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『灯台荘』   作者: 浮世雲のジュン


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24話「名前のない不安」

24話「名前のない不安」


午後。


灯台荘の縁側。


新しく来た女性——まだ名前を名乗っていない彼女が、静かに座っている。


湯気の立つお茶。

遠くの海。

やわらかい風。


宙が近くでしゃがみ込む。


「風がね、“この人、ちょっと迷ってる〜”って」


女性は少しだけ笑う。


「……わかりますか?」



「うん。風はなんでも知ってるから!」


わらわら。


雫が隣に座る。


「……ここ、どう?」


女性は少し考える。


「……落ち着きます」


少し間。


「でも……」


言葉が止まる。


透が静かに言う。


「無理に言葉にしなくて大丈夫ですよ」


真昼(手話)


「そのまま」


女性はゆっくり頷く。


「……なんていうか」


「ここにいていいのか、わからなくて」


その一言。


静かな重さ。


湊がそっと言う。


「……僕も、最初そうでした」


女性は少し驚く。


「……そうなんですか」



「はい。ここ、優しすぎて」


少し笑う。


「逆に、戸惑いました」


雫が小さく頷く。


「……わかる」


女性は、少しだけ息を吐く。


「……名前、まだ言ってなかったですね」


みんながやわらかく見る。


「……紗季さきです」


ジュンが静かに頷く。


「よろしく、紗季さん」


その瞬間——


空気が少しだけ“定まる”。


宙が嬉しそうに言う。


「風がね、“名前きた〜!”って!」

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