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『灯台荘』   作者: 浮世雲のジュン


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18話「合わなかった場所」

18話「合わなかった場所」


別の日。


同じ場所。


でも——


今日は少し違う空気だった。


人が多い。


声も多い。


動きも多い。


宙が言う。


「風がね、“今日はざわざわしてる〜”って」



「音の層が厚いですね……少し厳しい」


真昼(手話)


「多すぎる」


みかが光を調整するが、

追いつかない。


そのとき、


ひとりの若い男性が入ってくる。


周囲を見て、少し顔をしかめる。


「……思ってたのと違う」


職員が声をかける。


「どうぞ、座ってください」


でも彼は座らない。


そのまま言う。


「……こういうの、苦手です」


少し間。


「静かって聞いたけど……」


言葉が途切れる。


ジュンが一歩出る。


「……今日は、少し人が多くて」


男性は首を振る。


「……違うんです」


「こういう“空気”自体が、無理で」


その一言。


場の空気が止まる。


雫が静かに言う。


「……じゃあ、無理しなくていいよ」


男性は少し驚く。


「……え?」


絵凛が続ける。


「ここ、合う人もいれば、合わない人もいるから」



「それは自然なことです」


真昼(手話)


「大丈夫」


文子さん


「外でお茶飲む?」


男性は少し戸惑いながら、


「……じゃあ、外で少しだけ」


外に出る。


風が流れる。


宙がついていく。


「風がね、“こっちのほうがいい〜!”って」


男性は空を見上げる。


深呼吸。


「……こっちのほうが楽だ」


その言葉に、


誰も否定しない。


ジュンが静かに言う。


「……それでいいと思います」


男性は少し安心した顔をする。


「……こういう場所も、あるんですね」


「でも、俺は……外のほうがいいみたいです」


絵凛が微笑む。


「うん。それ、ちゃんと大事にしてね」




室内。


少しの静けさ。


職員が言う。


「……うまくいきませんね」


ジュンは首を振る。


「ううん」


「これは、“うまくいかなかった”じゃない」


少し間を置く。


「“合わなかった”だけ」


透が続ける。


「環境との相性は、人それぞれです」



「……無理させないのが大事」


真昼(手話)


「選べる」



「風も“いろんな場所があっていい〜!”って」


わらわら。


ジュンは記録する。


——すべてを救う場所はない

——でも、選べることが救いになる




夕方。


灯台荘。


戻ってきた空気は、いつも通りやさしい。


でも——


少しだけ、広がっている。


ジュンが言う。


「……灯台ってさ」


みんなが見る。


「“ここに来て”って言うものじゃないんだね」


絵凛が頷く。


「うん。“あっちにも光があるよ”って伝えるもの」


灯台の光が回る。


その光は、


来る人も、来ない人も、


どちらも否定しない。


ただ、そこにある。

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