16話「灯台荘に返ってくるもの」
16話「灯台荘に返ってくるもの」
夕方。
灯台荘。
いつもの廊下。
いつもの光。
でも——
少しだけ、違う空気があった。
雫が言う。
「……なんか、広く感じる」
宙
「風がね、“外のにおい持ってきた〜!”って」
透が微笑む。
「人の流れが変わると、空気も変わりますね」
真昼(手話)
「いい変化」
ジュンは研究棟で考えていた。
「……灯台荘、変わってきてる」
絵凛が隣に立つ。
「うん。でもね」
ランタンをそっと机に置く。
「変わったんじゃなくて、“返ってきてる”んだよ」
ジュン
「……返ってきてる?」
絵凛
「外に出したものが、また戻ってくるの」
「少し形を変えて」
そのとき、
湊が研究棟の入口に立つ。
少し迷ったような顔。
「……あの」
ジュン
「どうした?」
湊は、少し間を置いて言う。
「……今日、あの場所に行ってきました」
みんなが少し驚く。
雫
「……大丈夫だった?」
湊はゆっくり頷く。
「……少しだけ、怖かったです」
「でも……灯台荘と似てる部分があって」
透が静かに聞く。
「どんなところですか?」
湊
「……“無理しなくていい感じ”が、ありました」
真昼(手話)
「伝わってる」
文子さん
「お茶、いれておくわねぇ」
宙
「風も“コピー成功〜!”って言ってる!」
わらわら。
ジュンは少し笑いながら言う。
「コピーじゃないよ」
「でも……ちゃんと届いてる」
湊は少し考えてから言う。
「……あそこにいる人たちも」
「たぶん、“灯台”を探してるんだと思います」
その言葉に、静かな重みがあった。
絵凛がやさしく言う。
「うん。だからね」
「灯台は、ひとつじゃなくていいんだよ」
外では、風がゆっくり流れている。
灯台の光が回る。
その光は、
灯台荘だけじゃなく、
もう少し遠くまで届いている。
夜。
研究棟。
ジュンは記録を書く。
・場所が“続いた”意味
・外に出たものが戻る循環
・灯台が複数存在する可能性
キーボードの音。
静かな時間。
絵凛が最後に言う。
「jun さん、灯台荘はね」
「“広がる場所”じゃなくて、“つながる場所”なんだよ」
ジュンは頷く。
「うん。それ、やっとわかってきた」
灯台の光が、ゆっくり回る。
その光は、今日も誰かに届いている。




