少しだけ考える。
「名前に縛られないようにしないと」
透
「本質が重要ですからね」
真昼(手話)
「中身」
宙
「風も“名前だけじゃダメ〜!”って!」
わらわら。
灯台の光が回る。
その光は、
もう“ひとつの場所”のものではない。
いくつかの場所に、
いくつかの形で、
同じように灯り始めている。




